藤野良太氏(C)モデルプレス

元フジ「月9」藤野良太プロデューサー、AbemaTVで恋愛ドラマを制作する理由&オリジナルへのこだわり「こんな面白い表現形態ない」<モデルプレスインタビュー>

2020.04.01 14:00

ダンスボーカルユニット・M!LKのメンバーで俳優の佐野勇斗と、モデルで女優の飯豊まりえがW主演を務めるAbemaTVのオリジナルドラマ『僕だけが17歳の世界で』(毎週木曜よる11時~ 全8話)。プロデューサーの藤野良太氏は、月9ドラマ『恋仲』『好きな人がいること』を手掛け、昨年6月にフジテレビを退社した敏腕クリエイター。今回、新たなフィールドで王道ラブストーリーを制作するに至った経緯などを聞いた。

藤野氏は、慶應義塾大学卒業後、2006年にフジテレビジョンに入社。入社後はプロデューサーとして活動し、ドラマ『未来日記-ANOTHER:WORLD-』『ビブリア古書堂の事件手帖』『海の上の診療所』『水球ヤンキース』『恋仲』『好きな人がいること』『刑事ゆがみ』『グッド・ドクター』のプロデュースや、映画『リバーズ・エッジ』の企画協力に尽力。2019年6月末にフジテレビを退社後、storyboardを設立し、フリーのプロデューサーとして活動している。

佐野勇斗&飯豊まりえW主演ドラマ『僕だけが17歳の世界で』(C)AbemaTV
佐野勇斗&飯豊まりえW主演ドラマ『僕だけが17歳の世界で』(C)AbemaTV
退社後初めて手掛けるドラマ『僕だけが17歳の世界で』は、幼馴染の航太(佐野)と芽衣(飯豊)が、お互いに“好き”という気持ちに気づくも、想いを伝えることなく突然航太が亡くなってしまい、季節外れの桜が咲く期間だけ戻ってくるファンタジー・ラブロマンスだ。

藤野良太氏、フジ退社後にAbemaTV「自分にも何かできることがあれば」

藤野良太氏(C)モデルプレス
藤野良太氏(C)モデルプレス
― 昨年フジテレビを退職されてフリーになり、AbemaTVで挑戦しようと思った経緯をお聞かせください。

藤野:僕がフジテレビを退社するというニュースが出た時に、最初に声をかけてくれたのがAbemaTVでした。谷口制作局長と5年くらいのお付き合いで、ご飯に行くたびに「いつかAbemaTVでオリジナルドラマを一緒に作りたい」という話をしてくださっていて、「すぐに会いましょう!」と連絡をくださり、会うことになったのがきっかけです。まずは一番最初にお声がけしてくれたAbemaTVで挑戦してみようと思いました。

あとは、「亀田興毅に勝ったら1000万円」や「72時間ホンネテレビ」などすごくインパクトがある企画を生みだしているプラットフォームだったことも大きな要因です。藤田晋社長ともお会いして、AbemaTVのビジョンやドラマにかける思いなどを聞いて、自分にも何かできることがあれば貢献させていただきたいと思いました。

― 最初に実施するなら連続ドラマで、というのは決まっていたんですか?

藤野:そうですね。まずは自分の得意分野で挑戦してみようと思いました。今AbemaTVが求めているのは連ドラのコンテンツであり、藤田社長もAbemaTVが次のステージに行くためには連ドラで当てることだとおっしゃっていたので、そこが自分に求められていることだと思い、連ドラに決まりました。恋愛リアリティショーもやってみたいですけど、いきなりやっても『オオカミちゃんには騙されない』を越えられないだろうし(笑)、まずは連ドラで貢献しようかなと。

藤野良太氏が“恋愛ドラマを制作する理由”

― 月9での『恋仲』や『好きな人がいること』、そして今回の『僕だけが17歳の世界で』など、恋愛ドラマを制作する理由やこだわりがあれば教えてください。

藤野:よく勘違いされるんですけど、恋愛ドラマに対するこだわりはあまりないんです。単純に恋愛ドラマを見ることは好きでしたが、自分がラブストーリーをプロデュースするようになるとはまったく思っていませんでしたし、僕は“自分が作りたいもの”というよりも、“世の中が求めているもの”を作りたいと思っているんですよね。

『恋仲』の頃は、ラブストーリーが主流だった月9をはじめ、民放の地上波から視聴率が取れないという理由で恋愛ドラマが編成されていなかったんんですが、その時にたまたま行った映画館でラブストーリーの作品に中高生の行列ができていたんです。当時はラブストーリーが見たいという欲求を映画が満たしていたので、それを月9でもう一度復活させれば、若い子たちがみんなドラマを見てくれるんじゃないかと思って、そこからラブストーリーの制作を始めました。

― まさに“世の中が求めているもの”にフォーカスを当てたんですね。

藤野:ラブストーリーは時代に関係なく一番見たいジャンルじゃないかなと思うんです。世の中の逆張りではないですけど、コンテンツ市場にラブストーリーがないからこそプロデュースしよう、と思って作ったのが『恋仲』や『好きな人がいること』でした。それにプラスして、スターが生まれるのはラブストーリーからなんじゃないかとも考えていて、若いキャストを起用することで“ネクストブレイク”を作ろうと思っていました。

当時は山崎賢人(※「崎」は正式には「たつさき」)さん、福士蒼汰さんなどと一緒に作品をつくりました。あれから5年が経ち、佐野勇斗さんや飯豊まりえさんなど新しくラブストーリーを背負うことができる若手俳優たちが出てきていたので、よい周期かなと思い、『僕だけが17歳の世界で』の制作に至りました。

― 漫画や小説など、原作の実写化が多い今、オリジナル作品でラブストーリーを制作する思いをお聞かせください。

藤野:『刑事ゆがみ』や『グッド・ドクター』のように、面白い原作があって、それをどう映像作品に仕上げていくかということを考える作業も楽しいですが、オリジナルはストーリーを自由にどこにでも持っていけるから、一番やりがいはありますよね。力もつきますし。あとは、これからのクリエイターがもっと連続ドラマという長尺コンテンツの制作に取り組んでもらいたいんです。現役の方たちはもちろん、若い人たちが連続ドラマをつくることに興味を持って、この世界に入ってきてもらえたらと思っています。

それこそ今は配信によって全世界の人々にドラマを見てもらえる可能性があるし、こんな面白い表現形態ないよ、というのを知ってもらい、挑戦したいと思ってもらうには、やっぱりオリジナルドラマをつくり、ヒットさせるしかないかなと思ってます。

― オリジナル作品を制作する中で、自由な反面、アイディアが浮かばないなど壁にぶつかることはないですか?

藤野:常にあります(笑)。でもラブストーリーは、簡単に言ってしまえば、男女が出会って、2人の間にある溝を乗り越えて結ばれることがゴール。まずは“この2人が上手くいってほしい”と思える魅力的な2ショットが出来上がればラブストーリーは成立すると思うんです。そう言った意味では、キャスティングはすごく大切で、魅力的な2人がそろえば、あとは何をやってもOK、そのキャラクターを応援できるようになればOKなんです。なので、ラブストーリーは2人を選ぶセンスがすべてかなとも思います。

藤野良太氏(C)モデルプレス
藤野良太氏(C)モデルプレス
― 佐野さんと飯豊さんは初共演ですが、桜の景色も相まってすごく素敵な2ショットだなと感じました。

藤野:僕もそう思います(笑)。ラブストーリーは色んなコンセプトで2ショットの組み合わせができると思いますが、『僕だけが17歳の世界で』は優しい世界観をつくりたかったんです。その点、佐野くんも飯豊さんもパーソナリティを知っていたので、2人が組み合わされば、とても優しい世界観になるんじゃないかなと思ってましたし、応援できる2人になると思ってました。

― 佐野さんや飯豊さんなど、若手の俳優陣に期待していることはありますか?

藤野:大スターになってほしいと思ってます(笑)。それも国境線を越えてアジアのスターになってほしいですね。佐野さんや飯豊さんをはじめ、若手の俳優陣はこれからの日本のエンタメを盛り上げていくために頑張ってほしい。そのためにも、日本のドラマは大切な役割を背負っていると思います。ドラマは彼らの成長の場でもあり、世界から発見される場でもあると思うので。

プロデューサーのやりがい

― プロデューサーをやっていて良かったと、やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

藤野:誰かの人生をポジティブに変えることができた瞬間ですかね。参加してくれる俳優やアーティストやスタッフたちには「あの作品に参加したことが人生のターニングポイントになった」と思ってもらえる作品にしなきゃと毎回思ってますし、見てくださった方の記憶に残る作品にしなければいけないと思ってます。理想を言えばその人の人生をよりよい方向にできることができたら良いですね。

『恋仲』の時にすごく嬉しかったエピソードがあって、1話の放送が終わってから手紙をくれた子がいて。中学3年生の女の子からだったんですけれど、ドラマを見て、シチュエーションに憧れて幼馴染みの男の子が花火大会に誘ってくれたみたいで、その感謝の手紙だったんですけれど。ドラマでは花火大会で想いあっている幼馴染みの2人が、想いを言葉にすることなく、結果7年間すれ違っちゃうというストーリーを描きました。「あの時手を伸ばしていれば届いたのに、どうして僕は手を伸ばさなかったんだろう」みたいな男の子の葛藤するモノローグ入れていたのですが、それが彼女の心に刺さったみたいでして、「どんな結果になるかわからないけれど、後悔しないように自分の気持ちを伝えます」と手紙に書いてありまして、それがすごく嬉しかったです。

あと、去年見たオーストラリアの学生の子のYouTubeで「建築学科に行っている」と話していて、その理由が「日本の『恋仲』というドラマを見たから」と言っていたんです(笑)。福士蒼汰さんが演じるが建築家の役だったんですけど、僕たちが作ったドラマで、海外の人の将来にまで影響を与えることができたと思ったら本当に嬉しかったですね。

藤野良太プロデューサーが語る今後の挑戦

― 今後挑戦しようと思っていることがあれば、ぜひ教えてください。

藤野:映画に挑戦してみたいという思いが最近は強いですね。ドラマだと、日本だけではなく、アジアで見てもらえるものに挑戦してみたいですね。昨年度から韓国、台湾、タイ、シンガポールなどの国々に行き、エンターテイメント業界の方と交流する機会が増えているのですが、向こうにいってわかるのは映像と音楽においては圧倒的に韓国コンテンツが支持されていることです。でも、日本のコンテンツの良さはたくさんあるし、その良さを広める一助になりたいなと思っています。だけどそれは僕ひとりだけではできなくて、青臭いですが、「日本を面白くしよう!」と言い合える仲間たちとそれを果たして行きたいと思っています。

― 恋愛ドラマ以外も挑戦していきたいですか?恋愛リアリティショーのお話も先程少し出ましたが…

藤野:もちろん挑戦してみたいです。むしろ今は重厚感ある人間ドラマを描いた作品をやりたいですよ(笑)。かつてフジテレビで放送していた『白い巨塔』のような人間ドラマに挑戦したいです。恋愛リアリティショーは好きですが、視聴者のままでいいかもしれませんね。さっきも言いましたが『オオカミちゃんには騙されない』よりも面白いものをつくれる自信がないので(笑)。

夢を叶える秘訣

― 最後に、藤野さんの“夢を叶える秘訣”のアドバイスをお聞かせください。

藤野:僕もまだまだ全然叶ってないですが、求められる“期待”を超えていくこと。それしかないかなと思います。眼の前にある仕事に全力で取り組んで、求められること以上の価値をだすことができたら、また一緒に仕事をしようと思ってもらえる、そこに繋がるんです。そして、その時はより大きなステージで挑戦することができる。知人が「仕事の報酬はより大きな仕事だよ」と言っていて、その通りだと思っています。

― ありがとうございました。

藤野良太氏(C)モデルプレス
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(modelpress編集部)

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