「インサイド・ヘッド」は、ディズニープラスで見放題独占配信中

<インサイド・ヘッド>感情を“キャラクター化”する斬新なアイデアに感銘…触れると思わず心が豊かになる物語

2024.07.26 11:10
「インサイド・ヘッド」は、ディズニープラスで見放題独占配信中

アニメーション史上世界歴代No.1オープニングを記録し、ピクサー作品史上最高の世界興行収入を達成。世界的に話題を集めているアニメ「インサイド・ヘッド2」が8月1日(木)から日本でも公開される。前作「インサイド・ヘッド」を見ている人も、見ていない人も共に楽しめる作品になっていることは疑う余地のないところだが、せっかくなら前作についても知っておきたい。そこで、今回は幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が前作をあらためて視聴し、独自の視点でのレビューを送る。(以下、ネタバレを含みます)

少女の頭の中にいる5つの感情が活発に動き回る

前作「インサイド・ヘッド」は2015年に劇場公開された。主人公・ライリーは11歳の女の子で、頭の中では5つの感情が活発に動き回っている。「ヨロコビ」はライリーを楽しい気持ちにすることが役割。青髪で人間ぽい外見、ポジティブ。「ムカムカ」は嫌いなものを拒絶する役割。全身緑。「イカリ」は腹が立ったときに怒りを爆発させる。真っ赤な顔で歯をむき出しにする。「ビビリ」はライリーを危険から守る。紫色の顔をしていて目が大きい。用心深い。「カナシミ」は謎多きキャラだが物語中とても重要。青い。ネガティブ…と言った具合だ。

大好物に出会ったときは「ヨロコビ」が大活躍し、不快な気分になったときは「イカリ」が前面に出る。事故やケガを避けることができているのは「ビビリ」がそのときのライリーの感情のイニシアチブを取っているから。「ムカムカ」はライリーの前にブロッコリーやピーマンなど苦手なものが登場したときに生き生きとしてくる。あなたも私も誰もが有している感情である。それを、実にポップな形でキャラクター化した。

本作と出会い、「これは面白いな。すごくいいアイデアだな」と唸り、毎日を生きる気分が少々軽くなった。電車が遅れて駅員に文句を言っている奴は「イカリ」全開なのだろうとか、そういえば自分が通院しているときは血圧測定器や注射器が目に入るだけで「ムカムカ」の一面が表情に出てくるな、とか。青信号がチカチカしているときに走ろうとせず、次の青信号を待とうとするのは心の中の「ビビリ」が機能しているのだろうなとか、客観視してみると、思いのほかクール&カームな心持ちになれるものである。

見知らぬ地での生活で複雑な気持ちに

第1弾の中でライリーの感情を揺らす、主なファクターの一つに「引っ越し」がある。それまで住んでいたアメリカ・ミネソタ州を離れ、見知らぬ街であるカリフォルニア州サンフランシスコで暮らし始めるのが不安でたまらないのだ。私など「おお、サンフランシスコ!都会に引っ越しじゃん、いいなー」と思いながら見てしまうのだが、幼いライリーにとっては街の規模など関係ないし、あそこが一種のロックの聖地であることなども頭の中にないだろう。とにかく「慣れ」を捨てるのが怖いわけだ。ああそうだろう、と私も子どもの頃を振り返って思う。家を出て学校に通学するときの、独りで買い物に行くときの(『はじめてのおつかい』的な)、今日から自転車の補助輪を取ってさあ運転しよう、というときの不安な感じ、その一つ一つが大冒険だった。

ライリーはサンフランシスコで「転校生」になった。周りは皆、新しい同級生だ。フレンドリーに接してくれるとはいえ、数日前までは知らなかった人たちなのだ。ライリーは自己紹介するうちに涙があふれ、自分でも制御できないほどの感情の荒波を体験する。というのも、カナシミがミネソタ時代の楽しかった記憶の詰まった「思い出ボール」に触れてしまったからだ。ここからの展開がまた面白い。いろいろあってライリーの心の内部にある「司令部」からヨロコビとカナシミが放り出され、この2キャラクターは別の世界に行ってしまう。残った感情は「ムカムカ」と「イカリ」と「ビビリ」。ジョイとソロウを失った人間の感情の、何とも不気味な光景も描き出す。

だが人間の心には「治癒機能」が、恐らくあなたにも私にも誰にもあるのだ。ライリーの心の中には、「冒険」に出ていたヨロコビとカナシミが戻ってくる。そしてライリー自身のマインドが、次のステップへ移っていく。つまりこれが、「成長した」ということ。

続編となる「インサイド・ヘッド2」でのライリーは「高校入学を控えている」という設定。アメリカのハイスクールは、一般的に14歳入学の4年制と聞いたことがあるので、そうなると前作から3年弱後の話ということになる。自分の当時と照らし合わせてみても、それだけの歳月があれば、ウソやごまかしや裏切りも体験しただろうし、逆に体験させたこともあるだろう。世の中がままならないということをバッチリ分かるにも十分だ。

成長に伴って「シンパイ」「イイナー」「ダリィ」「ハズカシ」という4つの新たな感情が増えているのも見ものだが、前作から引き続き登場する5つの感情のチームワークがとてもよくなっているところも頼もしい。どちらを先に体験しても「インサイド・ヘッド」シリーズの面白さは変わらないにしろ、やっぱり前作を見てから劇場に足を運んでもらえたら、と、わが心の中の「オネガイ」は主張するのである。

映画「インサイド・ヘッド」は、ディズニープラスで見放題独占配信中。

◆文=原田和典

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