彼女に部屋の鍵を渡さなかった僕の、不器用な計画
渡し方を考えていた
彼女と同棲する部屋が決まった日、俺が先に考えたのは家具より鍵のことでした。契約で受け取った鍵をそのまま渡せば早いのは分かっていました。
でも、彼女が最初に持つ鍵には、特別なものをつけたかったのです。店に頼んで、革のキーホルダーを作ってもらいました。そこには、付き合った日付を入れるつもりでした。
引っ越しの日にそれを渡したら、彼女は喜んでくれると思っていました。その場面を考えるほど、途中で計画を話せなくなっていきました。
言えなかった理由
採寸のために新居へ行ったとき、鍵は俺が持っていました。玄関を開けるのも、部屋を閉めるのも俺です。
彼女は「私の分の鍵は?」と聞きました。本当なら、そこで事情を話すべきでした。キーホルダーがまだ出来ていないこと、引っ越しの日に渡したいことを短く伝えれば済んだはずです。
でも俺は、「鍵はまだ渡せないんだ」とだけ言いました。理由を聞かれても、「気にしないで」と返しました。計画がばれることばかり気にして、彼女がこの部屋でどんな立場に感じるかを考えていませんでした。
出来上がったキーホルダー
キーホルダーが出来たのは、引っ越しの直前でした。それまでの数日、彼女は鍵の話をしなくなり、俺に向ける言葉も減っていきました。
自分の計画のために、彼女を不安なまま待たせている。そのことには気づいていました。それでも、謝るより先に、引っ越しの日まで待てば分かってもらえると考えていました。
当日、荷物を運ぶ合間に鍵を差し出しました。「やっと渡せるよ」と言って、日付入りのキーホルダーを見せました。彼女は受け取ってくれました。でも、すぐに喜ぶ顔にはなりませんでした。
そして...
片付けが終わった部屋で、彼女は鍵をバッグに入れていました。キーホルダーを大切にしてくれていることは分かりました。けれど、俺の渡し方が正しかったわけではありません。
俺は、喜ばせたい気持ちを理由に、必要な説明を後回しにしました。彼女にとって新居は、鍵を持てないまま入る場所になっていました。
次に何かを用意するときは、隠すことを成功だと思わないようにします。特別な物を渡す前に、相手が安心して受け取れる状態を作る。それができて初めて、同じ部屋で暮らしていけるのだと思います。
(30代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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