嫁が席を立つまで、私は彼女の「苦手」をただのわがままだと思っていた
自慢の手料理
息子夫婦が帰省するというので、私は朝から張り切って煮物と酢の物を仕込みました。彩りよくタコを散らし、自慢の出来栄えに満足していました。お嫁さんがタコを苦手にしていると夫から聞かされていましたが、私の世代では好き嫌いなど贅沢でしかありません。
きっと甘やかされて育っただけだろう、と勝手に決めつけていたのです。テーブルに料理を並べたとき、お嫁さんが心配そうな顔で「これ、タコ入っていますか?」と聞いてきました。私は「ええ、たっぷり入れたわよ」と笑顔で答えました。
「うちの料理は美味しいから」
お嫁さんが「すみません、私タコが苦手で……」と困った顔で切り出した瞬間、私は反射的に「嫁の好き嫌いなんて気のせいよ。少しくらいなら大丈夫」と言ってしまいました。
息子が「母さん、本当に食べられないんだよ」と小声で諭してきましたが、私は引きませんでした。「うちの料理は美味しいから食べなさい」と笑って取り皿を差し出します。せっかく作った料理を一口も食べてもらえないのが、寂しかったのかもしれません。今思えば、それは愛情ではなく押しつけだったのです。
席を立った嫁
お嫁さんがほんのひと切れを口にした数秒後、彼女は強張った表情で席を立ち、お手洗いに駆け込んでいきました。心配した息子が席を立ち、私のもとには気まずい沈黙だけが残ります。「そんなおおごとにしなくても」という言葉が口から出てしまい、ちょうどリビングに戻ってきた息子に強くにらまれました。お嫁さんは戻ってきてから、深く頭を下げて「申し訳ありません、今日はもう失礼します」と告げました。私はその表情の意味を、その場では受け止めきれなかったのです。
そして...
息子夫婦が自宅に戻ってから数日後、私は気まずさをごまかすように「あんなに大袈裟にしなくても、ねえ」とメッセージを送ってしまいました。返事はなく、息子からは「今は連絡しないでほしい」と告げられました。夫からも厳しい言葉をもらい、私はようやく自分の浅はかさを認めました。お嫁さんが長年伝えてきたことを、私は「わがまま」のひとことで踏みつけていたのです。今は二人と距離ができてしまいましたが、もう一度迎え入れてもらえる日が来たら、まずはちゃんと謝りたいと思っています。
(60代女性・主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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