「子なしは楽でいいわね」と言われた→不妊治療中だとカミングアウトした瞬間...
いつもの昼休み、何気ない一言
その日も、職場の休憩室でいつものメンバーとお弁当を広げていました。子育て中の先輩が、最近の忙しさについて話し始めます。「毎朝のお弁当作りが大変で」「夜泣きがまだ続いてて寝不足なの」。そんな話を聞きながら、私はうなずいていました。
すると先輩が、ふとこちらを見てこう言ったのです。「子どもいないと楽でいいわよね。自由だし。私なんて毎日大変で」。悪気はなかったのだと思います。
誰にも言えなかった3年間
不妊治療を始めて、もう3年が経とうとしていました。毎月やってくる期待と、その後に訪れる落胆。「今回こそは」と願っては、また振り出しに戻る日々を繰り返してきたのです。
職場では誰にも話していませんでした。話したところで気を遣わせてしまう。
治療のことを説明するのも疲れる。何より、自分の中でまだ整理がついていなかったのかもしれません。だから「子どもはまだ?」と聞かれても、曖昧に笑ってやり過ごしてきました。
今日だけは、笑えなかった
実はその週、また治療の結果が出ていました。今月もダメだった。そう告げられたばかりで、心がいつも以上にもろくなっていたのだと思います。
先輩の「楽でいいわね」という言葉を聞いた瞬間、いつものように笑顔を作ろうとしました。でも、口元がうまく動かなかったのです。気づいたときには「私、不妊治療3年目なんです。楽じゃないです」と口にしていました。
テーブルが一瞬で静まり返りました。先輩の顔がみるみる赤くなっていくのがわかりました。誰も何も言えないまま、時間だけが過ぎていきます。
そして...
その日の午後、先輩が私のデスクにやってきました。「さっきはごめんなさい。何も知らなくて、無神経なことを言ってしまった」。その声は少し震えていて、本当に申し訳なさそうな表情をしていました。
私はゆっくり首を横に振りました。「気にしないでください。私も、ずっと黙っていたので」。責めるつもりはありませんでした。ただ、あの瞬間に言葉にできたことで、胸の中の重たい塊が少しだけ軽くなったような気がしたのです。
全てを打ち明ける必要はないのかもしれません。でも、自分の気持ちを押し殺さなくてもいい。そう気づけたことが、私にとっては小さな一歩でした。
(30代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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