花屋で働く私に「爪くらい整えろ」「女だろうが」と言った彼。ローテーブルに2人の手を並べた結果
花屋の手に向けられた注文
私は花屋で働いています。バラのとげや花束を留めるワイヤーで、指先には小さな切り傷が絶えません。水仕事も多く、爪は短く切りそろえておくしかなく、横のほうは茎の汁でうっすら緑色に染まっていました。
それでも、この手でたくさんの花束を作ってきました。整った指先ではなくても、働いてきた跡が残る手です。少し誇らしく思っていたのは、その手でした。彼はその手を見て言いました。
「爪くらい整えろ」返事をする前に、彼はもう一言続けました。「女だろうが」
女だから、という理由
「女だったら、いつも爪をきれいにしてなきゃいけないの?」
聞き返すと、彼はテレビに目を戻したまま肩をすくめました。
私の仕事の事情を、彼は知っているはずです。それなのに、どうしてあんな言い方になるのでしょう。以前にも彼に「女なんだから料理くらい」と言われ、そのときは笑って聞き流しました。積み重なっていたものが、今度は流れていきませんでした。
向かいに座る彼を、改めて見ました。寝ぐせの残った髪は伸びっぱなしで、あごには剃り残しがぽつぽつ。気取らない自由なところが好きで付き合い、私は彼の身なりについて、何か言ったことは一度もありません。その彼に、言われる筋合いはありませんでした。
白いテーブルに並べた2人の手
「手、出して」怪訝そうに差し出された彼の手を取り、私の手の隣に並べて、白いローテーブルの上に置きました。スマホで真上から1枚撮り、画面を広げて彼の前に向けます。
並んだ手は、比べるまでもありませんでした。私の爪は短く、切り傷と緑の染みがあるだけ。彼の爪は長さがばらばらで、中指の先は欠け、親指にはささくれがめくれています。
「どっちが汚い?」私が聞くと、彼は画面と自分の指先を何度か見比べてから、小さく答えました。「……俺です」
そして...
しばらくして、彼が立ち上がりました。「爪切り、どこ?」棚の引き出しから出して渡すと、ぱちん、ぱちんと音が続きます。切り終えた彼は、テーブルの上の私のスマホを指さしました。
「その写真、消してくれない?」と言う彼に、私は「消さない」と返しました。緑に染まった私の指先は、並べてみると思っていたよりずっと頼もしく見えます。次に何か言われたら、いつでもこの1枚を開くつもりです。
ただ、「女だろうが」と言い切った彼が、あの1枚を見て何を考えていたのか。その答えは、まだ聞けていません。
(20代女性・花屋スタッフ)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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