Netflix世界一更新中「今、私たちの学校は…」の魅力とは?ゾンビパニックの中で高校生たちが知ること…
2022.02.07 21:54
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Netflixシリーズ「今、私たちの学校は…」が、9日連続で世界1位を記録するなど「イカゲーム」に続くグローバルヒットを予感させている。学校を題材にしたこのゾンビドラマが人々を惹きつける魅力、伝えるメッセージとはなんだろうか。<※ネタバレあり>
“学校”にスポットを当てた新たなKゾンビパニック
同作は突然ゾンビウイルスがまん延した高校に閉じ込められた生徒たちが、生き残るために力を合わせて戦う物語。原作はクリエイターのチュ・ドングンによるレジェンド級の人気ウェブトゥーンだ。コロナパンデミック以降、ゾンビ等ウイルスパニック系の物語への関心は世界的に高まった。中でも「新感染 ファイナル・エクスプレス」をきっかけにブランド化され「キングダム」等でも成功を収めてきた“Kゾンビ”作品への注目度は高い。
そんなKゾンビ作品において、学校が舞台という新たな見せ方に挑戦した本作。リアルな動きのゾンビが超高速で押し寄せるKゾンビの醍醐味を活かしつつ、生き残った生徒たちが校内を次々に移動していくことで、学校ならではのノンストップの緊張感が続いていく。ところどころで「新感染」へのリスペクトが感じられる演出があるところもファンには嬉しいポイントだ。
高校生の成長物語…学んだのは“大人の残酷さ”か
一方で本作は、子供でも大人でもない思春期の高校生たちが、ゾンビパニックのサバイバルの中で様々なことを得ていく成長物語にもなっている。誰もが経験した“学校生活”に視点を置くことで、視聴者もシンパシーやノスタルジーを感じられる。生徒たちが生き残るために学ぶのは、仲間の大切さ、自己犠牲の勇気、過ちを許し合うこと、価値観が違う相手と分かり合うこと、恋愛がくれる無限大の力…だけでなく、大人たちと、大人が作りあげた社会の頼りなさや残酷さまでもだ。
勇気を持ってゾンビたちに立ち向かう生徒たちに反し、役に立たない存在として描かれる先生たち、学生よりも政府の要人の救助を優先する消防や軍など…大人への絶望の中で、生きる希望を必死に探す彼らの姿からは、セウォル号沈没事件はもちろん、戒厳令下で学生と軍が戦った光州事件、権力者たちによって作られたずさんな社会構造で危機管理システムが欠如したことによって起こった三風百貨店崩壊や、大邱地下鉄火災など、韓国が背負う様々な負の歴史がメタファーとなっていることが感じ取れる。
“人間こそが恐ろしい怪物だ”というゾンビ作品に共通するテーマを、この作品では大人になる直前の生徒たちが「大人は怪物だ」と認識することで痛烈に印象づける。
リアルなパンデミックがコロナ禍に“刺さる”
また、コロナ禍以降のゾンビ作品として、パンデミックの複雑さや難解さをリアルに描いている点も引き込まれるポイントだ。同作でのゾンビ化は“ヨナスウイルス”という新たなウイルスによって引き起こされる。感染者に噛みつかれることによって感染が拡大するのは通例のゾンビ作品と同じだが、ヨナスウイルスは症状に個体差があり、中には“無症状感染”として人間の外見と知能を保ったままゾンビになる個体も出現するのだ。無症状感染者が現れたことによって潜伏期間の選定も難航し、感染の疑いがある人は何日も隔離されなければならない…など、コロナ禍で私たちが直面してきたジレンマがいくつも反映されている。
さらに、危険を顧みず感染地域に飛び込むYouTuberや、売名のため感染パフォーマンスを行うインフルエンサー、新興宗教勢力の台頭など、パンデミックによって引き起こされる混沌は、皮肉にもオミクロン株が猛威を振るう今、あまりに切実に感じられる。
すべての始まりは“校内暴力”
高校生たちの奮闘とともにさまざまな社会問題が浮き彫りとなる中で、結局私たちが同作で一番に考えるべきなのは“全ては校内暴力(いじめ)から始まった”という点だろう。ヨナスウイルスを生み出したのは、舞台となる高校の化学教師イ・ビョンチャンだが、彼がウイルスを作ったのは、いじめに遭う息子に超人的能力を与えて助けるためだった。また、学校側も警察もいじめを知りながらしっかりと対処しなかったことが、イ教師のウイルス作りのさらなる動機となっている。
イ教師はウイルスについて取り調べを受けながら、「みな共犯だ。こんな世界を誰が作ったんだ?小さな暴力を見逃せば、いずれ暴力に支配される。誰も私の警告を聞かなかった。『しょうがない』『子どもだからそんなこともありえる』そういう考えの人間がこんな世界を作ったんだ」と激昂する。
同作では暴力でのリンチだけでなく、性的搾取動画の強制撮影やオンラインでの流布、被害者の女子生徒が自殺を試みる姿まで描かれている。これらの描写に過激すぎるという批判もあったが、原作にも描かれたいま青少年たちが抱える切実な問題だ。
イ・ジェギュウ監督はインタビューで「視聴者に暴力の悲劇を感じてもらいたかった。大人になってその気持ちを忘れているのではないかと想起させたかった」と語り「表面的には校内暴力の話を描いたが、学校と社会は大きく変わらないと思う。学校だけでなく、どの集団でも起こり得ることで、こうした極端な状況を見て、『自分はどんな人間なのか』について考えたい」と述べている。
校内暴力に端を発する様々な暴力が、いかに非人道的であるか、それを許すことでどれだけの怪物が生まれ、増殖していくのか、この作品を見て、その事を考えないわけにはいかないだろう。
しかし、単純にものすごい迫力の映像や、スピード感溢れる展開、高校生ならではおちゃめなシーン、家族との愛情、尊い初恋…「結局ナムラかっこよすぎ」「テスの歌声に号泣」「イ教師役のキム・ビョンチョルがいなかったら韓国ドラマ界はどうなってしまうんだ」など、爽快ゾンビエンターテインメントとしても十分に楽しめる同作。東京都など13都県では、まん延防止延長が3月まで延長される見通しのようだ。外に出る機会も減った今、Netflixで高校生たちのサバイバルに思いを馳せてみてはいかがだろうか。(modelpress編集部)
【Not Sponsored 記事】
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