水曜日のカンパネラ・詩羽「20歳で人生を終えていたかもしれない」一通のDMが転機に 壮絶過去と戦う決意の瞬間…届けたい想いと愛とは<「POEM」インタビュー>
2024.03.09 07:00
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3月15日に初のフォトエッセイ「POEM(ポエム)」を刊行する3人組音楽ユニット・水曜日のカンパネラの主演&ヴォーカリスト・詩羽(うたは/22)にインタビュー。過去の自分とどのように向き合い、「傷をやわらかく抱きしめられるように」なったのか。自身初の武道館公演も控える中、“今”伝えたい想いとは。
詩羽、初のフォトエッセイ「POEM」
同書は、詩羽が今まで誰にも語ってこなかった、重く、しかし鮮やかな記憶を綴った自叙伝。詩羽はなぜ「愛」を大切にするのか。なぜ口にピアスが開いているのか。今に繋がる人生の一片を、自分の言葉で書き下ろした。文章に彩りを添えるのは、台湾や日本各地で撮り下ろした、美麗な写真の数々。横山マサト氏、仲川晋平氏、野口花梨氏という、詩羽が信頼を寄せる3人の写真家たちが三者三様の「詩羽」を切り出す。文字と写真がクロスする、不思議な世界観に仕上がった1冊となっている。詩羽「POEM」の撮影へのこだわり語る
― どれも個性と世界観が惜しげもなく楽しめるものばかりでした。それぞれスタイリング、テーマでこだわったところ、表現したかったことを教えてください。詩羽:今回、全体的なスタイリングとして普通の写真集よりもっと面白いものにしたいと考え、違和感をテーマに撮影しました。台湾では2ルック撮影を行い、妖精のようなイメージとロリータの格好で足元には怪獣がいるという見たこともないような珍しい組み合わせにしました。怖い雰囲気のメイクにわざと白い羽をつけるなど違和感を意識しました。
― 今回撮影した台湾にはどんな印象を持っていらっしゃいますか?
詩羽:2023年の初めと秋頃にライブで訪れたのが人生で初めての海外でしたが、日本を好きな方が多かったので、街の皆さんも優しく、ライブのお客さんも愛のある人たちばかりでした。2回だけしか行ったことはないですが、長く滞在したこともあり、私自身にとって大事な街となりました。
― 今回の写真集では3人のフォトグラファーの方が撮影され、それぞれ素敵な瞬間が収められていますが、撮影を振り返った感想を教えてください。
詩羽:海沿いで撮ったカットは私服っぽい服装で敢えて外で撮影し、見た人が違和感を抱くよう狙いました。今回の撮影で1番作り込んでいないナチュラルな雰囲気のカットになり、1番素に近い私が写し出されていると思います。洋風な場所で、セーラー服とロボットを組み合わせたカットは、人間的ではないイメージを合体させて違和感を作り込みました。オフィスでのカットは書籍にも書いていますが、大人に対するヘイトのような感情を表現するためにオフィスで敢えてパンクロックスタイルを見せることを実現させました。
― フォトグラファーは詩羽さんご自身が信頼を寄せる方ばかりだと伺いました。それぞれの方々とどんな化学反応を期待しましたか?
詩羽:スタイリストとフォトグラファー、それぞれ3人ずつで撮影したのですが、フォトグラファーの3人は私が芸能活動を始める前からお世話になっている方で、横山さんと野口さんは学生の時に出会いました。一緒に散歩をしながら写真を撮りに行くぐらい仲が良いんです。ずっとお世話になっている方と一緒に作り上げたいという思いがあり、多くの方々に関わっていただき完成しました。フィーリングが合う方ばかりなので、ベストなカットで構成できていると思います。
詩羽、初の自叙伝で“今”伝えたい想いとは
― これまで一貫して自己肯定感や愛について発信されてきましたが、同書にはその想いの動機について書かれていると感じました。なぜ今、このタイミングでお話されたいと思ったのですか?詩羽:活動を始めて2年半のタイミングで武道館に立つことが、改めて多くの方に知っていただく機会にもなり、自分の中で1つの区切りだと感じています。色々な場所で愛を大事に生きていきたいと話している中で、なぜ愛を大事にしているのか説明する時、愛されてきた人間と愛が足りなかった人間とでは言葉の重みが異なると思うので、私を支えてくれているファンの方たちへの説明もしたいと思った今、発信すべきと考えました。一方で、私のことをポップなだけの人間と見ている方たちにポップさを抱かれたままでは十分に伝わらないとも考え、自分自身が変わることで、まだ私の言葉が届いていない方たちにも伝わり、受け入れてもらえるような言葉で書きました。
― これまでの人生を振り返り、自己開示をたくさん行った内容になっていますが、どのような願いがあって、執筆されることを決意しましたか?
詩羽:覚悟を決めたら割と行動が早いタイプなので、書くことに対しての恐怖などはなく書き進められましたが、思い出したくないことも思い出して書かなければいけない時期は落ち込む日もありました。それでも自己肯定感の低い今の世の中には、自分のように愛が足りず上手に生きられない方が溢れていると感じ、その方たちに思いや言葉を届けるためには、自分にとって1番怖い“素直になる”という方法を取らないと上手に生きられない方を減らしたいという思いは実現できないと考え、書籍として残すことを決めました。
詩羽、2つのターニングポイント明かす
― チャームポイントでもある口ピアスを深夜2時15分に開けた経緯などがリアルに表現され、印象的に書かれていますが、この出来事はご自身でもすごく大きな転機だったのではないでしょうか。詩羽:誰にも何も言わず、親にも何を言われるか分からないまま自ら起こした行動でしたが、何もかもに負けていると感じていた現状と戦う決意の瞬間でもありました。弱いものに厳しい社会で20歳までは生きてやろうという覚悟の下、強く見せるために自分を取り繕った第1歩だったと思います。
― エッセイの中での、「死んでやろうと思った」と言うほどの苦しい時を経て、「お会いしませんか」の章で、生きる決意、理由を抱き始める詩羽さんの変化が印象的でした。「一通のダイレクトメッセージが届いた」でこの章は終わっていますが、この時受け取ったDMは詩羽さんの人生の中で重要な出来事でしたか?
詩羽:このDMだけで人生が変わったとは思っていませんが、DMが届かなければ20歳で人生を終えていたかもしれない中で、届いた一言をきっかけに気づいたらがむしゃらに動いて22歳になっていたので、DMが届いたからこそ今があると思っています。
― 表現することで好転していったのでしょうか。
詩羽:高校を卒業して、大学に進学してからは良い環境で過ごすことができ、楽しい日々を送っていました。その中でも自分なりの行動や表現が誰かに届き、繋がれば良いなとの想いからSNSで発信をしていたところ「水曜日のカンパネラ」をプロデュースする方の目に留まり、ここまで繋がることができ、人生が変わっていったなと感じます。
― 経験した“出来事”だけでなく、当時の“感情”もリアルに表現され、言語化されていました。これまでのご自身と、いつ、どのように向き合ってきたのでしょうか?
詩羽:日記などを書き溜めていた訳ではないのに過去の記憶がしっかりと残っていたので、執筆期間に自分自身と向き合い、これまでの経験や抱いた感情の全てを持ち合わせて今も進んでいるのだなと実感しました。過去の経験が良いとは微塵も思えませんが、何も経験しないまま大人になっていたらと考えると少し怖くもあります。この活動を通して仲良くなった方の中には、長年芸能界で活動しているからこその苦労や大人にならないといけない瞬間を重ねているのに、もし何も知らない恵まれた環境で大人になっていたら、自分とは違う苦労を少しも理解することができずにいたと思うから。自分で経験することによって他人の苦労やマイナスな部分も受け止められ、糧になっている部分もあります。
詩羽が怒り・悲しみを乗り越えた方法
― 家庭環境や学校等での経験で抱えた傷が大人になっても癒えない人はたくさんいると思います。どのようにしたら詩羽さんのように「その傷をやわらかく抱きしめられるように」なれますか?詩羽:1番難しいことだと思いますが、私の場合は表に立ってライブで支えてくれるファンの方の愛を受け止める瞬間が度々訪れることによって良い方向に進めて、初めて抱きしめてあげられるようになってきました。私の経験上、待っているだけでは周囲の環境は変わらないので、厳しいようですが自ら動いて人と出会い、自分の人生を作り上げていくことが大事だと考えます。自分の人生は自分のものでしかないからこそ、どうしたら幸せになれるのかを知り、まず今の自分自身と向き合わなければ過去とも上手に向き合えないと思います。
― 自分自身の中にある悲しみや葛藤と向き合ってきたのですね。同書でも触れられていた「死んでやろうと思った」などの感情を抱いた場面や落ち込む瞬間、これまで物事が上手くいかず壁にぶつかった時はどのように乗り越えて来ましたか?
詩羽:大きな壁にぶち当たったタイミングで私は口にピアスを開けて、髪を刈り上げましたが、自分を変えたいと思い行動を起こしました。すごく大きな出来事ではありましたが、このことに恐怖や不安を感じる暇もなく、これまでの人生が失敗続きで私にとっては1歩踏み出すことのハードルが低くなっていたのかもしれません。失敗するなら若いうちに失敗した方が良いとは経験上感じたため、できることがあるなら自ら動いて失敗も経験していくことが、1番自分を変えるきっかけで乗り越える方法だと思います。また、私の場合は人に頼れないタイプなので1人でできることは誰にも頼ることなく行動に移してきましたが、相談できる方や応援してくれる方が身近にいるなら頼っても良いのではないでしょうか。
詩羽、ライブで大切にしていること
― 3月16日には武道館ライブが開催されますが、どのような思いで当日を迎えたいですか?詩羽:ライブで緊張することはなく、楽しみの方が大きいです。ライブ前日にこの書籍が発売されるので、ライブでの言葉の重みが変わってくるかもしれませんが、いつも通りのライブをしたいと思います。ライブはすごく大きな会場でたくさんの方に「愛しているよ」とコミュニケーションが取れる機会でもあり、私が大きな愛を与えて、みんながその愛を返してくれる空間です。今回のライブでも目一杯の愛情を届けて幸せな気持ちで帰ってもらいたいです。
― 同書の中で、「これまでの半生は、自分は愛される価値のない人間だと思ってきた」とも書かれていましたが、大きなライブ会場では全員が詩羽さんのことを愛している方だけしかいないということにギャップを感じることはありましたか?
詩羽:ギャップは全く受け入れられていないですが、客観的に自分自身を見ているので、「愛されているね。私の人生面白いね!」と思いながら過ごしています。
― かつて愛されていないと思い込んでいた自分自身に掛けたい言葉はありますか?
詩羽:人生は何があるかわからない良い例が私の人生そのものだと思っているのですが、あまり期待させすぎず、「生きた先に何か良いことや愛があるかもよ」と言ってあげたいです。この書籍にも言えることですが、自分の言葉だけで誰かの人生を大きく変えることはできなくても、誰かの未来のための小さな半歩ぐらいを作り上げていきたいと思っています。
詩羽の「夢を叶える秘訣」
― モデルプレス読者の中には今、夢を追いかけている読者がたくさんいます。「水曜日のカンパネラ」2代目ヴォーカリストや役者として活躍され、夢を叶えられてきたと思いますが、詩羽さんが思う夢を叶える秘訣は何ですか?詩羽:行動あるのみ。私の世代を含めて世の中全体的に待っているだけの受け身の人がすごく多いと感じます。私自身もSNSで発信していたら、声をかけていただき今のお仕事に繋がったので、失敗も良い方向に進むかも知れないと恐れず、夢を叶えるために意思を持って積極的に行動を起こしていくことが自分や環境を変える1番の方法だと思います。
― 自ら行動を起こすことで夢を掴んできたのですね。葛藤や不安を感じながらも夢を見つけて挑んでいる詩羽さんと同世代の方に向けて、どのような言葉をかけますか?
詩羽:私を見て、良い方向に進んでくれたらいいなと思います。私のように好きな格好で、大事にしたいものを大事にして立っている人間もいるから大人にまみれて生きている若い世代の方たちは、自分の人生は誰のものでもなく自分のものとして色々なことに挑戦して、自分のやりたいことや意思を言葉にできる力を持っていてほしいです。私はその方たちに向けて、私の言葉や思いが響いてほしいと願い続けて行動していきます。
― 今後の目標や野望はありますか。
詩羽:今回、書籍を出版することで自分の言葉を発信する挑戦もできたので、やりたいことはできていますが、密かに進めていることもあるので現実的に落とし込めるようにこれからやっていきたいです。
― 同書をどんなに方に手に取ってもらいたいですか?またどのような言葉や想いを届けたいですか?
詩羽:多くは望みません。みんなそれぞれの人生があって、私のこれまでの人生が正しいかと言われたら、わからないところもあります。人生には面白いこともそうではないこともあり、何が起こるかわからないという1つの例としてこの書籍を受け取ってもらい、少しでも誰かの未来に繋がったらいいなと思っています。既に私のことを応援してくださっているファンの方には、改めて自分の言葉を届けたいからこそ読んでほしいです。私のことをまだ受け入れられてない方たちにも言葉が届き、受け止めてくれたら嬉しいですし、今辛い環境の中で負を抱えて生きている方たちが少しでも這い上がろうと思える可能性を与えることができたら良いなと思っています。
― 貴重なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
詩羽(うたは)プロフィール
2001年8月9日生まれ、東京都出身。2021年9月、水曜日のカンパネラに2代目主演&ヴォーカル担当として加入。2022年リリースの「エジソン」がSNSで話題となりMVはYouTubeで5800万回再生を突破(2024年3月現在)。2023年には日本のみならず、北京、上海、広州、台北を加えた8都市のアジアツアーを成功させる。また、音楽活動だけでなく、アーティスト、女優、モデルなどマルチな表現方法で自己表現を行う。2023年7月、初出演となる映画『アイスクリームフィーバー』が公開。同年、日本テレビ系ドラマ『最高の教師1年後、私は生徒に■された』でも生徒役で初のドラマ出演を果たし、女優としての活動も広げている。
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