「虎に翼」ジェンダー問題描写の意図、エンタメ界に求めること 脚本・吉田恵里香氏が語る「知ろうと思うことを恐れないでほしい」【インタビューVol.1】
女優の伊藤沙莉が主演を務める連続テレビ小説「虎に翼」(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)の脚本を務める吉田恵里香氏に、モデルプレスら報道陣がインタビュー。Vol.1では、LGBT・夫婦別姓などのジェンダー問題描写について語ってもらった。
伊藤沙莉主演朝ドラ「虎に翼」
第110作目の連続テレビ小説となる本作は、日本初の女性弁護士、そして裁判官である三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんをモデルに描くリーガルエンターテインメント。伊藤は、主人公の佐田寅子(通称・トラコ)を演じる。脚本執筆を終えての感想
― まずは、本作の脚本の執筆を終えた現在の心境を教えてください。吉田:後半の脚本を執筆している時からあと少しで終わってしまうなと実感して、やっと最後まで描き切ったという達成感とともに、終わらないでほしいという寂しさがあります。「虎に翼」の現場は、役者さんやスタッフさんを含め、すごく恵まれていて最初から最後までずっと楽しく描くことができました。ただ、描き切れなかったことや、もう少し深掘りできたなという部分もあるので、気持ちとしてはあともう1クールぐらいやりたいです(笑)。
― もし、あと1クールあったら、どんなお話を描きたいですか?
吉田:いっぱいあって悩みますね(笑)。よね(土居志央梨)も轟(戸塚純貴)も優未(川床明日香)も涼子さま(桜井ユキ)も、一人ひとりに「やれなかったな」「これ入れたかったな」というエピソードが沢山あります。あの人は今どうしているのか、ということや、女子部でのエピソードも回想で入れられるかなと考えていたのですが、構成を踏まえるとどうしても実現が難しく、最終回までもかなりぎゅうぎゅうに詰まってしまったのですが、これはこれで「虎に翼」っぽいなと思っていて満足しています。
「虎に翼」ジェンダー問題を描いた意図
― 本作で夫婦別姓やLGBTの問題を扱った背景や意図を教えてください。吉田:「虎に翼」のテーマでもある憲法14条「すべて国民は法の下に平等」を踏まえた上で、もちろん昔に比べたら良くなっていることはいっぱいありますが、まだ事例数も少なく周知されていないことによって不平等な扱いを受けている方が沢山いるという現状が事実だと思います。でもそれは決して今に始まったことではなく、もっと昔から、それこそ寅子が生まれる前から存在していたことが大半だったんです。それらをちゃんと見せることに意味があると思ったので、テーマを盛り込むという意識や「やってやる!」と尖った挑戦心ではなく、当時から居た人をきちんと書きたいなという想いが強かったです。
― 視聴者の方々にはどのように受け取ってほしいですか?
吉田:もしかしたら、朝ドラに性的マイノリティの方や外国の方が出演することに対して何か思う方もいるかもしれません。でも歴史を辿れば、昔から当たり前に存在していて現在と何も変わりません。この問題が70年以上経った今もあまり変わっていないということに対して「どうしてなのかな?」と想いを馳せていただけたら嬉しいです。
吉田恵里香氏「虎に翼」を通じたセクシュアル・マイノリティとの向き合い方
― セクシュアル・マイノリティをエンタメで表現するにあたり、どのように向き合われてきましたか?吉田:当事者の方は、決して“教える側”ではないのに、どうしても当事者の方に強いてしまいたくなったり、私自身も色々聞いちゃったりすることもあって反省する部分があるなと感じています。だからこそ、エンターテインメントや作品を通じて知るきっかけになることは大事だと思っています。私も描く上でやり方を間違えていることはあって、それによって当事者の方を傷つけてしまうのは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、怒られるからやらない、で終わりにするのではなく、自分が勉強してエンタメで描くことを当たり前にしていきたいなと思っています。「そのうち増えるだろう」と未来に託しすぎると、本当に歩みが遅くなってしまいます。人は絶対間違えるから、知ろうと思うことを恐れないでほしいです。
― 性転換した山田役の中村中さんをはじめ、マイノリティのキャラクターに当事者を起用したキャスティングの意図について教えてください。
吉田:私自身は、できるだけ当事者の方に演じてもらえたら素敵だなと思っているのですが、今回に関しては、主にスタッフの方々が動いてくださって実現することができました。ただ、当事者がその役を演じるというのは、いいなと思う反面、難しいなとも思いました。例えば、良くも悪くも当事者の方が矢面にたってしまうこと。この取り組みが絶賛されていくと、いつか『同性愛者の方はシスヘテロの役をやってはいけない』みたいな見当違いな意見が生まれる可能性がある。結果、オープンにしている方の仕事を狭めないかなど心配もある。今の社会でセクシャリティをオープンにできないことには、悲しい理由が沢山あります。当事者をキャスティングするだけでなく、そもそもの社会構造改善をエンタメ界が一丸となって取り組んでいくべきと思っています。
「虎に翼」キャラクターの描き方
― 女性の社会進出をテーマに描くにあたって、社会の法律の問題だけでなく、家庭や人間関係についても多角的に描かれていらっしゃるなと感じましたが、視聴者の方からの見え方を意識されていたことはありますか?吉田:「虎に翼」は、自分の人生を自分で決めるということをテーマにしていますが、寅子だけでは描ききれない部分が多かったので、女子部のみんなに最後まで出演してもらいながら描いていこうと決めていました。描き方については、私はバリバリ働いても良し、家庭に入っても良し…自分を発揮できるように心から望んだ生き方が一番だと思っているのですが、自分自身が働いていると、どうしても働いている側の立場に立ってしまうと視野が狭くなってしまう。ですので、寅子たちばかりではなく、専業主婦の花江(森田望智)のこともきちんと描くよう配分に気をつけました。主人公の寅子だけが正解ではないし、寅子も間違えることがあるということが大事だと思っていて、全てのキャラクターにおいてあまり美化しすぎないようにしています。役者さんや演出のみなさんの力をもあって、それぞれのキャラクターがすごく愛される存在になって嬉しい限りです。また、誰かに寄り添うと、誰かの見えていなかった部分が見えてくると思うので、そういう体験を作れたらいいなと思っています。
― 男性を描くにあたって意識していたことはありますか?
吉田:女性の生き辛さを描いている作品ではありますが、それって全ての社会の生き辛さに繋がると思っています。女性が生きやすくなったからと言って、男性が生きにくくなるわけではない。そこにはすごく気を付けて描きました。だけど、理解あるフリをして傷つけてしまうこともあるし、全く理解できない人もいて、全てにおいて正しい人はいないと思います。きっと「これだけ寄り添ってやっているのに…」みたいな気持ちも少なからず生まれてしまうのが人間だと思うので、そことどう向き合っていくのかは、女性も含め全てのキャラクターを描く上で意識しました。
― 視聴者の方からも様々な意見があると思いますが、どのように感じられていますか?
吉田:差別や誹謗中傷は絶対にダメですが、それ以外はどんな感じ方でも良いと思っています。まずは、当時から苦しんでいたり、寅子の言葉を借りれば、その時は折れて世の流れに身を任せたてきた方もいっぱい居ると思うので、それを知ってもらうことが大事でした。ただそれが、この数年にぽっと出たと思っている方が結構多くて、今出た問題を今解決するのは難しいから未来に投げちゃおうみたいなマインドになっていると思いますが、実はもう100年近く前からずっと放置されてきた問題であることを分かってもらえたら嬉しいです。色々な意見がありますし、作品の好き嫌いはその人が決めればいいと思うのですが、悩んでいた人が確実にいて、今も悩んでいる人が居るということに対して、私はどう言われても構わないので、問題提起や何かに繋がればいいなと考えています。当事者の方が矢面に立つべきではないと思いますし、エンターテインメントだからこそやれることがありましたし、やる意味があったと感じています。
★Vol.2へ続く!
「虎に翼」第121回あらすじ
香淑(ハ・ヨンス)は原爆被害に遭った外国人への支援を始めることを決意する。寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)は、大学院を中退し、家中心の生活を始めた優未(川床明日香)をそっと見守っていた。一方、朋一(井上祐貴)は最高裁事務総局から家裁に異動を命じられる。突然の決定に憤慨する朋一に寅子は言葉をかけられない。
(modelpress編集部)
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