「保育園に預けてまで」と笑った私が、復職した彼女の表情に気づいたこと
退職を選んだ本当の理由
退職の表向きの理由は「育児優先」でした。けれど本当は、復職してから職場での扱いが変わったことに、ついていけなかったのです。時短勤務になった途端、大きな案件は若手に回され、評価もしぼんでいきました。夫に相談しても「無理しなくていいよ」と言われるだけ。私は胸を張って「育児を選んだ」と言える形で、職場から逃げ出したのだと思います。辞めてからの半年、平日の公園で娘と過ごす時間は穏やかでした。けれど、ふとした瞬間に「私はこれでよかったのだろうか」という小さな声が、心の奥から聞こえてくるのでした。
ロッカー前でぶつけた言葉
保育園の同じ4歳児クラスに、同じ年のママがいました。彼女は産休育休を経て半年前に復職した、ワーママです。保育園で会うとき、いつも整った服装で、ヒールの音を響かせて廊下を歩いていました。ある日、ロッカー前で彼女と一緒になりました。世間話をしていたとき、私はつい笑ってこう言ってしまったのです。「保育園に預けてまで働く意味ある?」言ってから、しまったと思いました。それなのに止まりませんでした。「私は娘との時間を選んだから」と、自分の正しさを念押しするように続けました。彼女は「そうだね」と短く答えました。
数日後に見た彼女の表情
しばらく彼女とすれ違わず、ほっとしている自分がいて、それも嫌でした。数日後、ロッカー前でまた一緒になりました。彼女はいつもより晴れやかな顔をしていました。私と目が合うと、彼女のほうから「おはよう」と笑顔で挨拶をしてくれました。私はやっと小さく「おはよう」と返しました。娘の手を引いて教室へ向かう彼女の背中を、私は見送ることしかできませんでした。先日の私の言葉が彼女にどう届いたのかは分かりません。それでも彼女は、自分のいる場所を確かめたように見えました。
そして...
その帰り道、公園のベンチに娘を座らせて、ぼんやりと空を見上げました。私が彼女に投げつけた言葉は、本当は彼女に向けたものではなかったのだと、少しずつわかってきました。「保育園に預けてまで働く意味ある?」と聞きたかったのは、自分自身に対してだったのです。「あなたの選択は本当に正しかったの?」と毎日小さな声で聞かれ続けていることへの苛立ちを、彼女にぶつけていたのだと思います。彼女には彼女の正解があり、私には私の正解があるはずなのに、彼女の正解を否定することでしか、自分の正解を信じられない私がいました。娘が「ママ、ブランコ」と袖を引きました。私は立ち上がって、娘と手をつなぎました。今日は、誰の人生でもない、私と娘の時間を生きようと思います。
(30代女性・専業主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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