孫に「頑張れ」を言えないまま、私は菓子の包み紙を缶にしまい続けている
絵で食えなかった若いころ
私は昔、看板職人になりたくて、勤めを辞めて親方のもとへ通ったことがあります。3年で諦めました。腕の差ではなく、収入の差でした。子どもが生まれ、絵筆を段ボールごと処分して工場に入りました。だから孫が美術の道に進むと言い出したとき、口から出たのは「そんな仕事で食べていけるのか」でした。あのころの自分の暮らしを、孫に重ねてしまったのです。孫が課題の話を始めるたび、私はテレビの音量を上げました。続きを聞けば、応援したくなってしまうからです。
祝いの席で箸を置いた理由
孫が食卓で「デザインの仕事に内定をもらったの」と報告した日、私は箸を置いて自分の部屋へ戻りました。怒っていたわけではありません。祝いの言葉と昔の後悔が同時に浮かんで、どちらも口にできませんでした。襖を閉めた部屋で1人、処分したはずの絵筆の柄の感触を思い出していました。あの子は、私が降りた道を先へ歩いていく。それを喜びたい気持ちと、案じる気持ちの区別が、自分でもつきませんでした。
缶を見せられなかった玄関先
孫の作った包み紙の菓子が店に並んだと、娘から聞きました。開店してすぐの店で1つ買い、包み紙だけを缶に入れて引き出しの奥へしまいました。数日して孫が届け物に来たとき、缶を見せるつもりでした。けれど襖の内側で迷ううちに間が過ぎ、湯のみを出すことも忘れていました。帰り際、玄関先で口にできたのは、結局「体だけは壊すなよ」だけでした。「頑張れ」の一言は、最後まで言えないままでした。
そして...
缶の中の包み紙は、まだ1枚だけです。次の新しい柄が店に並んだら、買う前に、孫の口から仕事の話を聞かせてもらいたいと思っています。その日までは、缶の置き場所を誰にも教えないつもりです。
(70代男性・元工場勤務)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
関連記事
「コラム」カテゴリーの最新記事
-
「愛人と住むから出ていけ」熱中症の妻を追いだす夫!だが数日後⇒作業服の男たちが現れ…夫「えっ」愛カツ -
【わかりにくすぎ注意】不器用男子の好意サイン、嫌われてると勘違いしがちハウコレ -
義母の通帳を盗み…嫁に“濡れ衣を着せた”義姉!?さらに後日【ニヤッ】⇒【バタンッ】最悪の事態を招いた話愛カツ -
彼と念願の浴衣デート!しかし⇒彼の母親に会った瞬間…「あなた生きてるの?」空気が一変した話Grapps -
ふとした瞬間に「この子と結婚したい」と思う。男性が将来を意識するきっかけは意外とシンプルハウコレ -
義実家が営む店で嫁を“無給”でこき使う義母と夫!?しかし翌日⇒「なんでこんなことに…」2人の顔から血の気が引いたワケ愛カツ -
お土産を待っていた私に後輩が見せた、分厚い引き継ぎ資料ハウコレ -
男性の血液型でわかる!食べ放題での「攻め方」に出る性格<O型・B型>ハウコレ -
「嫌われてると思ってた」好き避け男性の本音を知ったら、あの態度の意味が全部変わるハウコレ