挨拶の日、「子どもっぽい」と彼女が嫌がった服を頼んだ俺→母に見せたかったもの
人見知りの母が気に入っていた1枚
「ちゃんとした格好の人が来たら、お母さん何も話せないかも」
母は昔から人見知りで、初対面の相手とは天気の話も続きません。思い出したのは、正月に帰省した時のことでした。俺のスマホで旅行の写真を見せると、母は屋台の前でからし色のワンピースを着て笑う彼女の1枚を拡大し、「この子、いい顔で笑うのね」とつぶやきました。帰るまでに、3回もその写真を見せてと頼んできたほどです。
あの写真の姿で来てもらえば、母も知っている人に会う気持ちでいられるかもしれない。そう考えました。
理由を言えないまま頼んだ服
彼女の部屋のソファで、カレンダーに印をつけながら切り出しました。
「親に会う日、あの服着てきて」
「あれ、子どもっぽいでしょ。紺のセットアップにしようと思ってたんだけど」
「あれがいいんだ。頼む」
理由を聞かれても、カレンダーから目を上げずに首を振りました。母が写真を気に入っていると言えば、彼女は母の期待まで背負って玄関に立つことになる。あの写真を勝手に見せたと知れば、嫌がるかもしれない。言わない理由ばかり並べて、彼女があのワンピースを好きではないことには触れずにいました。
写真と見比べていると思っていた視線
当日、玄関のドアを開けた母は、彼女の服を見て小さく声を上げました。
「あら、黄色」
そのあと俺のほうをちらりと見た母は、あの写真の子だと気づいた顔に見えました。
居間では父が話を回し、母はお茶と羊羹を出したあと、湯のみを両手で包んで座っていました。母の視線が何度も彼女の袖のあたりへ向かうのを、写真と見比べているのだろうと思いながら、父との仕事の話を続けていました。
ふと隣に目をやると、彼女は膝の上で重ねた手の下で、ワンピースの布をつまんでは離していました。母の視線が彼女にどう映っているのか、そこで初めて考えました。
「母さん、この服覚えてるんだよ」と言いかけて、やめました。それを言えば、旅行の写真を母に見せていたことまで、この場で説明することになります。父の話を聞きながら切り出すタイミングを探しているうちに、お茶が冷めていきました。
そして...
帰り際、靴を履く彼女の前に、母が一歩出ました。
「その服、また着てきてね」
さっきより少しだけ大きな声でした。人見知りの母にしては、精一杯の言葉だったはずです。彼女は「はい」と頭を下げましたが、その顔が晴れていたのかどうか、俺には読み取れませんでした。
駅で別れたあと、電車の中で写真フォルダを開きました。屋台の前で笑う彼女と、居間で布をつまんでいた彼女の手が、うまく結びつきません。次に実家へ行く前に、この写真を見せて母のことを話すつもりです。頼む前にそうするべきだったことは、分かっています。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
関連記事
「コラム」カテゴリーの最新記事
-
急性心不全で亡くなってしまった夫!だが「知ってるのよあんたが…」義母が嫁を恨んだワケ愛カツ -
分かりにくすぎて見逃してるかも。不器用な男性が密かに見せている好意のサインハウコレ -
妻の【300万円】を勝手に使い込んだ夫「家族の金だろ!」妻「そうだね」直後⇒“家族全員”が集まると…夫「あ…あ…」Grapps -
顔色がおかしい高校生の息子「誰かにつけられてる」後日⇒警察「息子さんが…」呼び出された母親が、目にしたモノに「え…」愛カツ -
大人ならわかる? 小学校の「算数」問題<Vol.2762>エキサイトニュース -
「立ち合い出産って私は無理かな?」マジメな義父の突然の申し出に凍りつく…同居する義実家で起きた違和感の正体とは?【漫画】エキサイトニュース -
【漫画】私は義母に何も悪いことをしていないと断言できる!【私は義母が嫌い Vol.31】エキサイトニュース -
「好きな席でいいよ」と言う彼は、いつも私を壁側に座らせる。居酒屋で通路側に先に座った日のことハウコレ -
「五分遅れる」と送って一時間来ない彼に、私が返した「じゃあ」ハウコレ