地方発のコレクタブル ムスッとした「ジミー」《プラグマガジン編集長のローカルトライブ!》

6月中旬、岡山市内のギャラリーで「ONEDAY.factory」(ワンデイファクトリー)の期間限定店が開催されました。会場に並んだのは、植物の視点を想像しながら、ストリートの感覚を融合させた木工作品です。手足を生やし、ムスッとした表情でこちらを見つめる木彫りのキャラクターたち。愛嬌(あいきょう)と毒気が同居するたたずまいには、木製のオブジェとも鉢植えの飾りとも言い切れない不思議な引力があります。今回は、代表の中村聡さんを紹介します。
大工から作家へ
中村さんは岡山県倉敷市の児島生まれ。工業高校を卒業後、宮大工として神社仏閣の修繕に5年従事しました。ヒップホップに傾倒し、トークボックス奏者としてクラブやライブハウスにも立った生粋のストリート育ち。ベアブリックやマイケル・ラウにも心を奪われた世代です。
22年に独立した当初は家具を制作していましたが、溶接を覚えようと作ったアイアンのプランタースタンドをきっかけに植物と出合い、23年からキャラクター作品の制作を開始。「昔欲しかったフィギュア」の記憶と植物への愛情が結びつきました。代表的なキャラクターは「ジミー」。マダガスカル原産のパキポディウム・グラキリスをモチーフにした、卵形のような植物の子です。


素材はCLT(直交集成板)。ラフ画は一切描かず、型紙から荒切りした木材を、ベルトサンダーとオービタルサンダーだけで感覚的に削り出していきます。滑らかな丸みがすべて手作業によるものだと知れば、宮大工仕込みの技術にうなるほかありません。
制作期間は1体あたり約2日半。「てごうせえや」(手伝いして)など、作品名に岡山弁を用いるのも特徴です。中村さんは「植物の気持ちになって訴えかけている作品」だと話します。ムスッとした表情で鉢から抜け出し、ほうきを持って掃除をするジミー。そこには、面倒くささや不満を抱えながらも、自分で何とかしようとする姿が重なるようです。
浮かんだイメージのまま手を動かし、後からその意味をおさらいする。中村さん自身も、ジミーに自分を置き換えている部分があると言います。
無言の主張
24年の初個展を皮切りに、東京、大阪、名古屋、福岡、昨年は台湾でも展示を行うなど、活動の場は着実に広がっています。定期的に買い求めるコレクターも現れ、個展では作品がほぼ完売する人気ぶり。

中村さんにこれからの目標を尋ねると、「木工でも、ストリートから世界に届く存在になりたい」と答えてくれました。美術教育を受けたわけではなく、あくまでストリートカルチャーからアートへ軸足を移そうとする姿勢は、グラフィティーやフィギュアの文脈から駆け上がったKAWS(カウズ)の歩みとも重なるような気がします。
中村さんの言葉には、地方の木工作家という枠に収まらない野心がありました。伝統工芸だけでも、現代美術だけでもなく、ストリートと植物と木工の間にある表現。ONEDAY.factoryの作品は、地方の物作りが、保存や郷愁だけでなく、コレクタブルで世界的なカルチャーへ接続できる可能性を示しているのではないでしょうか。
木の塊から削り出された小さなジミーは、黙っているようで、案外はっきりと何かを言っている気がします。

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