休憩中はスマホを伏せていた俺→彼女の「今日、食堂にいたよね」で打ち明けた、隅の席の覚悟
去年の不合格
同じ会社の別部署で働く彼女とは、付き合って1年半になります。社内で上の役職を目指すには、ある国家資格が必要でした。俺は去年一度受けて、落ちています。そのことは、彼女には話していませんでした。
いつか結婚を申し込むなら、胸を張れる自分でいたい。今の給料のままでは、彼女の将来まで背負えるとは思えませんでした。合格発表は、ちょうど付き合って2年になる日の前の週です。受かったら、2年の記念日に申し込むと決めました。また落ちたらと思うと、受かるまでは誰にも言えませんでした。
帰宅後は疲れて机に向かえない日が多く、まとまった時間が取れるのは休憩中だけでした。食事は休憩前にデスクでおにぎりを済ませ、食堂ではトレーを持たずに奥の窓際へ座りました。
既読をつけない40分
休憩が始まると、俺は真っ先に廊下へ出てスマホを開いていました。彼女の「今日のランチ何にした?」に既読がつくのが、決まって12時03分だったのはそのためです。
だからこそ、通知を見たら手が伸びると分かっていました。休憩中はスマホを伏せ、開かない。そう決めた初日、休憩が終わる直前に画面を見ると、彼女から「忙しい?」と追いかけるようにメッセージが届いていました。
「ごめん、ちょっとバタバタしてた」
とっさに俺はそう返しました。嘘をついている自覚はありました。それでも、本当のことを書けば試験の話をするしかなくなる。翌日も、その翌日も、同じ文面を送りました。
小さくつぶやいていたのは、覚えきれない条文です。同じ返事ばかり届く彼女がどう思っているか、想像はできても、スマホを表に返すわけにはいきませんでした。
隅の席で見られていた
その日も同じように過ごし、休憩の終わりに「ごめん、ちょっとバタバタしてた」と送りました。
仕事の片付けをしているとき、彼女から届いたのが「今日、食堂にいたよね」でした。
すぐに開きました。参考書を広げているところを、きっと全部見られていた。もう、ごまかす言葉は浮かびませんでした。
「見られてたか。ちゃんと話すから、帰り少し時間ある?」
送ると、彼女からすぐに「うん」と返ってきました。
そして...
駅までの道で、去年落ちたこと、もう一度受けること、受かったら言うつもりだったことを話しました。結婚という言葉だけは、まだ口にしませんでした。
彼女は「バタバタって、毎日同じ文面だったよ」と笑い、「心配したんだからね」と付け加えました。
試験はまだ先です。既読がつかなかったあの40分は、彼女との休憩中のやりとりを、この先何十年も続けるために使っていた時間でした。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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