撮影:たむらとも

ハ・ヨンス「待っていてもチャンスは訪れない」30代で日本を選んだ決断

2026.07.01 08:03
提供:ENTAME next

韓国で活躍し、NHK連続テレビ小説『虎に翼』やTBSドラマ『DREAM STAGE』への出演で日本でも注目を集めたハ・ヨンスが、公開中の『ディッシュアップ』で日本映画初出演を果たした。小さい頃から日本のアニメをこよなく愛し、韓国で俳優として順調なキャリアを重ねながらも、自分の意志で来日を決意し、独学で日本語を覚えたという彼女の軌跡に迫る。(前後編の後編)

――日本への興味はいつ頃からあったんですか。

ハ・ヨンス 物心ついたときからアニメが好きで、ジブリはずっと好きです。子どもの頃からの夢は漫画家やアニメーター、画家などのクリエーター系だったんです。高校でもアニメーションを専攻していました。ただアニメには憧れていましたが、当時は来日まで考えたことはなかったです。

――初めて日本に来たのはいつですか。

ハ・ヨンス 高校の修学旅行で大阪に行ったのが最初です。私が通っていた学校が、大阪の学校と提携していたんです。そのときは日本語が全然できなくて、「おはよう」も怪しいくらいのレベル(笑)。

――どういう経緯で来日を意識したのでしょうか。

ハ・ヨンス スカウトをきっかけに2013年から俳優活動を始めたんですが、いろいろな仕事をしていくうちに、俳優の先輩たちが「日本でこんな仕事をしてきた」という話を聞いたり、出演した映画を観たりして、羨ましいなと思うようになりました。それで25歳のとき、事務所の社長に「私も日本の作品に出てみたい。なんとかならないですか」と何度もお願いしたんですが、そのたびに「今は韓国で経験を積むべきだ」と説得されて、その通りだと思って仕事を続けていたら、気づくと30代になってしまって……。「こんなに時間が経つのは早いのか」「今決断しないと一生、日本に行けなくなるかもしれない」「待っていてもチャンスは訪れない」と感じて、来日を決断しました。

――今の事務所には、どのように所属したんですか。

ハ・ヨンス 必要最小限の準備だけをして来日したのですが、すでに30代だったので、年齢のリミットがない今の事務所を見つけて、まずはzoomで面談をしてもらって、所属が決まりました。

――行動力がすごいですね。

ハ・ヨンス 待っていても何も起こらないですからね。

――来日前から日本語の勉強はしていたのでしょうか。

ハ・ヨンス 誰かに習ったことはほとんどなくて、独学ですが、ひたすら日本語を聞いて、反復して、しゃべってみたり、真似したりを繰り返しました。だから来日したばかりの頃は、かなり拙かったと思います。

――俳優という職業は自分に向いていると思ったタイミングは?

ハ・ヨンス 今でも本当にこの仕事が自分に合っているのかは分からないです。俳優活動を始めてからも、美術関係のお仕事に興味はありましたしね。ただ、学生時代の親友が、韓国でウェブ漫画を描いたり、画家として活動したりと、好きな仕事に就いた一方で、それだけでは生計を立てるのが難しく、塾の先生なども兼業していて、いつも「つらい」という話をしているんです。好きな職業に就いてもつらいし、もともと興味がない職業でも続けるうちに楽しくなる。誰もが「仕事だから頑張るんだ」という意識で動いているので、今は俳優として頑張っています。

――来日当時は、なかなか仕事が決まらなかったそうですが、2024年に連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合)で注目を浴び、今年はTBSドラマ『DREAM STAGE』の出演、公開中の『ディッシュアップ』で日本映画初出演と順調にキャリアを積み重ねています。

ハ・ヨンス こうして取材に来ていただいて、初めてお会いした方に自分の人生や仕事について素直にお話しできるのもうれしいんですけど、先のことは分からないですし、この仕事は待つことが多いので、不安はあります。ただ考えすぎても仕方ないので、とにかく仕事に前向きに取り組んでいます。

――『ディッシュアップ』に出演して、映画ならではのやりがいは感じましたか。

ハ・ヨンス ドラマの現場はテンポよく効率的に進みますが、映画はスタッフさんと俳優、みんなで一緒に作っていく感覚があります。韓国で出演した映画の撮影期間は2~3ヶ月が普通だったので、それに比べたら『ディッシュアップ』はタイトだったのですが、それでも一体感があったのは映画の現場だからなのかなと思いました。じっくり役について考えられたのは、外国人俳優の立場としてもありがたかったです。

――コロナ禍以降、韓国映画の制作本数は激減していますが、どのように捉えていますか。

ハ・ヨンス 今の韓国映画の状況については複雑な気持ちがあります。ドラマシリーズに軸足を移す方も増えているので、今まで作られてきた名作を超える作品づくりは難しくなっているなとも感じます。映画館に足を運ぶハードルが上がっている現状もありますが、私自身、動画配信サービスなどで映画を観ることが増えているので罪悪感も少しあります(笑)。でも、時間とお金と体力を使って「映画館で観たい!」と思っていただける作品を作り続けるのが大事なこと。その点、日本映画は低予算でも、個性のある作品が作られているので希望を感じています。

ヘアメイク:舩戸美咲スタイリスト:大山諒子

『ディッシュアップ』K’s cinemaほか全国順次公開中キャスト:⻘柳翔 ハ・ヨンス 三河悠冴 ドン・ニャット・クイン ⻄村和泉 菅原⼤吉監督・脚本:池本陽海公式サイト:https://dishup-movie.jp/

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