吉岡里帆「御上先生」(C)TBS

「御上先生」吉岡里帆、反省して落ち込む日々も「役に向き合えている証拠」是枝を通じて伝えたい“リアル”・受けの芝居で意識していること【インタビューVol.1】

2025.03.02 12:00

TBS系日曜劇場「御上先生」(毎週日曜よる9時~)に出演する女優の吉岡里帆(よしおか・りほ/32)に、モデルプレスらがインタビュー。撮影現場の様子やキャラクターの印象、今作への向き合い方を語ってもらった。【Vol.1】

  

松坂桃李主演「御上先生」

松坂桃李、吉岡里帆「御上先生」(C)TBS
本作は子供が生きる「学校」、大人がもがく「省庁」という一見別次元にあるこの2つを中心に展開。未来を夢見る子供たちが汚い大人たちの権力によって犠牲になっている現実に1人の官僚教師・御上(松坂桃李)と、令和の高校生たちが共に立ち向かう、教育のあるべき真の姿を描く大逆転教育再生ストーリーだ。

御上が担任を務めることになるのは隣徳学院の3年2組。吉岡は、御上の前任で3年2組の副担任・是枝文香を演じる。

吉岡里帆、約4ヶ月で感じた生徒たちの成長

吉岡里帆、西本まりん、花岡すみれ、真弓孟之「御上先生」(C)TBS
― 「御上先生」への出演が決まった際の感想を教えてください。

吉岡:映画「新聞記者」(2019)で脚本家の詩森ろばさんを知り、当時映画館に2回行ったほど心動かされたのですが、今作も台本が素晴らしいです。ドラマでは撮影しながら脚本を書いていくスタイルが多いと思うのですが、詩森さんの中でやりたいことが明確で、早い段階で1話から最終話までの台本が全部揃っていて、その完成度の高さにすごく感動しました。

― ここまで演じてきた印象とドラマ全体の印象をお聞かせください。

吉岡:令和の新しい学園ドラマ、新しい社会派ドラマを作るという気概が溢れている現場で、これまでやってきたこととは違うことをしなければいけないという使命感があります。日本教育に切り込みを入れていく難しい題材で、演じていても毎回考えさせられますし、みんなで練りに練って撮影に挑んでいるので、チームとしての結束力が生まれています。

私は御上先生が生徒を成長させていく様をそばで見つめている役なので、1話から最終話の教室のシーンを通して、撮影している4ヶ月間での生徒たちの変化の大きさを感じています。みんなが主体性を持って仕事に挑んでいる姿と作品の中の生徒たちの成長がリンクしていて、作り物ではない生の感覚、自分事として社会問題に対して取り組んでいく姿勢が撮影中にも育まれていると思います。

吉岡里帆「御上先生」で感じた反省「役に向き合えている証拠」

吉岡里帆「御上先生」(C)TBS
― 是枝は聞き役だとおっしゃっていましたが、受けのお芝居をするうえで意識していることを教えてください。

吉岡:是枝は、自分の気持ちを全部さらけ出したり弱さを見せたりする場面がほとんどなく、気持ちを抱え込み、御上先生と比べて自分を卑下したり悲しむ気持ちすらも抑え込んでいます。いつも前向きな姿勢で生徒たちと向き合って「自分にできることは何だろう」と考え、御上先生の話を聞くたびに反省して、少しずつ成長していくキャラクター。だから、受け手としてみなさんのお芝居をしっかりと受け止めること、自分のキャラクターを前に出しすぎないことに気を付けています。生徒たちの存在がより引き立つように、御上先生がより素晴らしい先生であることが際立つようにと、周りのキャラクターを立たせるための役割を意識しています。あとは、目の前で起きていることをしっかりとキャッチする意識を持ち、成長していく生徒たちの本質までしっかり見るように心がけています。

― 演じるうえで、吉岡さんご自身がもどかしさを感じることはありますか?

吉岡:抑え込んで毎日を過ごしているので、たくさんあります。ただ、自分が爆発することは何のプラスにもならないので、“抑え込む美学”を信じています。自分のできなさを痛感したり、生徒のためになりたいのになりきれないという思いに陥るキャラクターなので、私自身も是枝と同じように「自分って何もできないんだ」と思ってしまったりと辛いときもありますが、弱気になってしまったり、反省して落ち込んでしまうことは役に向き合えている証拠なのだと思い、大事に持っておきたいです。

迫田孝也、松坂桃李、吉岡里帆「御上先生」(C)TBS
― 反省のようなものがご自身の中に溜まっていくという感覚は、これまでに経験したことはあったのでしょうか?

吉岡:今までも反省するシーンや自分の不甲斐なさを感じる役はやっていますが、是枝はすごく特別で、そういうのが24時間ずっと続くような感じです。今作は1年間を描いているのですが、御上先生によって生徒たちが成長してキラキラ輝いていく様を是枝も目の当たりにするんです。それで是枝自身も少しずつ「変わらなければいけない」という感情になっていくのですが、最終話でポロッと本音をこぼすシーンがあります。子供の頃から受けてきた教育やこれまでの経験ですでに形成されている人間は、簡単には変われないという部分にすごくリアリティを感じます。そのリアルさを体現したいと思い、時間をかけて少しずつ成長させていくように頑張っています。

吉岡里帆、撮影現場では「胃がキリキリするくらい集中」

吉岡里帆「御上先生」(C)TBS
― 視聴者の目線に近い立場である是枝の“視線”がすごく印象的です。意識していることを教えてください。

吉岡:受けの芝居をするときに“ハッとする瞬間”をすごく意識しています。自分がこれまで培ってきて、大人になって凝り固まってしまった価値観や性格に対して「そういう考え方があったのか」「自分はそんなこと思いもしていなかった」と疑問を抱く瞬間が1番大事だと感じていて。それはもちろん御上先生からも受けるのですが、「生徒によって変えてもらっている」「生徒のおかげで変わっている」というところを意識して、できるだけ生徒から受けるようにしており、相手が送ってくれているエネルギーを見逃さないことを大事にしています。

― かなり集中力が必要なのでは。

吉岡:そうですね。セリフはあまり多くないのですが、その中でも頭がキリキリするくらい、胃がキリキリするくらい集中して過ごしています(笑)。「こういう作品の取り組み方があるのだ」と新しい発見をしました。

上坂樹里、吉岡里帆、松坂桃李、「御上先生」(C)TBS
― 学校でも家でも、一歩引いて自分の思いを抑えている是枝の性格について、どのように考えていますか?

吉岡:一般的にドラマの中ではみんな好きなこと話すし、自身が抱えているものをドラマチックに語るシーンがたくさん出てきますが、リアルな生活の中では話せないことがいっぱいありますよね。仕事で悩んでいることがあっても恥ずかしくて言えなかったり、わざわざここで自分の意見なんて言うべきじゃないと思ったり…。私は是枝という役を通して、今生活している中でグッと自分を抑えて我慢しているたくさんの方々とリンクして、視聴者のみなさんと繋がりたいという気持ちがあります。また、日々葛藤しながらも、怠けているわけではなく、実は裏でいろいろ考えたり、自分なりの努力をしている姿を通して、同じように過ごしている人に「これでいいんだ」「自分もちゃんとやれている、やる努力をしている」と思ってもらいたいので、是枝に近い人たちに向けて、一生懸命少しずつ成長している姿を見せられるキャラクターにしたいと思っています。

あと、撮影が始まったばかりのときに、学校教育の監修で入っていただいている工藤勇一さんという有名な先生の授業を生徒たちと一緒に受ける機会があったんです。そこでは今日本が世界からどのくらい遅れを取っていて、日本ではどんな教育がなされたからどのような遅れを取ったのかという、すごく現実的な話をお聞きしました。そこで、さまざまな気付きがあり、このドラマを撮影する上で工藤先生のお話の影響は大きかったです。是枝はある種その日本の教育のあり方によって育った完成系のような存在にしたいと思っており、ずっと真面目に頑張ってきたけれど、もっと高く飛ぶためには負荷をかけなければいけないというのをうまく表現できたら、この物語の中で効果的な存在になれるのではないかと考えています。工藤先生が最後に「遅れを取っているけど、これからです。教育さえ見直していけば、巻き返していけるんです」とおっしゃっていて、その“巻き返していける”という様を是枝を通して見せたいと感じました。

吉岡里帆「御上先生」通して感じた“変わらなければいけない”部分

吉岡里帆「御上先生」(C)TBS
― 詩森ろば先生が、この作品を通して「最終的には大人たちが変わらないと乗り越えられない問題」が描かれているとおっしゃっていたのですが、吉岡さんご自身が「変わらなければいけない」と感じていることがあれば教えてください。

吉岡:謙虚さと自分を卑下することは違うのだという意識です。この現場にいると、自分の持ち味を最大限に出して、誇りを持つことを求められていると感じるのですが、是枝というキャラクターは「自分は御上先生よりできない」「自分は生徒の役に立てない」と卑下するような気持ちになりがちなので、自分自身もついついそこに陥りそうになってしまい…。でも、決してそうはならず、謙虚さの中に新しい要素を取り込んでいく強さが必要だと感じました。「自分なんか」と逃げずに果敢に挑戦して、詩森さんがおっしゃるように「変わっていかなければいけない」という意識を持って、“変わる努力をする”ことを今回は特に意識して過ごしています。

★Vol.2ではドラマ・映画「ゆとりですがなにか」シリーズぶりの再共演となった松坂の印象や素顔を語ってもらった。

(modelpress編集部)

吉岡里帆(よしおか・りほ)プロフィール

吉岡里帆「御上先生」(C)TBS
1993年1月15日生まれ。京都府出身。NHK連続テレビ小説「あさが来た」(2015)に出演し注目を集める。映画「正体」(2024)で第49回報知映画賞助演女優賞、第48回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。近年の主な出演作はフジテレビ系「レンアイ漫画家」(2021)、NHK BSプレミアム「しずかちゃんとパパ」(2022)、カンテレ・フジテレビ系「時をかけるな、恋人たち」(2024)、ディズニープラス スター「ガンニバル」シリーズ(2022、2025)、映画「ハケンアニメ!」(2022)、「Gメン」(2023)、「怪物の木こり」(2023)など。主演映画「九龍ジェネリックロマンス」が今夏公開予定のほか、2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」への出演も決定している。

「御上先生」第7話あらすじ

夏生大湖、松坂桃李、吉岡里帆「御上先生」(C)TBS
ヤマトタケルから3通目のFAXが届き波紋を広げる中、文科省では、津吹(櫻井海音)に悲劇が訪れる。目の当たりにした槙野(岡田将生)は…。

一方、椎葉(吉柳咲良)の問題行動が判明し、学校は退学処分を下す。心配する生徒たちに御上(松坂桃李)は、椎葉の問題が、社会問題とも通じていることを提起する。問題に向き合った生徒たちは、思いもよらぬ行動に出る。
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  1. 御上先生

    御上先生

    2025年01月19日(日)スタート

    毎週日曜21:00 / TBS系

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