彼女と共有する予定表で、親に挨拶に行く予定を、ハートの絵文字に書き換えた俺の事情
親に会ってほしいと言ったのは、俺だった
彼女と付き合って2年が近づいたころ、そろそろ親に会ってもらいたいと思うようになりました。結婚の話を具体的に進めていたわけではありません。でも、これからも一緒にいたいと思っている相手を、ずっと自分の生活の外側に置いておくのは違う気がしていました。だからある日、俺の方から「今度、親に会ってくれない?」と言いました。
彼女は少し驚いた顔をしたあと、嬉しそうにうなずいてくれました。その反応を見て、言ってよかったと思いました。俺はその場で共有している予定表を開き、日付を決めて、「親に挨拶!」と入力しました。感嘆符までつけたのは、照れ隠しだったのかもしれません。そのときの俺は、ちゃんと前に進んでいるつもりでした。
でも、日付が近づくほど、その言葉だけが重くなっていった
最初は、予定表を見るたびに少し誇らしい気持ちがありました。自分の親に彼女を紹介する。彼女も、それを大事な予定として受け止めてくれている。それだけで、関係が一段進んだような気がしていました。でも日付が近づくにつれて、予定表に並ぶ「親に挨拶!」という文字が、だんだん重く見えるようになりました。
親は何を聞くだろう。彼女は気を遣いすぎないだろうか。俺はちゃんと間に入れるだろうか。変な空気になったらどうしよう。考えなくていいことまで考えてしまい、予定表を開くたびに勝手に身構えていました。行きたくないわけではない。彼女を会わせたくないわけでもない。なのに、その言葉を見るのがしんどくなっていきました。
消すこともできず、説明することもできなかった
本当なら、その時点で彼女に言えばよかったのだと思います。「俺、ちょっと緊張してる」。たったそれだけでよかったはずです。でも、そのひと言が言えませんでした。自分から誘っておいて怖がっているのが、情けなく思えたからです。
ある夜、自室の照明を落としたあと、俺はスマホを開きました。予定表の中にある「親に挨拶!」の文字をしばらく見て、それから予定の名前だけを消しました。日付も時間も、そのまま。予定をなくしたいわけではありませんでした。ただ、その文字を見なくて済むようにしたかったのです。代わりに入れたのは、ハートの絵文字ひとつでした。軽く見せたかったのか、柔らかくしたかったのか、自分でもよくわかりません。
彼女にメッセージを送ろうともしました。「やっぱり、あの話なんだけど」。そこまでは打ちました。でも、その先が続きませんでした。結局、説明しないまま画面を閉じました。
彼女に聞かれても、俺はまた逃げた
次に彼女と会ったとき、彼女は何気ない声で「日程変わったの?」と聞いてきました。一瞬で、予定の名前を変えたことだとわかりました。俺は「ああ、日にちはそのままだよ」と答えました。本当はそこで言えばよかった。「名前を変えたのは、俺が緊張してるから」。そう言えばよかったのに、俺はまた肝心なことを飲み込みました。
彼女はそれ以上聞いてきませんでした。だから大丈夫だと思ってしまいました。でも、数日後、彼女がもう一度その話を切り出しました。「私のこと、親に会わせたくない?」。その言葉を聞いた瞬間、自分が何をしていたのかようやくわかりました。俺が隠していたつもりだった緊張は、彼女の中で別の不安に変わっていたのです。
俺は慌てて否定しました。「違う。会わせたくなくなったわけじゃない」。それから、ようやく本当のことを話しました。「『親に挨拶!』って書いてあると、見るたびに俺の方が身構えちゃって。それで、名前だけ変えたんだ」。言葉にしてみると、拍子抜けするくらい単純な理由でした。でも、その単純なことを黙っていたせいで、彼女をいちばん不安にさせていました。彼女は責めずに聞いてくれました。それが余計に、申し訳なかったです。
そして...
当日、俺は家を出る前から落ち着きませんでした。忘れ物はないか何度も確認して、必要のないタイミングでスマホを見て、彼女に「大丈夫?」と聞かれるくらいそわそわしていました。実家に着いて両親の前に立つと、彼女はきちんと背筋を伸ばして挨拶をしてくれました。
俺があれだけ勝手に心配していた空気は、思っていたよりもずっと穏やかでした。母は彼女に何度もお茶をすすめ、父は俺が小さいころの話をしながら少し照れていました。彼女は笑いながら、丁寧に相づちを打ってくれていました。その姿を見ながら、俺は思いました。こんなにちゃんと向き合ってくれる人に、俺は何を隠していたんだろう。
帰り道、俺はようやく笑えました。「緊張しすぎてたかも」。彼女は少し呆れたように笑いました。次に何かに身構えることがあっても、もう予定の名前だけを変えてごまかすのはやめようと思います。隠す前に、ちゃんと口に出す。それが彼女を不安にさせないために、俺が最初にやるべきことだったのだと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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