映画「静かなるドン」出演の伊藤健太郎(右)と本宮泰風(左)

本宮泰風、伊藤健太郎は「生意気なガキ」で「すごく真摯に仕事に向き合う役者」 任侠の世界借り普遍的な人間ドラマ描く<静かなるドン>

2023.06.01 18:30
映画「静かなるドン」出演の伊藤健太郎(右)と本宮泰風(左)

累計発行部数4500万部超の大ヒットヤクザ漫画「静かなるドン」が、「令和アウトローレーベル」第2弾作品として前後編で映画化。5月12日より2週間限定での劇場公開だったが、好評につき6月5日(月)より6月8日(水) の期間で前編・後編同時公開が決定。さらに本日6月1日(木)よりDMM TVでの配信が開始となった。草食系サラリーマンとヤクザの総長、二足の草鞋で奮闘する主人公・近藤静也を演じた伊藤健太郎と、本作の総合プロデュースを担当し出演もしている本宮泰風が対談。今だからこそ感じられるヤクザ映画の普遍的なおもしろさから、本宮が見た伊藤の演技の魅力、俳優という仕事をする上で大切にしていることまで語ってもらった。

「生意気なガキ」と思いきや…「真摯に仕事に向き合うタイプの役者」

──伊藤さんは、最初に令和版「静かなるドン」出演の話を聞いたときはどう思いましたか?

伊藤健太郎 こんな言い方は失礼ですけど、古い作品なので、近い距離感で触れ合うことはなかったですが、タイトルはもちろん知っている作品。そういうものをやらせていただけるのはうれしいなと思いましたし、ヤクザものは今までやったことがなかったのでチャレンジングな作品になるなということも含めて、すごくワクワクしました。

──本作のプロデューサーでもある本宮さんは、伊藤さんにはどのような印象を持っていましたか?

本宮泰風 生意気なガキ。

伊藤 あははは(笑)。

本宮 これまで接点がなかったので勝手なイメージですけど。

伊藤 あながち間違ってないかもしれない(笑)。

──そのイメージは、共演して変わりましたか?

本宮 いや、変わんないですね。「間違ってなかったな」って。

伊藤 あはは(笑)。

本宮 嘘です、嘘です。好青年でした。

伊藤 それはそれで嘘くさくないですか?(笑)

──今回初めて共演して感じた、お互いのお芝居の印象はどのようなものでしたか?

伊藤 もちろんお芝居もそうですが、ヤクザの世界観というところで、本宮さんから吸収させていただくものが非常に多くて。ヤクザとしての立ち振る舞いとか所作とか、そういった部分で非常に勉強になりましたね。あと現場の居方でも学ばせていただくことが多かったです。本当に周りがすごくよく見えていらっしゃるんですよ。エキストラの方のボタンがズレていたのを本宮さんが気付いて直したこともあって。自分もそういう俳優になっていきたいなと思いました。

本宮 あれはたまたまです。でも健太郎が言ったように、役者同士ってカメラが回っているところよりも現場での居方みたいなものを見ているんですよ。人となりがわかる場面でもあるので。その点で言うと、伊藤健太郎という俳優は仕事人間というか、ずっと役者として日常生活を送っているんじゃないかと思うくらいに、すごく真摯に仕事に向き合うタイプの役者なんだなと思いました。びっくりしましたね、生意気なガキだと思っていたので(笑)。

──逆に言うと、実際にはヤンチャさや生意気さみたいな部分はなかった?

本宮 いや、ありますよ。主役として持っていなくてはいけないユーモアはきちんと持っていて、現場を和ませることもできる。それがこの若さでできるということに本当に感心しました。

伊藤 うれしいです。生意気なガキだと思ってもらえていてよかったです(笑)。

任侠の世界を借りて、描いているのは人間ドラマ

──令和版となった今作の脚本を読んだときはどう感じましたか?

伊藤 自分が出演させてもらうことが決まったときから「いろいろなことが厳しくなっている世の中でヤクザものをどう描くんだろう」とか「どう演じたら今の時代にも受け入れてもらいやすいのか」といろいろ考えていたんです。でも脚本を読ませていただいたら、そんなことを忘れてしまうくらいすごくすんなりと入ってきて。ヤクザものとは言っていますが、そこまで“ヤクザもの”と思いすぎる必要はないのかなと思いました。もちろんその要素もありますけど、年齢や性別を問わずに見やすい作品になるだろうなと思いました。

本宮 健太郎が言うように、テーマとして任侠の世界を借りているだけなんですよね。そもそも任侠ものというジャンルがどうして存在しているかというと、任侠は喜怒哀楽を簡潔に表現しやすい世界だから。任侠の社会をベースにしているけど、描いているのは人間ドラマ。今回もそこをテーマに、本当に性別年齢を問わずに見られる脚本を作ったつもりです。

──伊藤さんは初のヤクザ役でしたが、演じてみていかがでしたか?

伊藤 楽しかったし、任侠もののヤクザの筋の通った感じや、義理人情、他者を思う気持ちの強さは、すごくカッコ良くて素敵だなと思いました。ヤンキーとはまた違って“社会”という感じがしました。

──本宮さんから見て、伊藤さんのヤクザ役はいかがでしたか?

本宮 それはもう素敵でしたね。また雰囲気の違うアウトローな役もやってほしいです。もっとヤクザ役をやらせたい……というか、やるべきですよ。僕は普段から、若い世代でアウトローな役がきちっとできる役者は誰だろうと探しているところがあるんですが、「こんなところにいたんだ!」と思いました。またプロデュースできたらいいなと、今からすでに狙っています。

伊藤 いや〜、うれしいです。ありがとうございます。

自分が馬鹿みたいに笑うことで、誰かが笑ってくれたらいいな

──任侠映画のヤクザは義理や人情を大切に、意志を貫きますが、お二人がお仕事をする上で大切にしていることや貫きたいと思っていることはありますか?

伊藤 いっぱいありますけど……一番は出会いですかね。この仕事って、たぶんほかのお仕事よりも、1年間で初めましての人に会う回数がとてつもなく多い職業だと思うんです。しかも1ヶ月とか3ヶ月とか、その期間は毎日のように会う。家族よりも友達よりも、どんな存在よりも長く一緒にいるのに、撮影が終わると、下手したらその後一生会わないかもという人もいる。だからこそ、その期間が愛おしくなると思うんですけど。そういう意味でも、人との出会いは大事にしています。

──たくさんの人と出会い、関係を築いていく中で大切にしていることはありますか?

伊藤 よく笑う!

本宮 確かに「静かなるドン」の現場でもよく笑ってごまかしてたわ(笑)。

伊藤 バレました?(笑)

本宮 みんな気付いてるよ(笑)。

伊藤 でもやっぱり楽しいほうがいいじゃないですか。笑いって伝染するんで、自分が馬鹿みたいに笑うことで、誰かが笑ってくれたらいいなと思っています。

本宮 大事なことだよね。僕は健太郎みたいにきちっと生きていないので、そんな大義名分みたいなことは特にないですが、役者も人間なので、人としてどうあるかというのは無意識に考えていると思います。自分の中で、カッコいいかカッコ悪いかを常に選択している感じです。

伊藤健太郎は「必ず相手の芝居を受けて自分の芝居をする」

──では、お二人がお芝居する上で大切にしていることはありますか?

本宮 ないです。一生懸命やるだけ。

──伊藤さんはどうでしょうか?

本宮 聞かせてくれよ!(笑)

伊藤 えぇ!? そんな大層なこと言えないですよ。うーん、なんだろう……。

本宮 じゃあ俺が代わりに。芝居って、一人でやるときもありますけど、基本は相手があって成り立つものじゃないですか。健太郎は、相手の芝居をすごく受け入れているなと思いますね。僕は自分のやりたい芝居があったら、相手がどうであれゴリ押しすることが多いんですが、彼は必ず相手の芝居を受けて自分の芝居をするんですよ。たぶん無意識だと思うんですけど。でもそれはすごく大事なことだなって、今回の現場で彼から学びました。

伊藤 ありがとうございます。自分では無意識なのでわからないんですけど、そういうふうに見ていただけているのであれば、また同じ質問をされたらそう言うようにします。

本宮 監督の言ったことの飲み込みも抜群にいいし、勘もいい。監督の言っていることが伝わらなくて何回も同じシーンを繰り返すという場面は、撮影ではよくあることなんですけど、健太郎の場合はいつも一回で終わる。すごいなと思いました。僕はちょっとイラついた雰囲気とか出してごまかしちゃうんで(笑)。

──では最後に、改めて「静かなるドン」の見どころを教えてください。

本宮 「静かなるドン」は、僕らの世代はほとんどが知っている作品。名前だけじゃなくて、ドラマを見ていたり、漫画を読んでいたりして、内容も知っている人も多いと思います。でも長い間、記憶の片隅に追いやられていたと思うので、令和になってまたブラッシュアップされたこの作品を、ひさしぶりに楽しんでいただればと思います。

伊藤 逆に僕らの世代は知らない、もしくは聞いたことあるけど触れたことはないという人が多いと思います。そういう人でも、また普段はあまりヤクザものに触れない女性の方にも受け取ってもらいやすい内容になっていると思うので、年齢、性別問わず、全世代の方に楽しんでいただけたらうれしいです。

■取材・文/小林千絵

撮影/友野雄

伊藤ヘアメイク/竹島健二

伊藤スタイリスト/前田勇弥

衣装/レザージャケット: The Letters(レターズ)

その他スタイリスト私物

本宮ヘアメイク/坂口佳那恵

元宮スタイリスト/荒川小百合

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