「血液がドロドロに……」 飲めば飲むほど脳卒中リスクが上がる? 身近な飲み物に潜む意外な危険性
【医師が解説】仕事の合間の甘い缶コーヒーや炭酸飲料が、習慣になっていませんか? 大規模な医学研究から、砂糖入り飲料と脳卒中や心血管疾患のリスクとの関連が見えてきました。運動していても安心とはいえない理由と、今日からできる対策を解説します。(※画像:amanaimages)
「苦いコーヒーは少し苦手」「仕事中は甘めのカフェラテ」「スマホを見ながら炭酸飲料」。そんな習慣がある方は少なくないかもしれません。
甘い飲み物は手軽に糖分を補給でき、気分転換にもなります。その一方で、「砂糖入り飲料」を習慣的に飲んでいると、いくつかの健康リスクがあると指摘されています。
「砂糖が体に悪い」と言われると、肥満や糖尿病を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、注意すべきなのはそれだけではありません。近年の研究では、砂糖入り飲料の摂取が、脳卒中や心疾患など深刻な病気のリスクと関連する可能性が示されています。
では、実際にどのくらい飲むとリスクが高まるのでしょうか。また、日常生活ではどのような対策ができるのでしょうか。今回は、大規模な医学研究をもとに、実際の関連性を見ていきます。
砂糖入り飲料を多く飲む人は脳卒中リスクが12%高い
まず取り上げたいのは、栄養学や食事と健康に関する研究を扱う国際的な医学誌『Nutrients』に、2022年に掲載された研究です。
砂糖入り飲料とさまざまな病気との関係を検討した32本の研究を統合し、約350万人のデータを解析した大規模なものです。脳卒中に関しては、約35万人を対象とした7つのコホート研究が含まれていました。
分析の結果、砂糖入り飲料を多く摂取する人は、摂取量の少ない人に比べて、脳卒中リスクが12%高いことが報告されています。さらに見逃せないのが、飲む量が増えるほどリスクも高くなる可能性が示された点です。
砂糖入り飲料の摂取量が1日250mL増えるごとに、脳卒中リスクが約9%高くなるという関連が見られました。
250mLは、500mLのペットボトルの半分程度です。日常的に飲んでいる人にとっては、決して珍しい量ではないかもしれません。
ただし、これは観察研究をまとめた分析結果であり、摂取量の増加がそのまま脳卒中を引き起こすと断定することはできません。それでも、飲む量が増えるほどリスクが上昇する傾向が見られたことは、注意すべき結果といえます。
特に明らかな「脳梗塞」との関連……「リスクが22%高い」との報告も
脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血などがあります。砂糖入り飲料の摂取は、これらのうちどちらと強く関係しているのでしょうか。
先ほどの研究では、砂糖入り飲料を多く摂取する人で、脳梗塞の発症リスクが10%高いことが示されました。一方、脳出血では統計学的に有意な関連は確認されませんでした。
この結果から、砂糖入り飲料と脳卒中の関連は、特に脳梗塞で現れやすい可能性があることが分かります。
一般的に「血液がドロドロになる」と言われる状態は、医学的に正しい表現ではありませんが、甘い飲み物のとり過ぎで高血糖の状態になると、結果的に血液が濃い状態になってしまうのは事実です。これも脳梗塞を引き起こすリスク要因です。
同様の結果は、スウェーデンで行われた大規模な前向き研究でも報告されています。この研究では、男女6万8459人を平均10.3年間追跡し、砂糖入り飲料の摂取量と脳卒中リスクとの関係を検討しました。
その結果、砂糖入り飲料を1日約400mL以上摂取する群では、摂取量が少ない群に比べて、脳卒中リスクが19%高いことが示されました。特に脳梗塞では、リスクが22%高いと報告されています。
健康的な運動習慣があっても安心は禁物……消せない砂糖入り飲料の影響
では、ふだん運動している人なら、砂糖入り飲料の影響は気にしなくてよいのでしょうか。
この点を検討した研究も報告されています。臨床栄養学の国際的な学術誌『American Journal of Clinical Nutrition』に2024年に掲載された研究では、米国の男女およそ10万5000人を長期間追跡し、砂糖入り飲料の摂取と身体活動との関係を調査しました。
その結果、砂糖入り飲料を1日コップ2杯以上飲む人では、ほとんど飲まない人に比べて、脳卒中や冠動脈疾患を含む心血管疾患の発症リスクが21%高いことが示されました。
また、推奨される運動量を満たしている人であっても、砂糖入り飲料を週にコップ2杯程度飲むグループでは、ほとんど飲まないグループより心血管疾患リスクが15%高いという結果でした。
運動はもちろん大切ですが、それだけで砂糖入り飲料の影響がなくなるわけではありません。
なお、子どもへの砂糖入り飲料について、国連の専門機関として世界の人々の健康を守るために活動するWHO(世界保健機関:World Health Organization)は、2歳未満は飲まないこと、2歳以上でもできるだけ控えることを推奨しています。
毎日の飲み物を見直すことが、健康への第一歩!
こうしたリスクを減らすには、どうすればよいのでしょうか。まず取り組みやすいのは、ふだん何を飲んでいるかを見直すことです。
例えば、砂糖入りの炭酸飲料を水や無糖の炭酸水にかえる、砂糖入りの缶コーヒーを無糖のコーヒーにかえる、砂糖入りの紅茶や果汁入り飲料を無糖のお茶にかえるといった方法があります。
また、スポーツドリンクには、砂糖や糖質がそれなりに多く含まれるものがあります。運動中や大量に汗をかいたとき向けの飲み物のため、水分だけでなく糖分も入っているのが一般的です。
農林水産省は、製品によっては500mL1本で30g以上の糖分を含むものがあると解説しています。スポーツドリンクも糖分量を確認したうえで、必要な場面で取り入れたいものです。
特に、健康診断で血糖値やHbA1c、中性脂肪、血圧などを指摘されたことがある方は、飲み物の選び方にも目を向けたいところです。
筆者は高校時代、サッカー部の上級生から、常日頃「下っ端はスポーツドリンクなんて飲むな、水を飲め」と理不尽な指導をされていました。その反動もあって、部活帰りに同級生と隠れて砂糖入りのスポーツドリンクを飲む時間が、最高の楽しみになっていました。
当時は理不尽な指導にしか思えませんでしたが、医学的な根拠を踏まえれば、ふだんの水分補給では砂糖入り飲料を控えるべきという意味で、あながち間違った指導ではなかったのかもしれません。
砂糖入り飲料は身近で手軽な存在ですが、大規模な研究では、飲む量が多いほど脳卒中、特に脳梗塞や心血管疾患のリスクが高まる傾向が示されています。いずれも観察研究に基づく結果であり、甘い飲み物を1本飲んだからといって、すぐに病気になるわけではありません。
ただ、運動習慣があってもリスクとの関連が見られたことを考えると、毎日の積み重ねを意識することが大切です。いつもの1本を水や無糖のお茶にかえることから、無理なく始めてみてはいかがでしょうか。
小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
執筆者:秋谷 進(医師)
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