『死ねばいいのに』主演・奈緒、信頼が導いた“役を好きになる”芝居「蒼ちゃんがいてくれたら私は映子になれる」
京極夏彦による異色のミステリー小説が原作の主演映画『死ねばいいのに』で、何者かに殺害された女性の知人を訪ね歩く謎めいた女性・渡来映子を演じた奈緒。彼女が向き合ったのは、つかみどころのない役との対話であり、共演者たちとの真剣勝負だった。伊東蒼、前原滉、髙橋ひかる、草川拓弥、平原テツら共演陣との化学反応が生んだ奇跡的なシーンの数々。刺激的だったという撮影現場を振り返る。(前後編の前編)
――主演映画『死ねばいいのに』で奈緒さんが演じる渡来映子は謎の多い人物です。映子は、何者かに殺害された鹿島亜佐美という女性と生前、付き合いがあった人々のもとを訪ね歩きますが、前半は目的も亜佐美との関係性も明かされません。
奈緒 初めて脚本を読んだときは、どんな女性かが分からないので、つかみどころがなくて、どういうふうに演じるかも選択肢がたくさんある役だなと思いました。だからこそ金井純一監督との会話が重要になると感じたので、「事前にコミュニケーションをたくさん取りたいです」というお話をしました。金井監督も同じ意見だったので、何度も連絡を取り合いながら話し合いをさせていただいて、クランクインまでの期間を過ごしていました。
――やり取りの中で、役作りで大きく役立ったことはありますか。
奈緒 金井監督が「映子についてどう思うか」「脚本についてどう思うか」という意見を誰かに聞きたくなって、この映画に参加していないスタッフさんにも脚本を読んでもらったそうなんです。その中で、「映子のことをもう少し好きになりたい」という声があったと仰っていて、それが私にとっては大きなヒントになりました。私自身が「映子のことを好きでいていいんだ」と感じられたことで、心持ちがそこで決まったような感覚があって、みんなが今回の作品を作っていく上でも目指すべきところでもあるなと思ったんです。
――それだけ奈緒さんにとって、映子は愛すべき女性だったと。
奈緒 映子が大好きだからこそ、彼女の好きなところを誰かに分かってほしくなってしまうところがあって。どれくらい役と距離を置いたほうがいいかは考えました。映子自身はフラットな視点を持っているので、自分の気持ちが入り過ぎてしまうと違うのかなと思ったんです。でも、「好きでいていいんだ」と思えたことで少し安心できて、私が思う映子の隣に、常に自分がいれたらいいのかなと思いました。
――撮影をしていく中で、映子への見方が変わったシーンはありましたか。
奈緒 髙橋ひかるさんが演じる篠宮佳織(亜佐美の先輩・隣人)と対峙するシーンで、思った以上に映子が笑っていて。自分が演じているんですけど、撮影が終わって考えたときに、「今日すごく笑っていたな」という他人事のような感覚があったんです。それを金井監督に伝えたら、「俺も思ったんだよね」と仰っていて。自分でも想像していなかった映子の表情が出たのは不思議な体験でした。
――髙橋さんとのやり取りで、自然と引き出された表情だったのでしょうか。
奈緒 そうですね。もともと対峙する俳優さんによって自然と変わることがあるだろうと思っていたので、「このシーンはこうしよう」とあまり決めずに撮影に臨んでいました。
――佳織のように、映子が1対1で対峙するキャラクターは数名いますが、事前に各キャストとのリハーサルはありましたか。
奈緒 最初に金井監督と「リハーサルをやりましょう」という話をしていて、入念に本読みとリハーサルをさせていただきました。その上で本番に臨むと、全然違う形になっていったので、それが面白かったですし、刺激的でした。
――伊東蒼さん演じる亜佐美とのシーンも非常に印象的でした。
奈緒 もともと伊東さんのことはスクリーンで観ていて大好きで、ご一緒できると決まったときはうれしかったですし、光栄なことでした。それもあって本読みのときに伊東さんの一言目のセリフを聞いた瞬間、すごく惹かれる思いがあって。これはきっと映子にもあった思いじゃないかと感じました。うまく言葉では説明できないんですが、人と人が惹かれ合うときの、声を聞いただけでざわざわするような気持ちが、映子の中にも生まれていたんじゃないかと思えたんです。「蒼ちゃんがいてくれたら私は映子になれる」という確信を持てた本読みでした。
――撮影で特に印象に残っているシーンは?
奈緒 撮影となると、どうしてもイレギュラーなことが起きて、それをみんなでどう乗り越えていくかが大変なんです。映子と亜佐美、さらに平原テツさん演じる五條陸が向き合う屋上のシーンで雨が降ってきてしまったんです。大事なシーンなんですけど、天候の問題もあって、本当に撮り切れるのかなという不安もあったんですが、みんなで雨がやむのを信じて遅い時間まで待って。そんな中でも伊東さんと平原さんといるから大丈夫だという確信があったので、撮影再開後に、すぐ集中することができて。お二人との信頼関係があったからこそ撮りきることができましたし、「一緒に戦った」という気持ちがありました。
――完成した作品を見た印象はいかがでしたか。
奈緒 改めて奇跡的なタイミングで撮っていたんだなということを感じるシーンが多くて。現場でモニターを見ていなかったので、今起きていることがどういうふうに映るかは分かっていなかったんですが、「今のかっこよかった!」という声があがって、スタッフのみなさんがモニター前ですごく湧いていることが度々あったんです。どんなふうに撮れているんだろうと思っていたのですが、初めて映像で観たときに、「この空の色は素晴らしいな」「あの霧がこんな効果を生んでいたんだな」「風が面白い動きを生んでいるな」と一つひとつのシーンに感じられて。背景が力強く動いていたので、とても感動しました。
ヘアメイク/竹下あゆみスタイリスト/岡本純子
映画『死ねばいいのに』テアトル新宿ほか全国公開中!
出演:奈緒 伊東 蒼 前原 滉 髙橋ひかる 草川拓弥 田畑智子 平原テツ原作:京極夏彦 「死ねばいいのに」(講談社文庫)監督・編集:金井純一脚本:喜安浩平音楽:D flat主題歌:This is LAST「アイリス」(SDR)
©京極夏彦/2026映画「死ねばいいのに」製作委員会配給:S・D・P
公式サイト:https://shinebaiinoni-movie.com/
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