仲野太賀、活動当初に“痛感”大河ドラマ主演までの遠い道のり 初恋相手役・白石聖に溢れる感謝「何度も心を動かされて」【「豊臣兄弟!」インタビュー前編】
2026年1月4日より放送されるNHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合 夜8:00~ほか※初回15分拡大版)にて主演を務める、俳優の仲野太賀(なかの・たいが/32)にインタビュー。憧れであり夢だったという大河ドラマの主演のオファーを受けた際の心境をはじめ、座長として心がけていることや小一郎(仲野)の幼なじみであり初恋の人・直を演じる女優・白石聖の印象について語ってもらった。【インタビュー前編】
仲野太賀主演「豊臣兄弟!」
強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描く本作。仲野は、俳優の池松壮亮演じる藤吉郎(のちの豊臣秀吉)の弟・小一郎(のちの豊臣秀長)を演じる。天下一の補佐役を務めた秀長の目線で戦国時代をダイナミックに描く波乱万丈のエンターテインメントとなっており、脚本は「半沢直樹」シリーズ(TBS系/2013年・2020年)やNHKの連続テレビ小説「おちょやん」(2020年~2021年)などのヒット作を手掛けてきた脚本家の八津弘幸氏が担当する。立身出世を目指す小一郎と藤吉郎にとって絶対的な主君である織田信長を俳優の小栗旬、豊臣兄弟の母・なかを坂井真紀、姉のともを宮澤エマ、妹のあさひを倉沢杏菜がそれぞれ演じる。仲野太賀、大河ドラマの主役は「大きな夢」
― 今回、オファーを受けた際のお気持ちを教えてください。仲野:これまで、大河ドラマには5作品ほど出演させてもらっているのですが、作品の真ん中に立っている先輩方の背中を見ながら「本当にかっこいいな」と思っていました。俳優を始めたときから「いつか自分も大河ドラマの主役をやってみたい」という憧れや夢はあったのですが、この業界に入って俳優を始めてから“大河ドラマの主役”という夢がどれだけ遠いものなのか痛感しました。
気づいたときには、そんな大きな夢は頭の片隅に追いやってしまっている自分がいて。そんな中、こうして今回のオファーをいただいたときに片隅にあったその大きな夢がいきなり目の前に現れて「こんなことってあるんだ」と本当に驚きました。これまでの仕事すべてが全部繋がった結果だと思えて、これまでお世話になった方々の顔がすぐに浮かびました。
― 戦国時代が舞台ですが、そこに対するプレッシャーはありますか?
仲野:比較的、プレッシャーも力になっていくタイプですし「戦国だから特別に緊張する」ということはあまりないです。所作や乗馬の稽古など大河ドラマならではの準備にもすごく楽しく取り組ませてもらっていて、気づいたら乗馬が大好きになっていました。「もう乗馬の稽古に行かなくていいんじゃないですか?」という空気になっていますが(笑)、変わらず練習も継続させてもらっています。
仲野太賀が考える豊臣秀長
― 仲野さんは、歴史上の豊臣秀長をどういう人物だと捉えていらっしゃいますか?仲野:「豊臣秀長像」は皆さんそれぞれにあると思いますが、僕の印象として、すぐ隣に秀吉というカリスマ的な才覚とものすごい情熱を持って天下を統一する兄がいて、その兄の横で補佐役として支えていた秀長は、秀吉に見えていた景色とは違うものが見えていたのかなと思っています。秀吉や信長、家康のような天下人は、現代においても100人に1人くらいのカリスマだと思うのですが、秀長は99人側の人なのかなと思っています。そういう人だからこそ、天下統一を目指す秀吉には見えなかっただろう、家臣や市政の人々の姿が秀長には見えていたのかもしれない。秀吉と市政の人々との間にいた人だったのかなと思うと、秀長が見ていた景色はすごく大事にしたいと思います。
先日、奈良の壷阪寺に行かせてもらったのですが、そこには豊臣秀長公像があるんです。その像が作られたのは1630年頃、秀長が亡くなってから随分後の徳川の時代だったと推測されていて。豊臣政権が終わったのにも関わらず秀長の像が作られているのは、すごく不思議な話らしいんです。それはきっと、彼を「残したい」と思った人たちがいたから作られていて、その事実が秀長の人間性を物語っているのではないかなと思いました。あらゆる人に目線を合わせ、手を差し述べながら、豊臣の時代を支えて守ろうとしていた人なんだろうなと。
仲野太賀「すごく難しくて」苦戦した役作り
― それでは秀長の若い頃である「小一郎時代」はどのように理解して作り上げていかれたのでしょうか?仲野:秀長に対するイメージは、兄に振り回されながらも、一歩下がって兄を支えているイメージがあると思うのですが、これが役作りとしてすごく難しくて。そのイメージを守ろうとして「この役はこういう役だからこういうことはしない」と自分の中で制限をかけていくと、役がどんどん小さくなってしまうような気がするんです。
それは演じる上ですごく悩みどころでした。小一郎から秀長へと長い人生を描くからこそ、彼を活き活きとしていて生命力がしっかりある人間として、ただ受け身な人ではなく能動的な人にみえるように演じたいと思っています。
― どういった部分を能動的に演じられたのでしょうか?
仲野:物語が進んでいく中でいろいろな問題にはぶち当たっていくのですが、自発的に進む様子を意識しました。生活が貧しくて身分の差もある中で、小一郎の中に脈々とある“生きる上での生命力”を大事にしたいと思っています。
序盤は自分のコンプレックスや息苦しさを描いていて。百姓として家族と一緒に田畑を耕しながら自給自足の生活を送っていくことがある種の幸福だったと思うのですが、なかなかそう簡単にはいかない。家族と平和に暮らしたかっただけなのに畑を野盗に襲われることもあって。うまくいかない中でこみ上げてくる小一郎のエネルギーのようなものを表現できたら、ただの受け身な役柄ではなく物語を推進していくパワーになっていくのかなと考えていました。
仲野太賀、座長として心がけていること
― 座長として「こういう現場にしよう」と心がけていることなどはありますか?仲野:主演のお話をいただいたときから「憧れの大河ドラマで、座長然とした男になれるのか」と思い描いていたのですが、クランクインしたときもありのままの自分すぎて(笑)。これはもう自分らしくいくしかないなと思って臨んでいます。
雰囲気が明るく楽しいこと、和やかにいられる現場になるよう日々努めています。大河ドラマの現場というだけで俳優は少し緊張すると思うので、少しでもリラックスして皆さんが撮影に臨めるような空気作りをできたらいいなと思っています。
― すでに半年間撮影されているとのことですが、その中で発見したことや得たものを教えてください。
仲野:大河ドラマは1年半にわたる長い撮影になるのですが、力の入れ具合としては短距離走ではなくマラソンなんだなということに気づきました。最初はもう肩をぶん回しながらやっていたのですが、半年経って途中で肩が壊れて(笑)。いいコンディションで長く撮影を続けていくために、今は休憩をしながらゆっくりやっています。NHKさんは撮影の環境が素晴らしくて、基本的に土日が休みで月曜日がリハーサル、火曜日~金曜日に撮影があるんです。リズムがすごくしっかりしていてとても健康的だなと思っています。
― 休みがあるからこそ集中力やモチベーションが上がるということもありますか?
仲野:そうですね。撮影は気合を入れて撮って、ひと休みして仕込みをしてまた撮影に向かう、というルーティーンができていて、それが体にすごく馴染んできたのでとてもリラックスして撮影できています。力むことが全てではないなと学びました。
仲野太賀、秀長にとって「人生」だったもの
― 秀長は、関西とのゆかりが非常に深い人物だと思います。秀長にとって関西はどういう場所だったと仲野さんは思いますか?仲野:武将としての地盤がどんどん固まって、兄と天下を統一するために駆け上がっていった地が関西だと思うんです。そう思うと、秀長の50年の人生の中で、最も濃密でかけがえのない時間を過ごしていたのが関西なのかな、と。だから、関西は人生そのものだと思います。この兄弟がどういう風に成り上がっていったのかを楽しみながら見守っていただけると幸いです。
― 直さんとの恋仲も見どころの1つかと思いますが、仲野さんは、直さんをどういう女性だと捉えていますか?
仲野:小一郎は困難が目の前に立ちはだかったときに立ち止まってしまったり、後退してしまったり、自分の気持ちを押し殺したりする人ではあるのですが、そういう気持ちを直は瞬時に見抜いて、理解して背中を押してくれます。戦の世界に入っていく中で、最も小一郎らしくあれる場所であり、より侍として成長させてくれる人でもあり、とっても大きな存在だと思います。
― 白石さんと共演された感想を教えてください。
仲野:毎カット、これでもかというぐらい高い集中力で臨まれていて。白石さん自身は雄弁な方ではないし、すごく慎ましい方なのですが、一緒にお芝居をするだけで、いかに誠実に役と向き合っているかが手に取るようにわかる。伝わってくるものがすごかったんですよね。何度も心を動かされて、本当に白石さんじゃなかったらこうはならなかった、という僕の表情が沢山引き出されていると思うし、白石さんに直を演じてもらって感謝しかないです。とってもみずみずしく、みんなが好きになれる直を演じてくれています。現場の皆さんも本当に直が大好きですし、最高に魅力的な直を演じてくれたと思っています。
★後編では、今回初共演となる小栗旬に感じた凄さをはじめ、兄弟役としてともに作品を作り上げている池松壮亮への想いについて語ってもらった。(modelpress編集部)
仲野太賀(なかの・たいが)プロフィール
1993年2月7日生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。近年の主な出演作は、ドラマ「虎に翼」(2024年/NHK)、「新宿野戦病院」(2024年/フジテレビ系)、映画「十一人の賊軍」(2024年)など。公開待機作に「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ」(2026年3月27日公開予定)がある。もっと詳しくみる
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