彼の家族のグループに入って30分、誰も何も書かない画面に、彼の妹から届いたうさぎ
書いては消した挨拶の下書き
彼と付き合って2年。結婚の話が少しずつ出始めた頃、グループチャットに彼から「この前話した彼女を招待しました」とメッセージが入りました。
チャット欄に直接打つと、うっかり送信してしまいそうで怖い。そう考えてメモアプリを開き、下書きから始めることにしました。
「このたびはグループにお招きいただき、ありがとうございます」
読み返すと、まるで取引先へのメール。かしこまりすぎて、距離を置いているように見えないか気になります。
次に「はじめまして!よろしくお願いします」と打ってみると、今度は軽すぎる気がしました。「ふつつか者ですが」と書き足しては、まだ結婚の挨拶でもないのにと消してしまいました。
何も動かない画面に届いたスタンプ
チャットの画面には、彼の紹介と、私が参加したことを知らせる表示が残っていました。その後は、誰も何も書いていません。参加したのに一言もないなんて、と思われていないだろうか。画面の上の時計を見ると、ボタンを押してからもう30分近くたっていました。
そのとき、通知が1つ鳴りました。彼の妹から届いた、うさぎがお辞儀をしているスタンプ。「よろしくお願いします」という文字が添えられています。
最初に浮かんだのは、早く何か書いてという合図なのかもしれない、という考えでした。兄の彼女が黙ったままなのを、不思議に思っていたのかもしれません。
丸まったうさぎの背中を見つめたまま、送る文面を決められませんでした。30分かけた下書きを貼りつけるか、このうさぎに何か返すか。
スタンプへの返事から始めた挨拶
メモアプリを閉じ、チャット欄に直接打ちました。
「はじめまして。スタンプありがとうございます。これからよろしくお願いします」
30分かけた下書きとは似ても似つかない、短いメッセージ。送信すると、既読の数が1つずつ増えていきます。最初に返事をくれたのは、彼の妹でした。
「兄がいつもお世話になってます!気楽にいてくださいね」
続いて彼のお母さんから「ようこそ。よろしくね」と届き、お父さんからは親指を立てたスタンプ。ソファの背にもたれて、ようやく画面から目を離せた気がしました。
そして...
メモアプリには、送らなかった長い挨拶の下書きが今も残っています。なぜか、消す気になれずにいます。
彼の妹のスタンプが届いたのは、私が参加してから30分ほどたった頃でした。急かされたのだと思っていたけれど、本当にそうだったのか、今は少し自信がありません。
あの30分の間に、彼の妹は何を思って、あのうさぎを選んだのでしょう。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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