「あんたの成績じゃ推薦は出せない」と切り捨てた進路指導の先生に、10年後の同窓会で差し出した一枚の名刺
あんたの成績じゃ推薦は出せない
高3の冬、私は地元の中堅私大の英文科を志望していました。指定校推薦の枠があると知り、進路指導室に申請の相談に行ったときのことです。担当の先生は私の成績表をめくり、ため息をついて言いました。
「あんたの成績じゃ推薦は出せない」
中の下の成績だった私には、確かに反論できる材料はありませんでした。けれどその後に続いた「英文科なんて、もっと真面目に勉強してきた子たちが行くところ」というひとことに、頭の中が一気に冷えていきました。
私は何も言い返せず、進路指導室を出ました。家に帰る電車のなかで、窓の外を見つめたまま、降りる駅をひとつ乗り過ごしました。
悔しさを燃料に変えた半年
その日から、私は変わりました。朝5時に起きて単語を覚え、放課後は閉館まで図書館に残りました。「推薦は出せない」と言われたあの志望校に、一般入試で受かってやる。それしか頭にありませんでした。
結果として、私はその大学に一般入試で合格しました。卒業後はカナダに留学し、現地で通訳の仕事を始め、3年前に小さな会社を立ち上げました。順風満帆ではありませんでしたが、振り返るたびに、あのひとことが私の背中を押していたことに気づきます。
10年後の同窓会で
先月、地元のホテルで開かれた高校の同窓会に出席しました。受付を済ませて会場に入ると、隅のテーブルに、あの先生の姿がありました。少し白髪が増え、当時より穏やかな表情になっていました。
私はゆっくりと近づき、名刺入れから一枚を取り出しました。「先生、お久しぶりです」と声をかけると、先生は私を見上げ、しばらく目を細めてから「ああ、あなた」とつぶやきました。
「先生のおかげです」
私はそう言って、名刺を差し出しました。先生は受け取った名刺をしばらく見つめ、何度も裏返して確認していました。
そして...
「あの一言がなかったら、今の私はいません」私は続けて、そう告げました。先生はうつむき、しばらく黙ったまま、小さく頭を下げました。怒りでも、復讐でもなく、ただ過去のひとつに決着がついた気がしました。
会場を出る頃、外は雪が降り始めていました。10年前と同じ季節、同じ街、同じ寒さ。けれど私はもう、あの冬の電車のなかにはいません。
(30代女性・通訳会社経営)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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