

<オーメン:ザ・ファースト>古参も新参も国境を越えて楽しめる“ホラー映画のグローバルスタンダード”

名作ホラー映画「オーメン」(1976年)の前日譚を描くホラー映画「オーメン:ザ・ファースト」が、4月5日(金)より全世界同時公開される。同作は、6月6日朝6時に誕生した“悪魔の子”ダミアンと、彼をとりまく人々の戦慄の連続死を描いたホラー映画「オーメン」の始まりの物語となる作品。公開に先駆け、音楽をはじめ幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が本作の試写会に参加し、同映画の魅力を独自の視点で紹介する。
全地球人民的恐怖作品の“前日譚”
ホラー映画という分野になじみのない方でも恐らく一作品は見たことがあるか、見たことがなくても名前は聞いたことがある、そのくらい全地球人民的恐怖作品が「オーメン」であるはず。さしずめホラー映画のグローバルスタンダードといったところか。中心人物は、「山犬から生まれた」と表現されていた男子、ダミアン。この設定からしてあり得ないほど不気味だ。
私の頭にこの語句が入りこんだのは遠い昔、小学生だった頃。6月6日生まれのクラスメイトがいて、「オーメン」だの「ダミアン」だのとイジられていたのだ。言うほうも言われるほうもノリノリでなんだか楽しそうで、その点、誕生日が春休みと重なって慌ただしく処理されていく自分にとっては実にうらやましさを感じさせる風景だった。つい感慨にふけってしまったが、恐らく「私とオーメン」というテーマで作文を募れば、かなりの文章が全国津々浦々から集まってくるのではなかろうか。
そんな「オーメン」の第1弾は1976年に製作され、「オーメン2/ダミアン」(1978年)、「オーメン/最後の闘争」(1981年)、「オーメン 4」(1991年)、その後リメイク版やTVシリーズ版なども登場し、根強い人気を誇っている。1970年代後半~80年代前半に物心がついた者には、「オーメンがホラーの入り口だった」という向きも多いと思う。おかげで私など「オーメン」(omen)が“恐怖”を意味する英単語だと思い込んでしまい、本当の意味が“前兆”だと知るには10年くらいかかった。
「超えられるはずはないし、続きを作るなんて命知らずだ」。そのくらい崇高なまでの完成度を持つ作品群である。だが、ここにきて2024年版のオーメン映画が誕生し、4月5日(金)から日本公開される。タイトルが「オーメン:ザ・ファースト」。舞台は1971年のイタリア、つまり最初の「オーメン」より5年ほどさかのぼる時代設定だ。最初の「オーメン」がどうしてああいう流れとなったのか、そのイントロダクションというかプレリュードが実に丁寧に描かれていく。
内容については、「オーメン」を見た経験のある人は「ああ、あれはこうだったのか!」とうなずきつつ手に汗握ることができようし、「オーメン」未体験の方は好奇心がさらに成長して、これまでの全作品を遡りたくなるだろう。古参も新参も等しくそそられる内容――それはシリーズものの一つの理想ではなかろうか。
監督にとっては初の長編映画
キャラクター原案は御年84歳のデビッド・セルツァー、製作総指揮と脚本はティム・スミス、監督はアルカシャ・スティーブンソン。スティーブンソンはこれが初めての長編映画らしいが、新鋭にあえて歴史的シリーズをぶっつけるプランは吉と出た。「1971年」の描き方にも、私は「うまいなあ」と心の中で声をあげた。襟の大きなシャツ、太めのパンツ、もじゃもじゃのヒゲ、もうもうとしたタバコの煙、自動車のデザイン、挿入される当時の流行音楽。政治やテロの季節であったことも画面は物語る。
あえてシャープにし過ぎないようにしたのか、薄くモヤのかかったような色調の箇所もあるが、リアルなところは徹底的にリアルで、それが鮮明な音響と相まって、実にビビッドな恐怖を促す。「山犬から生まれた悪魔の子」ダミアンの出生の秘密に迫る本作だが、人間関係の描き方もまた濃密だ。アメリカ人修練生マーガレット役にはネル・タイガー・フリー、ローレンス枢機卿役にはビル・ナイ、マーガレットと同じ孤児院で働くガブリエル神父役にタウフィーク・バルホーム、修道女見習いをしているマーガレットのルームメイト・ルス役にマリア・カバレロ、シルヴァ修道院長役にはソニア・ブラガが扮(ふん)する。
かつてパトリック・トラウトン(1987年死去)が演じていたブレナン神父は、「ハリー・ポッター」シリーズにも登場しているラルフ・アイネソンに引き継がれた。筋書きについては、教会の話だからといって身構える必要もなく、「こんなに分かりやすくていいのか」と思うほどよく分かり、それでいて、しっかり、どっしりと怖い。
ホラー映画の理想形「オーメン」は、最新版(前日譚)においてもやはり理想形であった。「オーメン」史に恥じない、手応えのあるハイスタンダードであった。そこがうれしい。怖いけれどうれしい、それが「オーメン:ザ・ファースト」である。
◆文=原田和典
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