Hey! Say! JUMP山田涼介、初共演・浜辺美波と「心の中でキャッチボールができた」繊細な演技の先に出した“答え”＜「サイレントラブ」インタビュー前編＞

山田涼介＆浜辺美波「サイレントラブ」

本作は、映画「ミッドナイトスワン」を手がけた内田英治監督によるオリジナルラブストーリー。ある出来事をきっかけに声を発することをやめた主人公の青年・蒼（山田）と、不慮の事故により目が不自由になり夢が途絶えかけている音大生の少女・美夏（浜辺）の“世界一静かな恋”を描く。

山田涼介、浜辺美波演じる美夏を“全力で守る”ことを意識

― 山田さんはラブストーリー映画で初めて主演を務めましたが、不器用ながらも浜辺さん演じる美夏に思いを寄せる蒼を演じる上で意識したこと、大切にしていたことはありますか？

山田：蒼というキャラクターは人生を諦めていた中で、美夏という光に出会って生きる希望を与えてもらった存在なので「美夏とどうなりたいか」というよりは「美夏のことを全力で守りたい」という気持ちが1番先行していたと思います。多くを語らない2人ですが、美夏の心情は弾いているピアノの音に現れるので、蒼はピアノの音や細かい仕草などを見て「美夏はきっと今こういう気持ちだろうな」と感じていて、蒼にとって“全力で美夏を守る”という1点だけに自分の人生を全て注ぎたくなる存在だったのだと思います。その蒼を演じるためには1つひとつの仕草も表情も繊細なものにしなくてはいけないと思い、意識しながら演じました。

― 浜辺さんはそういった山田さんの繊細な演技を受け止めた上でどのように意識して演じられていましたか？

浜辺：美夏は事故で目が見えづらくなり絶望の中にいましたが、本当に蒼の温かさが一筋の光のように見えて、無償に近いような救いの手を差し伸べてくれたありがたさを大きく感じて、まさに夕日のように照らしてくれたような存在だったと思います。私はそこにしがみついてすがっていくような気持ちで演じていました。

山田涼介＆浜辺美波、お互いの印象は？

― 今回お2人は初共演となりましたが、浜辺さんは小さい頃から山田さんのご活躍を、山田さんははじめから浜辺さんの女優としてのご活躍を見てきたかと思います。

浜辺：見ていました。（笑顔を浮かべる）

山田：ほんとか～？（笑）

浜辺：本当に見てましたよ！（笑）

― 最初はお互いにどのような印象を抱いていましたか？

山田：僕は本当に「綺麗な子だな」と。小さい頃からずっとご活躍されている姿を見ていたので、おそらく皆さんが思うイメージと同じです。でも、いざ現場で一緒になると、ものすごく大人っぽくて良い意味で年相応な感じがしなかったです。

浜辺：私はもうそれこそ『左目探偵EYE』（2009年／日本テレビ）も『金田一少年の事件簿』（2013～2014／日本テレビ）も観ていましたし、バラエティを家族で観ていてもどんなところにもいらっしゃるイメージがありました。同じ業界に途中から入りながらも、テレビの箱の中にいる人なのかなという意識がどこかあったので、生で山田さんを見た時に「あ、存在するんだ」と思いました（笑）。もっとクールな印象を勝手に抱いていましたが、雰囲気がとても柔らかくて、人間らしい温かみのあるお芝居をしてくださったので、私も演じやすくてありがたかったです。

山田涼介＆浜辺美波、役と似ているところを互いに分析

― 山田さんは美夏を包み込む蒼の優しさを、浜辺さんは美夏の芯の強さをそれぞれ体現されていたと思いますが、一緒に演じていてお互いに役と似ている部分を感じたところはありますか？

浜辺：山田さんは、演じている時の存在感がとても大きくて。何でも受け入れてくれる蒼の包容感と、主演として座長として周りを巻き込んで引っ張っていってくれる姿勢はとても共通していました。山田さんが演じるからこそ、蒼があんなにも説得力のある役柄になっているんだと思います。

山田：浜辺さんは、積んできた経験が豊富だということも含めて、7歳下という感じは全くしなくて物怖じしないし、ぶれない頼もしい存在でした。監督もビジョンが自分の中で明確にある方だったので、僕も含め意見の食い違いが出てきた時に「自分はこう思っています」と納得するまで話し合う姿勢を現場で見ていたので、そういう姿は美夏に通ずるものがあると思いました。

山田涼介、難しい役柄でも浜辺美波と「心の中でキャッチボールができた」

― 声を発することをやめた蒼、目が不自由になってしまった美夏という役柄をそれぞれ演じる上で難しさは感じましたか？

浜辺：普段は視線で感情が伝わるものも多いのですが、それができないからこそ、どこに視線を落としたら良いか、靄がかかることによって身体がこわばるなど副反応を表現するのをどこまで活かすのか、少し難しかったです。また、蒼や周りの人の存在をどれぐらい肌で感じるか、感じたものを表現に出していくかということも、監督と細かく話し合いました。例えば、山田さんがされたお芝居に対して「このシーンを成立させるためにこうしてほしいんだ」と指示をいただいても、目が不自由な役の中で、どこまでそれを自分の中に落とし込んで良いかが難しくて。感情の動きをシフトチェンジできるように、現場で少しお時間をいただいて作っていきました。

山田：もちろん声が出せないことで難しい部分はたくさんありました。でも、少し綺麗に言い過ぎだと思われるかもしれないですが、今回演じてみて心の中でキャッチボールができていれば、割と成立するのではないかと感じています。美夏から投げられたボールを指で返す時、強く返すのか、弱く返すのか、その指の返し方1つで、美夏は優しさや心の大きさ、人の違いを感じ取ってくれる人でした。なので、気持ちを乗せて叩いてあげるだけでも美夏と蒼はずっと繋がっていけると思い、僕はその仕草1つ1つの強弱を繊細にするように意識しながら演じていました。

― 浜辺さんは実際に指で返された時にそういった強弱を感じましたか？

浜辺：とても感じました。山田さんは、考えてきたものだけを出すだけではなくて、受け取ってもくださるし、投げたものに対して「大丈夫だよ」というような気持ちを込めて1つひとつの仕草を出してくださるので本当に演じやすかったですし、「どうしよう。何の感情も受け取れない」といったことはなかったです。

山田涼介、浜辺美波を「目の奥10cmで見て」比喩的な監督の指示明かす

― また、山田さんは監督から「目の奥10cmで見て」と難しい指示も受けたと伺いました。山田さんの中ではどのように解釈して演じられましたか？浜辺さんも同じように監督から比喩的な指示を受けたことはありましたか？

山田：蒼の眼差しについては、大前提として「死んだ魚のような目を常にしていてほしい」と言われていましたが、美夏を見る時だけ「目の奥10cmで見てくれ」と監督から指示がありました。絶望したこの人生の中で、美夏の存在が本当に特別で唯一の光だったと思うんです。蒼はその光を感じ取ってはいるのですが、光を忘れかけていた人間だから真に受けることができず、少し後ずさりしてしまうということなのかなと解釈していました。「これって何なんだろう」と戸惑いながらも惹かれていく後半に向かっては、美夏を見る目がどんどん変化していくように演じていましたが、それが果たして正解かどうかは分からないです。監督の言い回しは難しいと思いましたが「どうしたらこの子を守れるか」と常に一生懸命考えていたので、その真意が分からないままでも考えている時間を役に反映させることが正解だと考えて良いのかなと思っていました。

浜辺：確かに、監督は比喩表現が多かった印象があります。私は「音楽室の匂いやピアノの古臭い匂い、そういうのも全部感じて演じてほしい」という言葉をいただきました。あとは、“拒絶”というものをしっかり反応として出してほしいと比喩表現を多く使いながら伝えられました。文学的な表現だと自分の中に選択肢が広がって、そこから自分で絞っていったり、この表現も試してみようとなったりするので、監督に細かく聞きすぎない方がいいのだと思い、一度咀嚼してその意図を考える時間を少しずつ設けながら演じていきました。

後編では、美夏が通う音楽大学の非常勤講師・北村悠真を演じた野村周平との共演についてや、2人がそれぞれピアノ・格闘技に挑戦した裏話などについて語っている。（modelpress編集部）

山田涼介（やまだ・りょうすけ）プロフィール

1993年5月9日生まれ、東京都出身。Hey! Say! JUMPとして2007年に「Ultra Music Power」でCDデビュー。2008年には「スクラップ・ティーチャー～教師再生～」（日本テレビ）で連続ドラマ初主演。2015年3月21日公開の主演映画『暗殺教室』では、「第39回日本アカデミー賞」で「新人俳優賞」を受賞した。その後もドラマ「カインとアベル」（フジテレビ／2016）「セミオトコ」（テレビ朝日／2019）「王様に捧ぐ薬指」（TBS／2023）、映画「鋼の錬金術師」シリーズ（2017・2022）など数々の話題作に出演している。

浜辺美波（はまべ・みなみ）プロフィール

2000年8月29日生まれ、石川県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞し芸能界入り。2017年公開の映画「君の膵臓をたべたい」で、第41回「日本アカデミー賞新人俳優賞」などを受賞し新進気鋭の若手女優として頭角を現す。2023年はNHK連続テレビ小説「らんまん」のヒロインを演じたほか、劇場アニメ「金の国 水の国」（声優）、映画「シン・仮面ライダー」、映画「ゴジラ-1.0」などに出演している。