「残念。ここの牛乳パン、好きなんだよね」定休日の店先の一言→俺がサービスエリアに3回寄ったわけ
見落としていた定休日
付き合って3カ月の彼女と、車で2時間ほどの湖のある町へ出かけた日のことです。店も道順も、ほとんど俺が決めていました。定休日の札の前で、彼女がつぶやきました。
「残念。ここの牛乳パン、好きなんだよね」
スマホで店の情報を開き直すと、定休日の欄にはその日の曜日が書かれていました。画面から顔を上げて、彼女に頭を下げました。
「ごめん、定休日まで見てなかった」
「大丈夫、また来ればいいし」
笑ってくれた彼女に、うなずいて車のキーを握り直しました。けれど、その「また」が本当に来るのか、自信はありませんでした。
トイレと言って向かった売店
帰りの高速に乗ってすぐ、最初のサービスエリアに入りました。彼女には「ちょっとトイレ寄っていい?」とだけ伝えたものの、本当の行き先は売店でした。歩きながら調べると、地元の牛乳パンはサービスエリアにも並ぶと分かり、棚を端から見て回りました。それでも、それらしい物は見つかりませんでした。
2回目のサービスエリアの棚に残っていたのは、牛乳パンと書かれた値札だけ。2回続けて手ぶらで戻る気になれず、自分用の缶コーヒーを1本買って車へ戻りました。彼女の分を買うことは、思いつきもしませんでした。
「疲れてる?」
助手席の彼女の声が、少し硬く聞こえました。
「ううん、大丈夫」
探していると言えば、見つからなかったときにまた彼女をがっかりさせてしまう。そう考えると、前を向いて短く答えるしかありませんでした。
棚に並んだ3種類の牛乳パン
3回目の看板が見えたときには、もう言い訳を考える余裕もなく、黙ってウインカーを出しました。
売店のパンの棚に、包装の違う牛乳パンが3種類並んでいました。どれも、あのパン屋のものではありません。彼女が好きだという味に近いのはどれなのか、俺には見当がつきませんでした。
しばらく棚の前で迷ったあと、3つともレジへ。
車に戻り、袋の口を広げて彼女に差し出しました。
「どれか分かんなかったから、全部買った」
膝の上にパンを並べた彼女は、しばらく俺とパンを見比べてから、声を上げて笑い出しました。
「3つも食べられないよ」
そして...
ひとしきり笑ったあと、彼女が言いました。
「なんかずっと落ち着かないから、怒ってるのかと思った」
「え、そう見えてた?」
探すことばかり考えていて、隣からどう見えるかまでは頭が回っていませんでした。照れくさくて、ハンドルを指でたたいてごまかしました。
パンは1つを半分に分けて食べたものの、あの店の味と比べてどうだったのかは聞きそびれたままです。
1回目と2回目の売店のことは、結局まだ話せていません。探し回ったと言えば、恩を着せるようで格好が悪い気がしたのです。
次のデートの候補を送るとき、今は店の名前の横に定休日も書き添えています。あの湖の町のパン屋は、候補の一番上に残したままです。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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