彼女の祖父に認められたくて強気な客を演じた俺が、たった一言で目が覚めた理由
認められたい気持ちがあった
彼女の祖父に会うと聞いてから、俺はずっと身構えていました。長く食堂を営んでいた人だと聞き、礼儀や人を見る目に厳しい人なのだろうと勝手に想像していました。
彼女にとって大事な人に会うのだから、きちんとした男だと思われたい。頼れるところを見せたい。その気持ちが強くなっていました。
店に入って席に着いてからも、俺は会話をうまく進めようとしていました。仕事の話を聞かれれば、できるだけ堂々と答えました。けれど、その時点で俺は、認められたい気持ちに引っ張られていたのだと思います。
店員への言い方を間違えた
料理が遅れていると気づいたとき、俺はここで動けば頼れる姿に見えると考えました。店員を呼び止めて、強い口調で言いました。
「俺客なんだけど」
今考えれば、ただ相手を困らせる言い方です。でもそのときの俺は、彼女の祖父の前で弱く見られたくありませんでした。謝る店員に向かって、「客を待たせて平気なの」とさらに言いました。
彼女が困っていることには気づいていました。それでも引っ込みがつかなくなっていました。自分で始めた強がりを、途中でやめるほうが格好悪いと思っていました。
祖父の言葉で分かったこと
隣で、彼女の祖父が口を開きました。「客っていうのは、偉い人のことじゃないよ」。そのあと、「お金を払う人も、頭を下げる人も、同じ人だ」と言いました。
大きな声で叱られたわけではありません。けれど、その言葉で、自分が何をしていたのか分かりました。俺は頼れる人に見せたかったのではありません。立場の弱い相手に強く出て、自分を大きく見せようとしていました。
彼女の祖父に認められたかったのに、見せていたのは人への礼を忘れた姿でした。そう気づいて、俺は店員のところへ戻りました。
そして...
「先ほどはすみませんでした」と頭を下げました。うまく謝れたとは思いません。でも、あの場で謝らなければ、彼女にも祖父にも、もっと大事なものを失っていたと思います。
店を出たあと、俺は彼女に「ちゃんとできる男に見せたかった」と話しました。口にしてみると、その理由がどれだけ幼かったか分かりました。
次に彼女の祖父と食事をする機会があるなら、店員に強く言う人ではなく、最初に礼を言える人でいたいです。頼れる姿は、誰かを下げて見せるものではないのだと、あの日の食事でようやく分かりました。
(30代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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