「映画の趣味が合わない女は無理」と言った俺→売店でパンフレットを買ったわけ
ポスターに写っていた町
付き合って半年、月に一度の映画は交互に選んでいます。俺の番はいつもアクション映画です。嫌いではないものの、自分の本当の好みを知られたくない気持ちもありました。
その日、彼女が選んだ作品のポスターには、実家のあった商店街が写っていました。両親は3年前まで、そこで小さなパン屋を営んでいたのです。
「映画の趣味が合わない女は無理」
笑ってごまかしたつもりでしたが、彼女の顔から笑みが消えたのが分かりました。
食卓の場面で
上映が始まると、見慣れた通りが次々と映りました。彼女が隣でこちらを気にしているのは感じていたものの、画面から目が離せません。
家族そろって食卓を囲む場面では、窓の外に実家の店の前の通りが映り込んでいました。店を閉めた日、両親と3人で最後に囲んだ食卓を思い出したところで、こらえきれなくなったのです。
エンドロールが終わって場内が明るくなっても、しばらく席を立つ気になれませんでした。
パンフレットで確かめたこと
ロビーで「ちょっと待ってて」と言い、売店でパンフレットを買いました。ロケ地の一覧に、あの商店街の名前があるか確かめたかったのです。名前は最後のページにありました。
「どうだった?」
彼女にそう聞かれて、口にできたのはこれだけです。
「最後まで見てよかった」
実は2年前から、休みの日にパン作りの教室へ通っています。いつか、あの商店街で店を開き直したいからです。地味な暮らしになると思うと、彼女には言い出せずにいました。いつものお茶を断って「帰ろうか」と言ったのも、どこから話せばいいのか考える時間がほしかったからです。
そして...
帰りの電車では、パンフレットの表紙ばかり見ていました。彼女はああいう映画を選ぶ人なのだと、あらためて思ったのです。
改札を出たところで、足を止めました。
「話してないことがある」
商店街のこと、両親の店のこと、パン作りの教室のことを順番に話しました。彼女は最後まで聞いてから、「なんで今まで言わなかったの」と少し怒った顔をしました。そのあとで、今度その商店街に連れて行ってほしいと言ってくれました。
趣味が合わないと思っていたのは、俺が自分の好きなものを見せてこなかっただけでした。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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