服を選びたくなる街へ 地方“装”生の嚆矢へ企画再開《プラグマガジン編集長のローカルトライブ!》

25年12月の本連載「地方には〝装う動機〟が要る」でお伝えした『プラグマガジン』主催のファッションイベント「PLUG NIGHT」(プラグナイト)の再開。開催概要が正式に決定しました。テーマは「地方〝装〟生」。装うことの文化的な〝歓(よろこ)び〟を、都会だけの特権にしない。地方に暮らすことを、ファッションから遠ざかる理由にしない。その挑戦が再び始まります。
忘れられない言葉
日時は10月12日(月・祝)、会場は岡山市中心部にある歴史的建造物「ルネスホール」です。ライブゲストはm-floのLISA、DJには世界のテクノシーンで評価を高めるRISA TANIGUCHIと、エンジニアとしても多岐にわたるプロジェクトに携わるLucas Valentine。地元美容師によるランウェーショーや一夜限りのグルメなど、多彩なコンテンツを用意します。事前申し込み制・入場無料。


プラグナイトの初回開催は06年。当時、案内をして回るなかで、思いがけない反応に出合いました。「おしゃれをしないと駄目なら行きたくない」。そう口にする人が少なからずいたのです。
装うことを楽しみではなく、面倒な制約として受け取る感覚。これは衝撃でした。実際、初回は盛り上がったというより、なんとか形になったという程度のもの。それでも回を重ねるごとに来場者は増え、路面店や百貨店と連携して当日のためのコーディネートを店頭で提案してもらうなど、街ぐるみの企画へと育っていきました。「プラグナイトに何を着ていくか」を心待ちにする人が確実に増えていったのです。
もう一つ、忘れられない言葉があります。イベント開催前に近隣へのあいさつ回りをしていた時、ある高齢の商店主から言われた一言です。「お兄ちゃん、教えてあげるわ。街は盛り上がったら駄目なんよ。街っていうのは静かであるべき。ちょっとでも騒がしくしてもらったら困る」。にぎわいの創出が誰からも歓迎されるという思い込みが、根底から覆される経験でした。
いわゆる地方創生や地域活性は、こうした正反対の価値観にも真っ向から応えられるだけの深い思考と、強度ある言葉を持たなければならない。あの日以来、そう自らに課しています。
ありのままで良いか
「ダサい街でかまわない」「服なんてどうでもいい」。こうした価値観と私たちの掲げる理想は、どちらが正しいのかを決められない二律背反なのかもしれません。それでも、そうした空気が多数を占める地域の未来を、私はあまり明るいものとは思えません。それは経済の停滞よりも先に訪れる、文化的な貧しさにつながるような気がするからです。

街は人であり、装いは人をつくる。誰かに見られることを意識して服を選ぶ緊張感や、着飾って人に会う高揚感は、人と街の双方に〝張り〟を与えます。プラグナイトは単なるファッションイベントではなく、装うに足る「ハレ」を岡山に設え、街の未来を文化の側から諦めないための企画です。
装う動機が要るのは、岡山だけではないはず。地方で「おしゃれ」をすることが、特別なことではなく、もっと日常の喜びになりますように。

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