「ねえ、最近私の話、つまんない?」と聞いた私に、上の空の親友が改札で言いかけたこと
相づちがずれ始めた親友
親友とは高校からの付き合いで、もう10年以上になります。月に2回ほど、駅前のいつものカフェで会うのが決まりでした。
ところがここ2カ月ほど、親友はどこか上の空で、相づちが少しずつずれるようになりました。「ごめん、もう1回言って」と聞き返されることが増え、テーブルに伏せたスマホへ何度も目をやっていました。
その日の話題は、職場のこと。半年かけて準備した企画が、ようやく通ったという私の報告です。
「それでね、結局その企画、通ったんだ」
「そうなんだ、残念だったね」
少し遅れて、親友はそう返しました。私は思わず言い直します。
「通ったんだってば」
「あ、ごめん。よかったね」
親友は笑ったものの、目はすぐにまた窓の外へ戻りました。
光ったスマホと改札の前
グラスの氷をつつきながら、思い切って聞いてみました。
「ねえ、最近私の話、つまんない?」
「そんなことないよ」
親友の返事は早かったのに、すぐあとでスマホが光りました。親友は何も打たずに画面を裏返しました。
何の通知だったのか、私の席からは見えないまま。さっきの質問に、もう1度重ねる気にはなれませんでした。
店を出て、いつものように改札まで並んで歩きました。普段なら次に会う日をその場で決めるのに、その日はどちらも言い出さないまま。
改札の手前で、親友が足を止めました。
「あのさ、」
こちらを向いた親友は、続きを探すようにバッグの持ち手を握り直しました。
言いかけた続きを待ちながら
「やっぱり今度でいい」
そう言うと、親友はICカードを改札にかざし、振り返らずにホームへ向かっていきました。私はその背中が見えなくなるまで、改札の前にいたと思います。
帰りの電車で、スマホの写真をさかのぼってみました。去年の同じ季節に撮った、2人とも口を開けて笑っている1枚。
いつから、私ばかりが話していたのだろう。企画の話も職場の愚痴も、親友はずっと付き合わされていたのかもしれない。
数日後、親友からメッセージが届きました。
「次会うとき、ちょっと話したいことがある」
「わかった」と返したあと、そのまま画面を閉じました。
そして...
次に会う場所は、いつものカフェに決まりました。
当日、親友は席に着くと、この2カ月のことを順番に話してくれました。最後まで聞いた私は、ストローを長い間回していました。
いくつか言葉を返してから、思っていたことを口にしました。
「ずっと、私の話がつまんないのかと思ってた」
そう伝えると、親友は謝ってくれました。私が笑って、企画の話を最初から聞いてほしいと頼むと、親友はスマホをバッグにしまって聞いてくれました。
ただ、1つだけ分からないことがあります。あの改札の前で、親友はなぜ「やっぱり今度でいい」と言ったのでしょうか。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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