山田裕貴(C)NHK

「なつぞら」山田裕貴、雪次郎とシンクロする“生き様” 4作掛け持ちで得た新たな武器とは<モデルプレスインタビュー中編>

2019.06.26 08:00

NHK連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合/月曜~土曜あさ8時)で小畑雪次郎役を演じる俳優の山田裕貴(やまだ・ゆうき/28)のモデルプレスインタビュー。【中編】

  

インタビュー中編では、「雪次郎であって、僕でもある」と語るほどシンクロする雪次郎に重ねた思い、朝ドラ含め最多4作を掛け持ちするなど多忙を極める今の胸中を聞いた。

演劇の道へ進む雪次郎にシンクロ

山田裕貴(C)NHK
― 菓子職人の修行を辞めて、夢だった演劇の道へ進むことを決めた雪次郎。同じ俳優として、共感する部分も多かったのでは?

山田:まず、僕もこのお仕事が一番好きだということ。本当にこれしかやれることがないぐらい。僕は同じルーティンを繰り返していく作業がどうしても苦手で、多分そういう仕事には就けないだろうなと思っていました。自分はすごく無個性で、つまらない人間だなあと思っていたので、違う人になりたい欲求がすごくあった。俳優は天職だと思っています。だからこそ、「俳優になりたい」という雪次郎の台詞には思いが乗るというか、雪次郎であって、僕でもある。すごく重なる部分が多かったです。僕の父はプロ野球選手なんですが、僕も自分から「野球をやりたい」と言ってやっていて、やれと言われたわけではなかった。雪次郎が修行を辞めて俳優になるという選択は、僕が父に野球を辞めたいと言った時に似ているなと。僕はそれが中学校卒業ぐらいの時だったので、雪次郎の方が大人ですけど。その辺の感覚は人より分かると思うし、すごくつらかったですね。

― 父・雪之助役の安田顕さんをはじめ小畑家の皆さんの印象はいかがですか。

山田:厳しさの中にある愛情みたいなものをすごく感じます。不思議なんですけど、ヤスケンさんといる時ちょっと緊張するんですよ。本当に父といるような感覚がして。

小畑家のシーンは本当に面白い。とにかく好きです。お三方(安田顕、高畑淳子、仙道敦子)とも愛の深い方ですごく優しく見守ってくれて、リハでも「好きなようにやりな」と言ってくれる。雪次郎にかき乱されて家族の気持ちが動いていくシーンが多いので、本当に相手のためにあるお芝居なんですよね。それがキャッチボールできたら、良いシーンができるんじゃないかなと思いながらやっていました。だから、結構本番までに変わることも多くて、テストまでは探りながら3人に相談させていただくことも多いんですが、本番で一番バシッと決まる感覚です。本当にいろいろ奇跡的な巡り合わせが重なっていて、パラレルワールドだなと思います。

― 相当シンクロしている感じなんですね。

山田:楽しいです。もう楽しいしかないですね。自分が生きてる人生より楽しい(笑)。

山田裕貴(C)NHK
― 自分のやりたいことと期待されている道。雪次郎が抱えている葛藤はどのように捉えて演じられていますか?山田さんは、もし雪次郎と同じ立場になったらやはり自分の思いを貫きますか?

山田:雪次郎の場合、一人息子で逃げ場がないんですよね。でも、高校で演劇をやれた楽しかった時間を忘れられなかったんだろうなと思います。今までも、本当は演劇がやりたいんじゃないかなと思わせる台詞が何週かにわたってあったりして、それが最後に爆発する。

好きなものをやれない人たちの方が多いと思うんですよね、きっと。でも、「本当はあれになりたかったな」と思ってそこから行動する人って、それよりもっと少ないと思うんですよ。普通は「仕方ないよ。生きていかなきゃいけないから」と思うと思うんですよね。

だから、それを振り切る強さは雪次郎からすごく感じました。僕的には「よくぞ言ったな」って。やりたいことをやる。1回きりの人生だから、やりたいことをやれないというのは一番もったいない気がしていて。僕も一番やりたいことやらせてもらっている以上、それは死ぬ気でやらなきゃいけないと思う。もし僕が雪次郎の立場でも、やっぱり言うと思います。やりたいって。

朝ドラの反響を実感、掛け持ち出演で得たもの

山田裕貴(C)NHK
― 3、4月は他の連続ドラマと並行しての撮影だったと伺いました。掛け持ちでの撮影でいろいろと大変なこともあったと思いますが、どのように乗り越えられましたか。

山田:「あゝ、荒野」という映画でボクサーの役をやらせてもらった時、ベーシストの役もやっていたのでベースの練習もしていて、さらに主演舞台がかぶったんですよ。しかも舞台は「宮本武蔵」。それはすごいなぁと思いました(笑)。でもその時はベースを毎日触る、ボクシングをやるという状況がそれぞれの役に入り込む解決策でもあったんですよ。

今回、実は3月から4月は4作ぐらいやっていて、中には時代劇もあったりして結構頭がごっちゃごちゃでした。だから、本番に命を懸けてました。感じたものをそのままやる、というのが一番スリリングで楽しかったです。「本番、用意!」の声がかかるまで、時代設定とか見落としがないかグワーッといろんなことを考えて、本番になったらスッと切り替える。考えていたことは乗っけておいて、あとは感じたまま動く、みたいな瞬間がたくさんあって、すごく鍛えられたし面白かったです。その面白みがなかったら、多分本当に嫌になっちゃってたと思います。だから、プライベートで何してたかとか、あんまり覚えてないです。

― 凄まじいですね。

山田:そういう時があったので、最近はゆったりと時間が流れてます。2、3、4月は本当につらかったですね。なっちゃん(広瀬)に「大丈夫?」って言われたんですよ(笑)。朝ドラのヒロインに心配されてたらだめだなと思いました。

― 広瀬さんにはどんな時に声をかけられたんですか?

山田:多分、「わはは」って笑いあった後に、僕がぐったりしてたんでしょうね(笑)。ご飯も皆で行きましょうってよく誘ってくれるんですけど、僕は行けない日が多くて。そういうこともあって「昨日も撮影だったの?大丈夫?」と声をかけてくれて、「いや、ありがとう」みたいな感じです(笑)。

山田裕貴(C)NHK
― 今まさに、雪次郎にとって見せ場の展開。反響も大きい?

山田:やっぱり「朝ドラ観てますよ」とは言われるようになりましたね。赤ちゃんを抱えているお母さんとか、おじいさん、おばあさんにも言われるようになりましたけど、朝ドラを観てくれているというだけで、僕の名前を覚えてもらってるわけじゃないんだろうなって(笑)。

もちろん一番良いことなんですよ、役者としては。役が一番知れ渡ってるというのは良いことなんですけど、僕はそこから抜け出せないんだろうか…とも思います。“カメレオン俳優”じゃなくてカメレオンのまんまだな、みたいな(笑)。でもそれは自分が一番影響を受けた俳優さんのゲイリー・オールドマンもそう。エンドロールを見るまで「え!この人ゲイリー・オールドマンだったの!?」って気づかなかったことがあって、僕もそうなれたらいいなと思います。

※最後になるインタビュー後編も後日配信予定。(modelpress編集部)

山田裕貴(やまだ・ゆうき)プロフィール

1990年9月18日生まれ。愛知県出身。2011年俳優デビュー。近年の主な出演作には映画『あゝ、荒野』『万引き家族』、ドラマでは『ホリデイラブ』、『健康で文化的な最低限度の生活』、主演映画『あの頃、君を追いかけた』、『HiGH&LOW』シリーズ、『特捜9』シリーズなど。今後の待機作として映画「HiGH&LOW THE WORST」(2019年10月4日公開)、「嘘八百 続編」(2020年新春公開予定)、主演舞台「終わりのない」(2019年10月29日~世田谷パブリックシアターほか)がある。
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