「あの親、モンペだよね」と噂された母、担任が知った来校の理由
噂だけで見ていた保護者
私の元には、他の保護者の方からも、たびたび声が届いていました。
「あの親、モンペだよね」「毎日のように学校に来てるらしくて、何か不満があるんでしょうか」と聞きました。同僚の先生たちからも「ちょっと気をつけたほうがいいかもね」と言われていたのです。
私は新任ではなく、保護者対応で苦労した経験は何度もあります。「またそういう保護者の方かもしれない」と、正直、心の中で身構えていました。そのお母さんと直接話したことはありませんでした。以前、校内で見かけた控えめな佇まいは、周りで語られる「迷惑な保護者」のイメージと結びつきませんでした。
雨の駐車場に立つ母親
冷たい雨が降る日のことでした。放課後の校内点検をしていた私は、職員室から見える駐車場の隅に、傘を差して立っている女性に気づきました。
近づいてみると、それは噂のお母さんでした。傘を差したまま、校舎のほうを見つめています。
「お母さん、こんな雨の中、何をされているんですか?」声をかけると、はっと顔を上げて「すみません……ご迷惑をおかけして……」と頭を下げました。
私が「毎日、ここに立っていらっしゃったんですか?」と聞くと、お母さんは少しの沈黙の後、こう答えました。
「あの子が、教室を抜け出してしまった時、すぐに迎えに行けるのは私だけなので」
「迷惑をかけたくなかった」
私はその場で職員室に戻り、保健室の先生にも来てもらって、お母さんと話す時間を作りました。娘さんが新学期から教室に入れず、保健室で過ごす日が続いていることは知っていました。けれど、毎日お母さんが学校に来ているとは知りませんでした。
「どうして、もっと早く相談してくださらなかったんですか?」と聞くと、お母さんは小さく首を振りました。「先生方に迷惑をかけてはいけないと思ったんです。私が見ていれば、それで済むことですから」仕事を早めに切り上げ、毎日この駐車場に通い続けて、半年近くになるのだといいます。
私たちが「困った保護者」と噂している間、このお母さんは雨の日も風の日も、ただ1人、娘さんのために立っていたのでした。
そして...
その後、私は職員室で同僚たちに、お母さんの本当の事情を伝えました。同僚たちは驚き、これからできる支援を話し合いました。それから、保健室の先生と私で、娘さんが少しずつ教室に戻れるような計画を立てました。
数カ月後、娘さんは短い時間でもクラスで過ごせるようになりました。お母さんが駐車場で待つ時間も、少しずつ短くなっています。あの雨の日、私が声をかけなかったら、お母さんはきっと今も、1人で雨の中に立っていたのだと思います。
「あの親、モンペだよね」あの噂は、私たち教師こそ、もっと早く立ち止まって考えるべきだった言葉でした。
(40代女性・小学校教諭)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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