松村沙友理へのひと言も 佐久間宣行プロデューサーがラジオで見せる“気遣い”
ラジオリスナー有志によって、その月もっとも印象に残ったラジオ番組を表彰する「プラネット賞」やラジオにまつわるトークイベント「ラジオリスナーフェス」を立ち上げた岩井葉介が、自身が面白いと思ったラジオ番組について語っていく。今回はニッポン放送「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」を取り上げる。
放送3年目に突入した「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」
プロデューサーの佐久間宣行がパーソナリティを務める「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」は、2021年4月で放送3年目に突入した。
同時間帯の他曜日には、ファーストサマーウイカ・Creepy Nuts・マヂカルラブリー・三四郎という有名人が並び、彼らに比べると、佐久間は知名度が高いとはいえないだろう。
佐久間宣行という人物がどんな人なのか知らない方にむけて簡単に紹介すると、彼は「あちこちオードリー」や「ゴッドタン」という人気番組を手掛ける番組プロデューサーである。3月に退社しフリーランスになったが、放送開始時はテレビ東京の社員であり、“普通のサラリーマン”だった。
とはいえ、彼は放送業界の人物で、テレビ東京バラエティの有名プロデューサーとしてお笑い好きには有名な存在であり、一般的な普通のサラリーマンとは異なるのではないか?
6月30日には番組本「普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる-佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2019-2021~」が発売され、さらに勢いを増している今注目のラジオ番組だ。
今回は、7月7日に放送された番組内容を紹介しつつ、彼が普通のサラリーマンなのか?を考えてみる。
放送冒頭は、3年を過ぎてもラジオのスタッフが自分を一人ぼっちにするという状況を語りながら、この日が七夕だったこともあり、自分の願い事は「一度でいいからスタッフが打ち上げしてくれますように」だと笑いを交えながら話した。さらには、キアヌ・リーブスが自身のオンラインデートの権利をオークションに出品した話などについても語った。
佐久間はこういった話を本当に楽しそうに、「あのニュース見た!?」と友人に語るように話す。コロナ禍で飲み会などの機会が減っていくなか、彼のトークを聴いていると、あたかも二人きりで居酒屋で話しているような感覚になることがある。これはこのラジオの特徴であり、大きな魅力だと思う。
佐久間が話す、仕事でちょっと傷ついたというエピソードに対しては、私は「そういうことってありますよね」と自分の仕事に重ねたりしながら心で相槌を打ち、あんなに面白い番組を作っている人でもこういうことで落ち込むこともあるんだなと勇気づけられたりする。
企画説明がずば抜けてうまい
自身のYouTube「佐久間宣行のnobrockTV」が始まるという話では、テレビプロデューサーらしく、これから配信される企画内容と出演者の説明をする。それが本業なので当たり前なのかもしれないが、佐久間はこういう企画説明をするのがずば抜けてうまい。
先程まで二人で居酒屋にいたと思ったら、今度はテレビ業界の名プロデューサーとして企画会議で語っている佐久間を外からのぞき見しているような、普段は体験出来ないことを特別に見せてくれているというような感覚に変化している。
その後のフリートークでは、普段は妻と娘の入浴のあとに入る風呂に、その日は娘より先に入り、いつもの癖で風呂の栓を抜いてしまったことから始まる、娘の小さな復讐劇。そこに暗躍している妻という家族の構図をこれまた見事に語る。
佐久間のフリートークには家族が登場することも多いのだが、その中では先程のようなプロデューサーとしての佐久間の姿は全く感じられず、自身の失敗が妻にバレることに必要以上に怯え、年頃の娘にいいところを見せようとしたり、会話が出来ることを密かに喜ぶような、夫として父親としての佐久間の一面が垣間見える。
この番組では放送内でかける曲も佐久間が選んでいる。この日は、この番組の前に放送している「乃木坂46のオールナイトニッポン」で松村沙友理がグループ卒業前、最後の出演をしたことから、松村と白石麻衣のユニット楽曲である「流星ディスコティック」をかけ、番組冒頭では普段は「乃木坂46の○○さん、お疲れさまでした」と呼びかけて始まるところを「乃木坂46の松村沙友理さん、新内眞衣さん、『本当に』お疲れさまでした」と放送を開始した。
また、ミドリカワ書房の熱海をかけ、自身もロケ地として使わせてもらった熱海の思い出とともに、現在も被害に苦しむ熱海の方々への気遣いを口にする。
「結婚しないでそれぞれの生活があることも素晴らしい」
そして7月7日放送回ではないが、最近印象に残ったのは、星野源と新垣結衣の結婚報道に触れた際に「結婚することも素晴らしいと思うし、結婚しないでそれぞれの生活があることも素晴らしい」と口にしていたことだ。このような多方面への気遣いも彼を人気パーソナリティにした要素のひとつであるといえる。
佐久間宣行という人物は、テレビ番組のプロデューサーであり、トーク力に優れたパーソナリティであり、一般的なサラリーマンとは異なるのかもしれない。しかし、番組を聴いていくなかで、彼もまた普通の父親であり、夫であり、気遣いのできる大人であり、私たちと同じテレビやラジオや映画や音楽や演劇が好きな、普通のサラリーマンなのだと感じるようになった。
この番組では、彼のことを船長と呼ぶ。今日も私たちリスナーは”普通のサラリーマン”の佐久間が船長を務める船へと乗り込み、共に新しい港へ旅を続けているのだ。
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