小泉今日子×小林聡美 異例の3度目放送『団地のふたり』の「何も起きない日常」が教えてくれること
最近のドラマ事情に起きた異変といえば、小泉今日子と小林聡美が出演する『団地のふたり』(NHK総合)かもしれない。この作品、2024年にNHK BSで放送されて反響を呼び、翌年に全話一挙再放送された。再放送にも関わらずSNSで思い思いの感想が叫ばれていたのを記憶している。そして今年、満を持してなのか地上波で放送されてもなお、ファンから反響が続いている。すごい。たったの約2年間で3回も同じ作品が放送されるなんて、稀なことだ。確かにNHKでは再放送の回数が民放に比べると多いけれど、それでも快挙であるとドラマラヴァーとしては猛烈に讃えたい。
では、どんな内容だったのかというと……ざっくりと説明すると、アラフィフの女性ふたりの日常、だ。物語の舞台はオールドタイプの公営団地。この団地で育ち一度は結婚で出て行った太田野枝ことノエチ(小泉今日子)と、桜井奈津子こと、なっちゃん(小林聡美)は幼なじみの関係性。「竹馬の友」という表現の似合うふたりが離婚や恋人との別れを経験して、50代に単身となって団地に戻ってきて、ケンカをしながらも諸先輩たちに囲まれて楽しく暮らしていた。そんな団地とふたりを囲むご近所付き合いを描いている。
* * *
『団地のふたり』には、最終話が近くなって団地の建て替え問題が出てくる以外、特に大きな事件はない。ドラマでよくある友人が裏切った、パートナーが浮気していた、実は離婚歴があった、性自認が変わってしまった……など、ドラマの構成では必須のクリフハンガーはなく、些細な出来事が起きては時間が過ぎていく。例えば網戸の張り替え、フリマアプリでの販売、初恋の人、夏祭り、認知症の介護、娘の思春期など。私たちの周りにもふつうにあることなので、まず親近感がわく。考察をする必要もなく、ただ物語に脳を預けていればいいのは、ドラマ鑑賞の醍醐味だ。
そんな賑やかそうな中で主人公として活躍する、ノエチとなっちゃんは現代女性のロールモデルといってもいい。女性の生涯未婚率が人口全体の約18%になった(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023)改訂版」より)昨今、不景気などに苛まれて、私たちの未来は不安だらけ。このままいくと2030年には、単身世帯数が2025万世帯となり、総人口の17.0%を占めるとも言われている。数値で示されると現実味が背中を押してくるばかりだ。
ただ、ふたりを見ているとなんだかホッとする。
「なっちゃん、朝の菓子パンやめたんだ? あんなに好きなのに」
「いや~、実はね、こないだ受けた区の健康診断で、悪玉コレステロール値が去年より高いって警告されて、今、すごく(食事に)気をつけているところなんだよね」
「なんで隠してんの? そんなこと」
「まだ(言う)時期じゃないかと思って」
暇さえあればなっちゃんの家に行って、ふたりで井戸端会議。時には真面目にこんなことも言う。団地内でそろそろ初潮を迎えそうな女の子の世話をした後、ノエチがぼやいた。
「毎月、毎月、産む準備をしてきたのに結局、こんなところにたどり着いてしまった。しかも更年期という悩みを抱えて」
「まあいいんじゃない、そういう人がいても」
「親不孝、しちゃったかな」
未婚、子無しの私も身につまされる話題だ。なかなかぼやけない本音を代弁するかのように話している。この様子を見ながら(ああ、いろいろ考えているよりも、日々を一生懸命過ごすか)と落ち着く。加えて、このドラマにはふたりよりももっと年上の先輩方も登場する。第8話では男性からモッテモテの福田さん(名取裕子)は「自分の人生の主役は自分よ!」と、力強く言っていた。そんなメンバーを見ていると、自分も団地の一員に加わった気分になり、老後も楽しくなってくるから不思議だ。
そんな『団地のふたり』が終わっていく。またふたりにこの団地で会いたいなと願う。
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