悪気はないつもりだった俺が、部長の評価基準を聞いて顔を上げられなかった理由
俺は自分を、差別する人間じゃないと思っていた
俺は新卒1年目で、企画担当です。母は地方の小さな会社で長く働いてきた人で、家では「女の人を見下す男にだけはなるな」と何度も俺に言いました。実家を出るときも、自分はそう生きると本気で決めていたんです。だから打ち合わせで、女性の先輩に向かって、つい口にした一言にも、自分なりの理屈がついていました。
「まあ、女性は無理ですよ(笑)」
顧客に男性が多いから、現実問題として、と。
「今のはどういう意味?」
先輩が聞き返したときも、俺はまだ自分の善意を疑っていませんでした。
「いや、深い意味はなくて。ほら、お客さん男の人多いし」
他の女性社員にも、同じことを言っていた
それからの数日、俺は同じ調子で、職場の他の女性社員にも声をかけていました。先輩女性には「女性は数字に弱いから、僕が後で見ます」。育休から戻ってきた人には「ママさんは無理しないでください」。どれも親切のつもりで、相手のためだと信じていたんです。気にしたそぶりを見せない人もいれば、多少気にする人もいました。俺は俺で、それには特に何も感じていませんでした。
会議室で、部長は俺の名前を1度も呼ばなかった
半年後、定例会議で部長が新規プロジェクトの体制の話を切り出しました。
「ところで、新規プロジェクトのメンバーだけど」
部長は俺の方を1度見て、それから視線を戻して告げました。
「俺の評価は数字と判断力で決める。性別で誰かを外すやつはうちには要らない」
部長は俺の名前を呼びませんでした。そして、先輩の名前がリーダーに挙がりました。俺は今までの言動を振り返っていました。
そして...
あの日から、俺は自分が放った言葉を反芻し続けていました。数日経って、フロアで先輩を呼び止め、頭を下げました。
「すみませんでした」
先輩は何も言わず、短くうなずいただけでした。
「悪気がないと思っていたこと自体が、いちばん失礼でした」
顔を上げて、もう1度伝えました。あれから俺は、資料を回す順番も、声をかける順番も、男女で分けるのをやめました。母の言葉が、ようやく自分事のようになったと感じます。
(20代男性・企画職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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