「ポリス・ストーリー2 九龍の眼」

“香港カンフー達人”ジャッキー&“逆境のタフガイ”スタローン、陽と陰 2大アクションスターの魅力

2024.08.08 10:00
「ポリス・ストーリー2 九龍の眼」

無名のボクサーが王者に挑みチャンスを掴み取る「ロッキー」(1976、米)で、自身も人気俳優の地位を掴み取ったシルヴェスター・スタローン。「スネーキーモンキー 蛇拳」(1978、香港)や「ドランクモンキー 酔拳」(1978、香港)での超人的なアクションと表情豊かな演技で、唯一無二のアクションスターとして爆発的人気を得たジャッキー・チェン。アメリカと香港、場所は違えど不遇な下積み時代を経て、ほぼ同時期に大ブレイクを果たした2人は、両国、そして日本における1970年代から1980年代にかけてのアクション映画ブームを牽引した功労者と言えるだろう。映画専門チャンネル「ムービープラス」では、「特集:24時間 命がけのミッション」と題して、ジャッキーとスタローンの代表作をはじめとするアクション映画を特集。この機会に、2人のアクションスターの対照的な性格と作品感、現在まで愛され続ける理由を紐解いてみたい。

「香港カンフー映画」と「タフガイが戦うスタローン映画」が日本における定番ジャンルに

「ロッキー」が1978年、「蛇拳」「酔拳」が1979年に日本公開されたことをきっかけに、香港発のカンフー映画とタフな主人公が逆境に立ち向かうスタローン映画は、それぞれ映画の1ジャンルとして日本に定着。ジャッキーが繰り出すカンフー・アクションや、スタローンのタフな戦いとマッチョな肉体に、視聴者は釘づけになった。同時期に現れたアクションスターとして並び挙げられることも多い2人だが、その性格は大きく異なっている。

ジャッキー作品の特徴といえば、誰が見ても分かりやすいストーリー、随所に盛り込まれる笑い、そしてジャッキー演じる主人公の驚異的なアクションだ。お調子者で二枚目半の主人公が、いざという時には実力をいかんなく発揮し、悪を打ち倒すという筋書きは爽快感抜群。それまでカンフー映画のスターといえばブルース・リーだったが、硬派なリーと違い、ジャッキーが演じる主人公は人懐っこく実に親しみやすかった。こうした理由から多くの少年たちがジャッキーに憧れ、学校でカンフーごっこに興じる姿も見られたものだ。

そんなジャッキーに対し、スタローンが演じる主人公は基本的に寡黙で、不器用で、笑顔もあまり見せない。「ロッキー」シリーズの三流ボクサーしかり、「ランボー」シリーズの帰還兵しかり、「クリフハンガー」の元山岳救助隊員しかり。戦争の傷跡や恋人の死などに苦しむ場面も多く、筋骨隆々のタフガイでありながら、人間らしい弱さも併せ持つヒーローと言える。ストイックで武骨な主人公像は、男性を中心に圧倒的な支持を得た。

命知らずのスタントに手に汗握り、衰え知らずの肉体とアクションに舌を巻く

ムービープラスで放送される2人の主演作では、ジャッキーとスタローンのアクションスターとしての対照的な性格と魅力を存分に堪能できる。初めて彼らの作品に触れる人にとっても、良き入門編と言えるラインアップだ。

ジャッキーが監督・主演を務める「ポリス・ストーリー」シリーズは、香港国際警察に所属するチェン刑事(ジャッキー・チェン)が危険を伴う任務に挑む人気シリーズ。警察と麻薬シンジケートの戦いを描いた「ポリス・ストーリー/香港国際警察」(1985)の続編となる「ポリス・ストーリー2/九龍の眼」(1988)では、ジャッキー率いる特捜チームと爆弾犯が激突。走る車から車へ、車から建物へと飛び移ったり、花火工場で爆弾犯の1人とカンフー対決したりと、ジャッキーにしかできない命知らずなアクションに目を奪われる。

「ポリス・ストーリー3」(1992)では、麻薬シンジケートの大物を逮捕するため、ジャッキーが中国人民武装警察部隊に所属する女性ヤンと共にマレーシアへ。終盤、ジャッキーがヘリコプターから降ろされた縄ばしごにぶら下がり、寺院の一部や看板にぶつかりながら移動するシーンは、手のひらがじっとり汗ばむほどにスリリング。ジャッキーの過激なスタントの中でも、とりわけ語り草となっている。

一方、「ランボー 最後の戦場」(2008)は、スタローンの代表作「ランボー」シリーズの4作目。タイで静かに暮らしていたベトナム帰還兵のジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)は、非政府組織(NGO)のメンバーに依頼され、彼らを紛争地帯であるミャンマーの村へ送り届ける。彼らがカレン族ら少数民族を迫害するミャンマー陸軍に捕らえられてしまったことから、はからずも戦いに身を投じていく。

3作目から実に20年の時を経て制作された本作だが、60代のスタローンの肉体美とアクションは衰え知らず。非道の限りを尽くす陸軍の兵士を、弓矢で射殺し、重機関銃で蜂の巣にし、ナイフで首をかき切る。生粋の戦士ならではの正確な仕事ぶりに、思わず舌を巻いてしまうはずだ。しかし、ランボーは英雄でも正義のヒーローでもない。戦場では水を得た魚のようにプロの仕事をしてのけても、焼け野原となった村を見つめる目には憂いと虚しさが漂う。穏やかな生活に戻りたいと願いながらも、様々な理由から戦場へと引き戻されてしまうランボーは、ベトナム戦争の亡霊にとり憑かれた悲しき戦士なのだ。

熟年を迎えてもなお、彼らの挑戦は止まらない!

カンフー・アクションを痛快なエンターテインメントに昇華させたジャッキーと、泥臭く不器用なタフガイを多数演じてきたスタローン。アクションスターとしての性格は大きく異なる2人だが、役作りとアクションに対するすさまじいまでのストイックさと飽くなき挑戦心では互いに譲らない。

娯楽作のイメージが強かったジャッキーが、新たな顔を見せるようになったのは2010年頃。「ベスト・キッド」(2010)では悲しい過去を持つカンフーの師匠を、「ザ・フォーリナー/復讐者」(2017)では笑顔を見せない元特殊部隊員を演じるなど、幅広い役柄に挑んでいる。元スタントマンの冴えない主人公を演じた「ライド・オン」(2023)では、70歳とは思えない小気味いいアクションでファンを熱くさせてくれた。

一方のスタローンは、2010年からの「エクスペンダブルズ」シリーズでエリート傭兵軍団のリーダーを演じ、シリーズの大ヒットにより新たな当たり役を得た。歳を重ねて味わいを増してきたスタローンに、カリスマとリーダーシップにあふれたリーダー役がぴたりとハマっている。プライベートでは、3人の娘との仲良しぶりをたびたびアピールしており、お茶目なパパとしての顔を見せてくれているのも嬉しいところだ。

ムービープラスでは、8月9日(金)、夜9時から始まる「特集:24時間 命がけのミッション」で「ポリス・ストーリー2/九龍の眼」、「ポリス・ストーリー3」、「ランボー最後の戦場」のほか、トム・ベレンジャー主演の「山猫は眠らない」シリーズ9作品、ダイアン・レイン主演の「ブラック・サイト危険区域」を24時間、ノンストップで放送。いずれも手に汗握るスリリングなアクション映画として名を馳せる作品だ。

熟年と呼ばれる年齢になってもなお、新たな魅力を見せてくれるジャッキーとスタローン。永遠のアクションスターであり続ける2人の魅力を、1980年代を代表する名作アクションを通じてぜひ体感してほしい。

■文/帆刈理恵(スタジオエクレア)

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