俺は妻の手芸を「時間の無駄」と笑っていた→入園式で起きた出来事に、自分の浅さを思い知った
俺にとって手芸は「時間の無駄」だった
俺の実家は、父親が「家のことは妻の仕事、趣味なんて時間と金の無駄」と言い切るような家でした。母親は趣味を持たず、家事と俺たち兄弟の世話だけをして暮らしていたように記憶しています。それが当たり前だと思って育った俺にとって、結婚した妻が夜中までミシンを動かしている姿は、正直なところ理解できないものだったのです。
「手芸なんて時間の無駄だろ」「そんな暇あるなら家事してよ」。何気なく口にした言葉でしたが、今思えば妻に対してずいぶん失礼なことを言い続けていたと思います。妻はいつも何も言い返さず、ただ手元の作業を続けていました。
入園式直前の夜
娘の保育園の入園準備リストを見たとき、正直うんざりしました。手作り推奨のサイズ指定があったのです。「市販で買えばいいのに」と俺は言ったのですが、妻は穏やかに笑って「私が縫うから大丈夫」とだけ答えました。
寝かしつけのあと、リビングからミシンの音が聞こえる夜が続きました。俺は早く寝てほしいと思いながらも、声をかける気にはなれませんでした。完成した入園バッグは水色に白い小花柄の縁取りがついていて、娘は「これ持って行く」と大喜びでしたが、俺は「ふーん」とだけ言って、深く見ようともしませんでした。
ロビーで囲まれた妻
入園式当日、式典が終わってロビーに移ったとき、思いがけない光景が目に入りました。何人かのママたちが、娘のバッグを指して妻に話しかけているのです。「ねえ、そのバッグすごく可愛い。どこで買ったの?」「あ、ほんとだ。お店で売ってるやつみたい」。
妻は少し照れながら答えました。「全部手作りなんです」。「えっ、本当に?売り物みたい」。次々とママたちが集まってきて、妻に質問を投げかけています。俺は少し離れた場所から、その様子を眺めていました。妻が褒められている姿を、俺は8年間で一度も見たことがなかったのです。
そして...
帰り路、俺はいろんなことを考えていました。父親の口癖をそのまま妻にぶつけてきた自分。妻が一人で抱えてきた時間の重さ。信号で止まったとき、自然と口から言葉が出ていました。「すごいな。バカにしてごめん」。
妻は驚いた顔でこちらを見ていました。「これからは趣味の時間、ちゃんと作ってよ」。続けてそう伝えると、妻は少し笑って何度かうなずきました。次の休み、俺は娘を公園に連れて行きました。家を振り返ると、リビングの窓から、布を広げる妻の姿が見えました。あの後ろ姿を見られなくなるところだったと思うと、俺はずっと損な夫をやってきたのかもしれません。
(30代男性・営業職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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