今田美桜『クロスロード』が挑む"医療のリアル" 『ドクターX』とは異なる救命ドラマの新たな境地
今田美桜主演の『クロスロード ~救命救急の約束~』(テレビ朝日系、以下『クロスロード』)が放送中だ。主人公・春木遥(今田美桜)は救命救急科の若き救命医。「どんな命も救うことをあきらめない」と言い切り、患者を救うためなら常識を超えた行動もいとわない。
テレビ朝日を代表する医療ドラマといえば、米倉涼子主演の『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』を思い浮かべる人も多いだろう。「私、失敗しないので」の決めぜりふで知られる大門未知子(米倉)は、自信に満ちあふれた孤高の外科医として人気を集めた。
春木遥と大門未知子は、同じく「患者を救う」という信念を持ちながら、人物像は対照的だ。性格は熱血とドライ、世代も違えば組織に対する考え方もまったく異なる。遥は未知子に匹敵する人気を獲得できるだろうか。
◆時代に逆行する"熱血ヒロイン"
近年、若手医師や医学部生の間では、高収入で激務も少ない美容外科を志望するケースが増えている。本作でも、若手医師を取り巻くこうした現状が描かれており、医学部時代の同級生から「ねえ、遥はなんでしんどい救命なんて選んだの?」「うち(美容外科クリニック)来る? 当直残業なしで給与も今より高いよ」と誘われる場面があった。
遥はイマドキの若者には珍しく、体育会系で泥臭く、他者のために働くことを第一に考えている。非番の日もオンコールに備えて酒を控え、患者の命を救うためなら先輩医師に逆らうこともためらわない。
遥は医学部主席卒業といえども、『ドクターX』の大門未知子のように1人で手術を任されるほどの技術はまだない。成長過程にある遥を見守りたくなる点も『クロスロード』の魅力となっている。
また本作では、恋が芽生える予感もある。遥と救急隊員の渋川輝(寛一郎)、警察官の横峯健斗(泉澤祐希)は仕事への向き合い方が似ており、互いを理解し合っているが、友人以上への関係へと発展するのだろうか。第1話では"命の平等性"について深く考えさせられた。意識不明で運ばれた身元不明のホームレス・ヨシの治療法をめぐり、救命救急センター内で議論が交わされた。治療費を回収できる見込みがない患者への延命治療に反対する医師がほとんどだった中、遥は反対の声を上げた。
ヨシに家族がいることを察知した遥は、医師の職務を超えて家族を探し回り、ついに娘・京子を見つけ出す。しかし、ヨシの治療中に急患が運び込まれる。その人物は、暗号資産の連鎖取引で多額の利益を得ていた中ノ沢和夫。被害者の息子に銃撃され、重傷を負って搬送されてきた。
1台しかないECMO(人工心肺)を助かる見込みの薄いヨシに使うか、回復の可能性が高い和夫に使うか————。遥が「ECMOは…この患者(和夫)に使用するべきです」と、大きな瞳に涙を目にため、声を震わせる場面は切なかった。
現実社会でも、治療費を払えない患者や罪を犯した人への治療をめぐりさまざまな議論がある。一人ひとりがそれぞれ事情を抱え、誰にも生死を選別する権利はないと思う一方で、医師にも医療設備にも限りがある。「医療における平等」とは何かという問いに、簡単な答えは見つからないことを痛感させられた。
◆今田美桜だからこそ応援したくなる
今田美桜といえば、NHK連続テレビ小説『あんぱん』で演じた柳井のぶを思い浮かべる人も多いだろう。『クロスロード』は『あんぱん』以来となる主演ドラマでもある。のぶも感情豊かで真っすぐ、正義感あふれる明るい女性であったが、遥もまた同様のタイプだ。
今田が演じてきた、ひたむきで熱量ある女性の役には、「愛らしくて応援したくなる」というエールが送られている。筆者も、今田扮するキャラクターの大きな瞳に心奪われ、奮闘する姿に勇気づけられたことがある。
今田は朝ドラ女優としても成功を収め、CM契約数もトップクラス、現在もっとも勢いのある若手俳優だ。『クロスロード』も初回視聴率は7%を超え、TVer再生回数は7月7日から9日の3日間で140万回を超えた。
現在、テレビ朝日は"ポスト米倉"を探しているともいわれ、松嶋菜々子の名前が挙がることもある。そうした中で今田も、将来のテレビ朝日を代表する俳優として、大きな期待を集める存在になりそうだ。
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