豊田裕大、初主演映画「レッドブリッジ」で挑んだ難役 「じゃない方の彼女」「妖怪シェアハウス」…俳優デビュー1年の苦悩と成長語る<インタビュー>
2022.06.09 07:00
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初出演にして初主演映画「レッドブリッジ」「レッドブリッジビギニング」が4日より池袋HUMAXシネマズにて2作同時公開中の豊田裕大(とよだ・ゆうだい/23)が、インタビューに応じた。
モデルプレスが毎年発表する「モデルプレスヒット予測」俳優部門ネクストブレイク枠にも選出された豊田は、2019年、初めて挑戦した「MEN'S NON-NO」モデルオーディションで「ラボ シリーズ賞」を獲得し、芸能界デビュー。2021年春に芸能事務所「トップコート」に所属して以降俳優活動を本格化させ、テレビ東京「じゃない方の彼女」で連続ドラマデビュー、そしてテレビ朝日系土曜ナイトドラマ「妖怪シェアハウスー帰ってきたん怪―」に新レギュラーとして出演するなど、順調にキャリアを重ねている。怒涛の1年間を振り返ってもらい、非行少年という難役に挑んだ心境もたっぷりと語ってもらった。
豊田裕大「役にしがみついていった」初映画で初めて得た感覚
「レッドブリッジ」は、「なん・なんだ」「テイクオーバーゾーン」を手掛けた⼭嵜晋平監督のオリジナル⻑編最新作。少年院⽣活を終え地元茨城に帰ってきた今⻄⼤輝(豊田)が、少年院で同部屋だった⼩⽇向健(松尾潤)の危機を聞き、同じく少年院で出会った仲間の坂口海斗(大倉空人)、巻⿓⼀(兵頭功海)と共に健を救うために⾏く先々でトラブルを引き起こしながら、奪った⾞で東京へと向かう“⻘春活劇”ロードムービー。「レッドブリッジビギニング」は4⼈の少年院での出会いを描いた前⽇談で、異例の2作品同時公開となった。主要キャスト全員をオーディションで選出。豊田は430⼈を超える応募者の中から腕っぷしが滅法強く友情に熱い主⼈公・今⻄⼤輝役を勝ち取った。
「まず、オーディション前に台本を読んだとき、不良とか薬物とか自分とは歩んできた人生が違う登場人物たちの話だからこそ、面白そうだなと思ったし、そういう作品を経験したいと思いました。オーディションでは海斗と龍一と大輝のそれぞれを回して演じたので、それぞれの自分が思ったアプローチの仕方を実演して、そのときから大輝が自分の中でも一番ナチュラルにできていたなという印象がありました。決まったときはとてもプレッシャーもあり楽しみな気持ちもありましたが、やるしかないのですぐに切り替えて、同世代の方々と一緒にできるので、主演は主演なんですけど、皆で一緒に作るという気持ちで撮影に臨みました」
発表コメントの際、「大輝は自分とは全く共通点のない複雑な環境で育った青年」と言及していた通り、役作りは外見から精神面まで、細かいところまで作り込んでいった。
「両親がいなくて児童養護施設で育って非行に走ってしまっているという台本に書いてないところを監督と相談したり、自分で考えて拾っていくようにしました。あとはYouTubeや本などで、非行に走ってしまった経験者の方や、それについて説明しているものを見てどういう気持ちだったのかを探ったりしました」
実際にスクリーンの中の大輝は、おかっぱ頭のビジュアルに、無鉄砲で手に負えない非行少年で、目の前の豊田のスタイリッシュでアンニュイなイメージとはかけ離れているが、「本当に役にしがみついていったという感じで、初めて自分で『あ、(役が)馴染んできているな』という感覚が分かった作品だったんです。自分を変えていくという意識ではなく、無意識に大輝になれるようになっていました」と今作が一つのターニングポイントとなったという。
「クランクイン前にイメージを大まかに決めてはいたんですけど、いざやってみると難しくて最初の方は正直まだ手探りな状態でした。でも監督から『ここの大輝のセリフはこういう感情なんじゃないか』といった指導をいただいて割とコミュニケーションをとらせてもらったのですごくやりやすかったです。段々撮影以外で歩いているときも『大輝だったらこう歩くな』というのがすぐに頭に浮かぶようになって体に少しずつ染み付いていきました。撮影期間が短かったので、それでもまだまだ浅かったとは思うんですけど、自分としては初めての経験でした」
豊田裕大、薬物中毒者を演じる難しさを経験
数あるアクションシーンでは、3歳からプロバスケットボール選手を目指していたという豊田の運動神経も発揮されている。「大輝が割とドロップキックを多くするんですけど、そういう動きはバスケットで使っていたジャンプ力が割と活かされたかなと思います」と明かし、「殴り方1つにしろ、キャラクターそれぞれの人生が出ると思っていて、大輝だったら北関東でもトップクラスに強いという設定なので、殴る姿勢とか、雰囲気や目線も含めて固めていくのが大変でした。アクションチームの方がすごく助けて下さったので、本当にその方たちのサポートがなければ成立しなかったなと思います」と自身初のアクションシーンの苦労を振り返る。それよりも苦戦したのが、タイトルにも象徴されている歩道橋の上で幼馴染と再会し、薬物を使用する場面。コミカルな場面が続く中、雰囲気が一変し、観客に鮮烈なインパクトを残す重要なシーンだ。
「もちろん薬物を使用するとどうなるのかは予習していたんですけど、当然実際に使ったことがないので想像でしかないし、そこに至るまでの表情と薬物を使った後のセリフが難しくて、『顔だけで表現するようにしよう』と監督と話し合って演じたので、印象に残っています。割とこの作品は薬物を使うシーンは出てくるんですけど、薬物自体のダメージや怖さを分かりやすく表現しているシーンは少ないので、そこでどれだけ『レッドブリッジ』においての薬物の分岐点を作れるかどうか。物語はずっとドライブシーンが続いているので、一つの折り返しになれば良いなと思って演じていました」
豊田裕大、大倉空人・兵頭功海・松尾潤との撮影秘話
他に印象的だったシーンを聞くと、「海斗(⼤倉空⼈)がデリヘルの女の子のボディーガードにさらわれてそれを助けに行ったら結局ボコボコにされて皆でパンイチになったこと。撮影は冬だったのでめちゃくちゃ寒くて凍えながらやっていて、男3人で『青春だね』とか言っていたのが楽しかったし印象に残っています」と懐かしそうに話した豊田。同世代の共演者が集まり仲が深まったといい、「10日間だけだったんですけど、朝から晩まで撮影だったので密に連絡も取り合い常に一緒にいる感じでした。皆すごく良い人ばかりだったので雰囲気も良いまま崩れることなく撮影に集中してできました。撮影の合間は作品の中で下世話な話が出てくるので、そこに対して『やっぱり学生時代はこういう話、友達としてた?』とか、本当に中学生高校生に戻ったような会話がずっと続いていましたね(笑)」とエピソードを打ち明けた。
⾏き場のない若者たちの葛藤や衝突を時にコミカルに、時に切なさをもって描き出した今作で、豊田が感じて欲しいこととは―――
「人としても未熟な少年たちのお話なので、『自分とはかけ離れている』と思う人が多いと思われてしまうかもしれないけど、1つのボタンの掛け違いで道を踏み外してしまうこともあるし、表面的なことだけで色眼鏡で見ないようになったり視野が広がったりする作品だと思うし、自分の中の価値観を1つ増やせるような感覚になってくれたら嬉しいです」
豊田裕大、デビュー作「じゃない方の彼女」での苦悩と成長
第34回「MEN'S NON-NO」モデルオーディションを経て専属モデルとなり、事務所所属が決まって約1年。俳優のキャリア1年目としては超スピードで大役を掴んでいっているが、この1年間はどうだったかと聞くと、少し悩みながら、「すごく早く過ぎたけど、どれを振り返っても鮮明に記憶がすぐに戻れるような1年間でした。役者というもの自体まだまだ修行中というか板についていない部分もあるんですけど、それでも自分のやりたいことを表現していく難しさと楽しさを覚えた1年でした」と謙虚に言葉を紡いでくれた。濱田岳主演の「じゃない方の彼⼥」では、彼女・彩菜(東野絢香)の幼馴染である天然系魔性女子・怜子(山下美月)のことを、最初は「苦手」と敬遠しながら知らず知らずの内に惹かれていってしまう同級生・誠を演じ、複雑な恋心の表現が求められた。
吸い込まれるような瞳と無垢な存在感で視聴者を引き付けた豊田だが、当時は全てが初体験で一筋縄では行かなかったという。
「役に入るということ自体が分からなかったので、そこがまず大変でした。最初は台本を覚えて現場に行って大勢の前であたかも2人だけの空間を作るということへの違和感からすごくあって…。セリフの背景もちゃんと突き詰められずに最初は発していたんですけど、段々と『セリフがないけどその前の行動は何をしていたんだろう』とか『セリフを言い終わった後、誠は何を考えているんだろう』ということを考えられるようになりました。監督が撮影の終盤ぐらいにマンツーマンで『お芝居は一番細かい最後の作業をするところなんだよ』というお話をして下さって、それがすごく印象に残っています」
周りのキャストにも助けられたといい、「僕が初めてというのもあってテストの段階で、『これで大丈夫?』とか皆さん話を聞いて下さって親身になって何回も本番が始まる前にセリフを確認させてもらったりしました。すごく迷惑だったと思うんですけど、助かりました」と回顧した。
豊田裕大「妖怪シェアハウス」撮影で小芝風花に聞いたこと
「妖怪シェアハウスー帰ってきたん怪―」では交番の巡査・佐藤満役を熱演。撮影では主演の小芝に相談することもあったという。「小芝さんは受けの芝居というかリアクションがすごくお上手で、澪というキャラクターありきでオーバーにされていると思うんですけど、満もどちらかと言うと被るところが多いキャラクターだと思うのでそこを真似させていただきました。小芝さんにはなぜそんなに表情豊かなリアクションができるんだろう、ということを聞いたら『それはもうひねり出すんだよ』とおっしゃっていて、ひねり出してみよう、と一緒に頑張りましたね(笑)。本当に周りの皆さんがとても芝居上手な方ばかりなので乗っかったり、ぶつかりに行ったりという毎日でした」
注目の次世代俳優・豊田裕大の素顔
1年で注目度は格段に上がり、取り巻く環境も変わったと思うが、「(ファンが)増えている実感は少しあるんですけど、特にそこを意識していないですね。もちろん応援して下さる方に感謝はしているんですけど、そこに左右されるよりもフラットな気持ちでいることが重要だなと思っています」と地に足の着いた言葉が印象的だ。両親は出演作をチェックしてくれているそうで、「『ひやひやしながら観ているよ』と言われるので『そりゃそうだろうな』と(笑)。自分の子どもが演技をしていたら急に自分の子どもじゃなくなるみたいなむず痒い感覚なのかなと思って気持ちは分かります」と照れくさそうに笑った。
俳優としての目標は「自分が納得できるようなお芝居をする役者さんになること。何年も残るような名作と呼ばれるような作品に出ることができたら、1つ役者をやっていて報われるのかなと思います」と回答。後挑戦してみたい役柄を聞くと「今はいじめっ子の役とかやってみたいです。普段は悪口を言ったり、匿名でも書き込んだりしないタイプなので、役では毒を吐いてみたりしたいのかな」と想像した。
最後に夢を追うモデルプレス読者に向けて“夢を叶える秘訣”を聞くと「最近意識していることは、フラットでいること。自分のやりたいこととか、やりたくないことをはっきり明確にさせてそれを行動に移すこと。どこかで誰かに萎縮してしまったり『自分なんて』と思っているとそれが本当に表面に出てしまうと思うので『どうせ叶わない』という気持ちの方がもしいるのであればそんなことはないし、やりたいように挑戦して欲しいし、叶わなくても全力でやったら必ず次が見えてくるのでそういう気持ちで頑張って欲しいなと思います」と悩むことなく明確な答えが返ってきた。
ミステリアスな雰囲気をまとうルックスとはギャップがあり、撮影中もスタッフと気さくに会話を交わす等身大の素顔が見えたが、決しておごるわけでもなく、かといって恐縮することもなく、言葉の端々からはブレない強さを感じる。
芯の強さはどこで培われたか思わず聞くと、「強いですかね?」と笑いながら、「高校時代は寮生活でずっとバスケットをやっていたので、毎日良くも悪くも刺激を受けられる場所だったので、それは大きいかもしれないです」と明かしてくれた。(modelpress編集部)
「レッドブリッジ」ストーリー
少年院生活を終え地元茨城に帰ってきた今西大輝が、少年院で同部屋だった小日向健の危機を聞き、同じく少年院で出会った仲間の坂口海斗、巻龍一と共に健を救うために行く先々でトラブルを引き起こしながら、奪った車で東京へと向かう。金がない、学もない、女もいない。何も持たない若者たちの旅路の行方は!?「レッドブリッジビギニング」ストーリー
「レッドブリッジ」前日譚。孤児院育ちの今西大輝は違法ドラッグ所持で現行犯逮捕され、少年院に収容される。同室になった巻龍一、小日向健、そして問題を起こし懲罰房から戻ってきた坂口海斗と時に衝突しながらも次第に深い絆が生まれていく。ワルだが正義感の強い大輝達は、院内でのいじめを止めたことがきっかけで、少年院のボス格である堀口亮太、そして半グレで人を殺したという噂のある鮫島アツシと対立を深めていく。豊田裕大(とよだ・ゆうだい)プロフィール
1999年生まれ。神奈川県出身。2019年よりMEN’S NON-NO専属モデルを務める。2021年にテレビ東京系列「じゃない方の彼女」で俳優デビューを果たす。 6月17日に映画「映画 妖怪シェアハウスー白馬の王子様じゃないん怪ー」の公開を控える。
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