NHK夜ドラ『ひらやすみ』制作陣が語る“15分間”に込めた思い「今の日本のドラマの完成形」
NHKの夜ドラ『ひらやすみ』(月~木、22時45分~※NHK ONEで同時・見逃し配信中)が話題を呼んでいる。真造圭伍が手がけた同名漫画が原作で、29歳のフリーター・生田ヒロト(岡山天音)と、美大に進学するために山形から上京してきた18歳のいとこ・小林なつみ(森七菜)が、平屋で一緒に暮らす様子を描いた、“何でもない日常の愛おしさ”が滲むドラマとなっている。(前後編の後編)
◆漫画から飛び出したような2人
――岡山さんと森さんのキャスティングは完璧でしたね。
坂部康二氏(以下、坂部) キャスティングについて真造さんとも相談しながら決めていきました。2人とも多忙な役者さんです。承諾してもらえるか不安でしたが、もともと2人とも原作漫画を読んでいたという縁もあり、原作漫画や真造さんの魅力によって実現したキャスティングになりました。
――実際に演じている2人を見て、どう感じましたか?
坂部 “漫画から飛び出したような”という表現はこういう時に使う言葉なのかと感じました。漫画のコマとコマの間を生身の人間によって成立させていて、本当に奇跡的なバランスで実現できているのだと思います。
――言われてみると、漫画を見ているような感覚にもなりますね。
坂部 ただ、真造さんからは「漫画っぽくしないでほしい」というリクエストがあり、ドラマ化するにあたり「ただ単に漫画を再現すればいいわけではない」という意識で臨みました。
――漫画っぽくしないために気をつけたことは?
坂部 例えば、本作はオーディションによるキャスティングも行ったのですが、その際に“見た目が似ているだけではダメ”という部分は共有しました。そういう意識を持って制作を進めていったことが結果的に、漫画から飛び出したような自然な雰囲気を作れたのかもしれません。
◆輪ゴムマジックの裏側
――作中の印象的なシーンについて教えてください。まず、部屋で漫画を描いていることがバレて、なつみが長袖の袖の部分でパタパタしながらヒロトを追い出すシーンがあります。原作では手で叩いている雰囲気でしたが、なぜ袖でパタパタされたのですか?
松本佳奈氏(以下、松本) いくら羞恥心を覚えたからといって、生身の人間が叩いてしまうと強く、痛く見えてしまう恐れがありました。これは森さんのアイデアなのですが、なつみはいつもクネクネしているので、なつみらしい自然の動きの中から、あの叩き方が生まれました。
――なつみらしさの残る叩き方になっていましたね。
松本 そうですね。暴力的に見えかねないシーンでしたが、可愛らしいシーンになって、すごく良かったですね。
――作中屈指の名シーンと言えば、なつみが輪ゴムを使ったマジックを披露するシーンが挙げられます。見ているこちらも胸をえぐられるようなシーンを、どのように描いたのですか?
松本 撮影あるあるですが、「大体テストが1番いい」ということがあり、本番では輪ゴムが良い感じに飛んでくれずに何回も撮り直しました。このシーンはなつみの“トラウマ”として、その後も何度も思い出されるシーンですので、印象的かつ、面白くなるように注力しました。
――なつみが飛んでいった輪ゴムを回収して、椅子にうつむきながら座る様子も胸に来るものがありました。
松本 本当に上手いなと思いました。恥ずかしくてしょうがない気持ちが伝わり、「これなら大学に行きたくなくなるよな」と共感したくなりました。
◆クネクネは森七菜だからこそ
――自身が漫画家を目指していることを、友人の横山あかり(光嶌なづな)になつみが打ち明けるシーンも記憶に残っています。
坂部 なつみとあかりの距離がぐっと近づくシーンで、我々としては「大切にしたい」と思っていたシーンです。実はあかりのオーディションをする時、実際に森さんにも来てもらい、このシーンを演じてもらったんです。2人にとっては何度も演じてきたシーンでもありますので、そういう意味でも思い出深いシーンでしたね。
――また、常にクネクネしているなつみも中毒性があり、森さんだから見ていられる感じがありますね。
松本 最初はあんなにクネクネしていなかったのですが、2人で暮らす中で段々と心の距離感が近くなり、それに伴って身体の動きも激しくなった感じです。
――「さすがにクネクネしすぎでは?」と思う瞬間はありましたか?
松本 「こういう動きをできるのはたぶん森さんしかいないな」「これこそ森さんがなつみを演じてもらううえでの面白さだな」と思っているので、過剰とは思っていません。
◆ヒロトはお父さん?
――2人の距離感の心地よさもクセになります。恋人でもなく、兄妹でもない。いとこという絶妙な距離感で描かれていましたね。
松本 漫画では可愛らしく描かれている2人ですが、「いざ生の人間が演じた時、どういう風に見られるだろう」とは気にしていた部分です。10代の女の子と29歳の男性が一緒に暮らす、ということで、“そういう風”には見られないように、役者さんとはしっかり話し合いましたね。
坂部 脚本作りの段階から「このセリフは大丈夫か?」ということを細かく話し合って、意識的に恋愛的な匂いがしないように注意しました。
――具体的にどのようなイメージで2人の距離感を表現しましたか?
松本 ヒロトがなつみに「便秘か?」というシーンがあるのですが、文字面だけ見ると「大丈夫かな?」と当初は懸念していましたが、それと同時に「なんか良いな」とも感じました。というのも、「こういうことを言えるのってお父さんみたいだ」と。
――お父さん、ですか…。
松本 お父さんって、つまらないことやデリカシーのないことを言うじゃないですか。娘はそれに嫌悪感を示しますが、お父さんはゲラゲラ笑っている、みたいな。年齢的にはお兄さんですが、半分はお兄ちゃん、半分はお父さん、という立ち位置で描けていることが、程よい距離感につながったと思います。
――最後になりますが、本作をどのように楽しんでほしいですか?
坂部 平屋の世界、平屋を中心とした人々の日常を、隣人のような距離感で見守ってほしいです。あと、「癒したい」「ほっこりしてほしい」と思って制作しているわけではありません。ただ、真造さんが「入院してる人でも読めるような漫画を描きたい」という思いから制作された原作漫画なので、その思いは継承できればと思っています。
――原作漫画、ドラマも含めて、心に優しい内容になっていますよね。
坂部 そうですね。本当に「疲れた」「なんもしたくない」「動画とかテレビとか見たいけどなんか見る気が起きない」という時でも、比較的見やすいドラマになっていると思うので、最後まで応援してもらえると嬉しいです。なにより、演出の中心に松本佳奈さんというすばらしい監督を迎えることができ、「ド派手なエンタメではないけれども、今の日本のドラマのある種の完成形に仕上がっているのでは」と思っているので、ぜひ多くの人に見てもらえればと思います。
――松本さんはいかがですか?
松本 寝る前に見るのにちょうど良く、「明日はちょっといいことあるかも」という希望になれたらと思っています。誰かのそんなちっちゃな希望になれたら嬉しいです。
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