モデルプレスのインタビューに応じた長澤まさみ(C)モデルプレス

長澤まさみが思う“芝居で最も重要なこと” 眞栄田郷敦の「爪痕残しすぎ」エピソードも<「エルピス―希望、あるいは災い―」インタビュー前編>

2022.10.22 17:00

女優の長澤まさみ(35)が、10月24日スタートのカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」(毎週月曜よる10時~)で4年半ぶりに連ドラ主演を務める。「やっぱり脚本家の方には色々と透けて見えちゃうんだな」――当て書きの浅川恵那というキャラクターには共感する部分も多かった。インタビュー前編では、日本を代表する女優が思う“演技の面白さ”、眞栄田郷敦&鈴木亮平との撮影秘話も聞いた。

長澤まさみ主演「エルピス―希望、あるいは災い―」

長澤まさみ、眞栄田郷敦/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
長澤まさみ、眞栄田郷敦/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
同作は、実在の複数の事件から着想を得て制作された社会派エンターテインメント。スキャンダルによってエースの座から転落したアナウンサー・浅川恵那と彼女に共鳴した仲間たちが、犯人とされた男の死刑が確定した女性連続殺人事件の冤罪疑惑を追う中で、一度は失った“自分の価値”を取り戻していく姿を描く。

恵那と共に行動するうだつのあがらない若手ディレクター・岸本拓朗役を眞栄田、恵那と拓朗の先輩で報道局のエース記者・斎藤正一役を鈴木が演じる。

脚本は民放連続ドラマの初執筆となる渡辺あや氏、演出は数多くのヒット作を世に送り出してきた大根仁監督が務める。“冤罪”という重厚な題材を扱いながらも、リアリティーに富んだコミカルな会話劇やスリリングな展開と演出で、観る者の感情を大きく揺さぶっていく。

長澤まさみが思う“芝居で最も重要なこと”

長澤まさみ(C)モデルプレス(ヘアメイク:根本亜沙美、スタイリング:亘つぐみ@TW、<衣装クレジット>3.1 Phillip Lim<問い合わせ>3.1 Phillip Lim Japan/TEL:03-5962-7061/customercare@3.1philliplim.co.jp)
長澤まさみ(C)モデルプレス(ヘアメイク:根本亜沙美、スタイリング:亘つぐみ@TW、<衣装クレジット>3.1 Phillip Lim<問い合わせ>3.1 Phillip Lim Japan/TEL:03-5962-7061/customercare@3.1philliplim.co.jp)
― まずは恵那の役作りについて教えてください。

長澤:台本は以前からすでに最後まであったので、どのように物語が進んでいくかという全体的な構造は始めから頭に入れられるようになっていました。でもあまりそこは意識しないようにしていて。もちろん役作りが大切なことは分かっているのですが、私が1番お芝居で重要だなと思うのは、やっぱり目の前で起こっていることにちゃんと反応していくことなんです。その場所で起こっていることに対しての時間を大切にしています。

恵那がどういう人物なのかというのは自分の中である程度固まっていますが、彼女はこの事件と向き合うことによって被害者や弁護士、新聞記者など今まで関わってこなかった人たちと出会うんです。それによって心が変化していくので、その場で起こるひとの化学反応をちゃんと捉えられるように、そこで生まれるものに対して誠実に反応していければいいなと思って取り組んでいます。

― 恵那はアナウンサーですが、その点で何か意識していたことはありますか?

長澤:渡辺あやさんの台本の中で描かれている恵那は色々な側面を持ち合わせていて、一つの側面で生きていないというのが本当に魅力的なんです。この物語はナレーションをベースに進んでいくのですが、恵那の心の声と仕事場にいる時がちょっと違う感覚で視聴者の方に伝わればいいなと思っています。全然違うと思わせたいわけではなく、感覚としてあればいいなという感じです。

その上で、アナウンサーという職業を意識しているところもあります。アナウンスシーンはこれから撮影する部分が多いのでまだどういう感じになるかは分からないですが、アナウンサーとしての佇まいを実際のアナウンサーの方に教わったりしながら役作りをしているところです。

長澤まさみが分析する浅川恵那

長澤まさみ/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
長澤まさみ/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
― 長澤さん自身は、恵那をどんな女性だと感じていますか?

長澤:今の恵那は立ち止まっていて、自分の中で何かくすぶってるものを持っている。上手く行かず、長いものに巻かれて自分の意志がないようにも見える状態だと思います。でも根本的にはとてもまっすぐで単純な人でもあるんだろうなとも感じていて、自分の求めることややりたいことに対して正直に生きているんですよね。なので根本には何かを持っているけど、今は悩みながら立ち止まっているような人です。

― 最初は報道の現場を目指していましたが、やはり正義感も強いのでしょうか?

長澤:そうですね。子どもの頃から自分の考えや主張があるタイプだったんだろうなと思います。誠実に生きている人なのだと。

長澤まさみ、恵那に共感「脚本家の方には色々と透けて見えちゃうんだな」

長澤まさみ(C)モデルプレス
長澤まさみ(C)モデルプレス
― 情報解禁の際には「自分の中にある、“恵那み”を絞り出して演じたい」とおっしゃっていましたが、恵那に共感したところを教えてください。

長澤:あやさんがこの役を当て書きしてくださっているのですが、やっぱり脚本家の方には色々と透けて見えちゃうんだなと思ったくらい共感することが多かったです。全く同じ考えとか境遇が一緒というわけではないのですが、行動の移し方や物事に対しての取り組み方に共感しました。

そそのかされてその気になっちゃっている感じは、俳優もそういう仕事だと思いましたし、柔軟に素直に演じることをやってきたので恵那の行動とも重なる部分がありました。

― 長澤さんもそそのかされてその気になってしまうような経験があった?

長澤:そそのかされて勘違いできたら1番最高じゃないですか。ちゃんとその役に染まれるということだと思うので。状況に勘違いするのではなく、役に対して勘違いしてその役を乗っ取るというか、そういう感じが演技の面白さの一つだと思います。

― 今回はその状況を目一杯楽しまれて演じられているんですね。

長澤:そうですね。なるべく恵那の気持ちを大切に思いながら演じられればなと思っています。

大根仁監督と「モテキ」以来の再タッグ

長澤まさみ(C)モデルプレス
長澤まさみ(C)モデルプレス
― 大根仁監督とは映画「モテキ」(2011年)以来のタッグとなりますが、11年ぶりに演出を受けてみていかがですか?

長澤:大根監督からは表現の仕方でも繊細な部分を求められることが多く、「こういう表情を作ってくれ」「気持ちはこういう感じで」とミリ単位の感覚で指摘を受けています。現場で処理するのが大変なくらい細かく演出していただいていて、監督は役への理解が本当に誰よりも深いんだなと感じていますね。私自身もなるべくより深く解釈できるように台本と向き合っているつもりですが、「やっぱり監督には勝てないなぁ」と思いながら毎日やっています。

― 11年ぶりの再タッグで、ご自身の成長や変化は感じられましたか?

長澤:作品に対して「こうしたいな」と自分なりの演じ方の理想がある中で、これまでは考えすぎて緊張してなかなか熟睡できないことが多かったんです。でも大根監督の撮影が始まってから、すごく安心しているようで、毎日ちゃんと睡眠をとれて現場で力を発揮できているので「信頼ってすごいな」と感じています。

監督への信頼があって監督の演出に説得力や安心がある分、現場で自分の力を出し切って、夜はちゃんと休んでまた翌日現場に向かえる。これが大根監督との関係性なんだなと思っていて、迷わずに取り組むことができています。

― 普段は緊張されるタイプなんですね。

長澤:そうですね。仕事で切り取られる時間は一瞬なので、やっぱり「いいものを作りたい」と強く思うとどうしても緊張しますね。

初共演・眞栄田郷敦&鈴木亮平の魅力

― 眞栄田さん・鈴木さんと共演してみて、第一印象から変化はありましたか?

長澤:ありました。2人ともすごく真面目な人というのは最初からなんとなく分かっていたのですが、郷敦さんは3年目の俳優とは思えないぐらい堂々とされていて、本当にまだまだどうなっていくのか分からない、未知の魅力を秘めた才能ある方だなと思います。一緒に現場にいても、芝居に対して貪欲に真剣に取り組んでる姿を見て、すごく心動かされるものがありますね。一緒に共演していてとても頼りになるなと思っています。

― 長澤さんも演技について相談を受けたりすることもありますか?

長澤:いえ、それぞれ監督と話し合う感じですね。今回私たちはバディともまた違うので、分かち合いすぎちゃうとちょっと違うというか。すれ違いながらもお互い前に進んでいくという関係性を尊重しています。

鈴木亮平/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
鈴木亮平/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
― 鈴木さんはいかがですか?

長澤:最初は明るくてきちっとした人というイメージで、もちろんその通りなのですが、もっとユーモアがあって、本当に人間的な魅力で溢れていて“魅力の宝庫”みたいな方でした。郷敦さんも鈴木さんのことをすごく尊敬していて大好きだったみたいで、鈴木さんのクランクイン前から「一緒に撮影するの楽しみだ」と何度も現場で言っていて(笑)。それを聞いて私も「どんな人なんだろう」と思って、いざ現場に行ったら郷敦さんと同じように鈴木さんにハマりました(笑)。私の今の推しです。

長澤まさみ、眞栄田郷敦の「爪痕残しすぎ」エピソード語る

眞栄田郷敦/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
眞栄田郷敦/「エルピス―希望、あるいは災い―」第1話より(C)カンテレ
― 「エルピス」の公式Twitterでは面白い撮影裏話がたくさん明かされていますが、眞栄田さんのシャツの胸元が開いていて、あまりのセクシーさに長澤さんが「シャツの胸元……しめたほうがいいよ…」と伝えたというお話がとても面白かったです。何か現場で印象に残っているエピソードはありますか?

長澤:ああ~!ありましたね(笑)!今回はマッチョ率高めなんです(笑)。溺れたらすぐに助けてくれそうな人が2人ほどいらっしゃるんですけど、それこそ郷敦さんがマッチョすぎて画角がおかしくなるというか、遠近感がおかしくなるというか…(笑)。

― どういうことですか(笑)?

長澤:私が早めに撮影が終わって、帰ろうと思って歩いている時にちょうどモニターの前を通りかかったんです。その時は郷敦さんが1人で何かを食べているシーンを撮っていたのですが、パッとモニターで見えた郷敦さんの1カットが、すごい大きい人が小さい家に来ちゃったみたいな感じになっていて…(笑)。

― トリックアートみたいな(笑)?

長澤:そうです!トリックアートみたいになっちゃってて(笑)。画面いっぱいに魅力が押し出されていて、「この人爪痕残しすぎ」と思いました(笑)。「エルピス」で郷敦さんを観たらきっと彼の人間力にハマる人もまた増えるんじゃないかなと思っています。

★長澤自身の正義や仕事への向き合い方、夢を叶える秘訣など、素顔に迫るインタビュー後編も公開中。
(modelpress編集部)

長澤まさみ(ながさわ・まさみ)プロフィール

長澤まさみ(C)モデルプレス
長澤まさみ(C)モデルプレス
1987年6月3日生まれ、静岡県出身。2000年に第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し芸能界入り。以降話題作に多数出演し、映画「キングダム」(2019年)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、「MOTHER マザー」(2020年)で最優秀主演女優賞など、数々の賞を受賞。映画「ロストケア」の公開を2023年に控える。

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  1. エルピス―希望、あるいは災い―

    エルピス―希望、あるいは災い―

    2022年10月24日(月)スタート

    毎週月曜22:00 / フジテレビ系

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