「エイリアン:ロムルス」9月6日(金)全国公開 

<エイリアン:ロムルス>迫り来る恐怖、エイリアンの不気味さも…エキサイティングな“SFホラーの金字塔”最新作レビュー

2024.09.01 11:10
「エイリアン:ロムルス」9月6日(金)全国公開 

SFホラー映画の金字塔である「エイリアン」(1979年)シリーズの最新作「エイリアン:ロムルス」が、9月6日(金)より劇場公開される。同作は鬼才フェデ・アルバレス監督と、“エイリアンの創造主”リドリー・スコットの製作によって映画化。舞台となるのは、地球から遠く離れた宇宙で、人生の行き場を失った6人の若者たちが、生きる希望を求めて宇宙ステーション“ロムルス”へと足を踏み入れる。「エイリアン」シリーズと言えば、第1作「エイリアン」で大型宇宙船の中でエイリアンに次々と襲われる恐怖を描き、「第52回アカデミー賞」視覚効果賞をはじめ、数々の賞を受賞した。そんな第1作の“その後”を描く今作では、エイリアンの恐怖に遭遇する若者たちの姿がつづられる。今回は幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が試写にて今作を視聴し、独自の視点でのレビューを送る。(以下、ネタバレを含みます)

初代「エイリアン」へのオマージュも

卓越したストーリーテリング、視覚と聴覚に飛び込んでくるような画の作り、各キャラクターの立ちっぷり、ひたひたと迫りくる恐怖の丁寧な描き上げ方、エイリアンの不気味さ、どれをとっても満腹感を与える力作に出会った思いがした。

1979年に公開されて記録的な大ヒットとなった「エイリアン」へのオマージュはたっぷりとあるけれど、「今回初めて“エイリアン”シリーズを見ます」という人も、決して置き去りにはせず、温かく「この恐怖の世界へどうぞ」と迎える。怖い描写も多々ある映画なのにマインドはとても優しい。そこも「エイリアン:ロムルス」の魅力であろう。

物語の設定は、「エイリアン」第1作から20年後の2142年。人類はとっくに地球を飛び出して外惑星でいろんな活動を行っている。

登場人物たちは、ジャクソン星採掘植民地で働いているが、ここはどうにも理想的な環境とは言いがたかった。病気のまん延、作業中の事故の多さ、かんばしくない治安で、本来ならまだまだ生きていられるはずの人間たちが命を落とすことも少なくない。

「ここを飛び出して、別の惑星“ユヴァーガ”に行くことができたら」。人間の女性・レイン(ケイリー・スピーニー)と“弟”であるアンドロイドのアンディ(デビッド・ジョンソン)が考えていたところ、別の男性・タイラー(アーチー・ルノー)が興味深い話を持ってきた。

宇宙ステーション“ロムルス”が漂流しており、ここにある船を乗っ取ることができたらユヴァーガに向かうことが可能となる。やがてそこにタイラーの妹・ケイ(イザベラ・メルセード)、同じく採掘コロニーで働いていた男性・ビヨン(スパイク・ファーン)、スペースシップを操縦できる女性・ナヴァロ(アイリーン・ウー)が加わる。だが、宇宙ステーションのセキュリティを突破できるのはアンドロイドのアンディだけ。ここが大きなポイントとなる。

宇宙ステーションにたどり着いた後に直面した現実は「ユヴァーガに行くには、燃料が足りない」ということ。ここから燃料探しの旅が始まるのだが、同時に「得体の知れない何か」の動きも、ふつふつと始まる。宇宙最恐の生命体だが、この「何か」の目的は、人間を殺すことではない。殺すことなく寄生し、卵を産み付けて、やがて宿主の体を突き破り、また次の進化の段階へと入っていくのだ。そう、エイリアンは4つの段階を経て進化するのである。怖過ぎる。

私はこの場面のあたりで「5人+アンドロイド」が相談し、知恵を出し合い、「エイリアンを倒すこと」に一致団結して向かっていくのかな、と勝手に展開を予想していたのだが、もちろんこれは見事なまでにエキサイティングな形で裏切られた。

そりゃそうだ、相手は猛烈に高速で攻めてくるのだ。話し合っている暇などない。若者たちそれぞれがインスピレーションを研ぎ澄ませ、過去の経験と現在のシチュエーションを照らし合わせエイリアンに立ち向かっていく。

「ある意味では常にクールな(人間ではないからだろう)アンディが司令塔となり、感情的になりがちな人間をコントロールして、どうにかユヴァーガへの到着と、“人間たちのサヴァイヴ”の両立という命題に臨む。それはうまくいくのか? 成就させるために、彼らはいくつハードルを越えなければいけないのか? それをとっくりと、映画館の椅子に座って浴びることができるのは2024年に生きる、まだ「宇宙最恐の生命体」に現実世界で出会っていないわれわれにとっての特権であるかもしれない。

気鋭の逸材と“エイリアンの創造主”によるタッグ

メガホンをとったアルバレス監督は、「ドント・ブリーズ」(2016年)で頭角を現し、「蜘蛛の巣を払う女」(2018年)、「CALLS コール」(2021年)など近作でさらに冴えたところを見せているウルグアイ出身の逸材。また、1979年版「エイリアン」で監督を務め、その前日譚である「プロメテウス」(2012年)や「エイリアン:コヴェナント」(2017年)にも携わったスコットも製作で参加。“エイリアンの創造主”といわれる名匠の関与を得たことは、この映画に関わる全クルーの士気を大きく高めたに違いない。

先ほど“エイリアンは4つの段階を経て進化する”と書いたが、その過程も克明に描かれている。この地球に今ある何かに微妙に似ていたり、デフォルメされていたり、そのあたりも余計に不気味さを感じさせる。

薄気味悪いリアリティーを持つけど、どこかかっこいい物体が、抜群の解像度でクローズアップされていく感じ。このデザインを手掛けたスイスの画家、H・R・ギーガーのセンスにもあらためて最敬礼したい気持ちだ。ホラー好きや密室ものマニアはもちろん、エキサイティングな体験を渇望する方にはぜひお勧めしたい。

映画「エイリアン:ロムルス」は9月6日(金)より全国の劇場で公開。「エイリアン」などシリーズ過去作はディズニープラスで配信中だ。

◆文=原田和典

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