「今どこ?」を重いと言われて3年送れなかった私→彼から初めて届いた同じ言葉
使えなくなった言葉
その日は、彼の家の近くのお店で待ち合わせをしていました。
付き合い始めたばかりの頃、仕事帰りの彼によく「今どこ?」と送っていました。何度目かの日に返ってきたのが、「今どこ?って毎回聞かれるの、ちょっと重いかも」というメッセージです。
笑っているスタンプを返して、その話は終わらせたつもりでした。けれどその日から、この言葉は私の中で使ってはいけないものになったのです。
帰りが遅い日は「気をつけて帰ってね」。待ち合わせに彼が遅れる日は「着いたら教えて」。入力欄に「今どこ」まで打っては消して、別の言い方を探すのが癖になっていきました。
既読のあとの数分
ホームのベンチに座り、彼に「電車止まっちゃった。ちょっと遅れるかも、ごめんね」と送りました。
既読はすぐについたものの、返信は来ません。
今頃お店で1人、予約の時間を気にしているのだろうか。せっかくの約束を台無しにしたと、あきれているのかもしれない。画面を消してはつけ直し、そのたびに彼とのやりとりの画面を確かめていました。
アナウンスが再開の見込みは立っていないと繰り返すなか、ホームの人たちは次々に改札へ。手の中で通知が鳴ったのは、それから数分後です。
初めて届いた通知
表示されていたのは「今どこ?」。
彼から届いたのは、3年間で初めてでした。私が数えきれないほど打っては消してきた言葉が、彼の吹き出しの中に並んでいたのです。
同じ言葉なのに、こんなにうれしく聞こえることもあるんだ。
バッグの底のハンカチを探しているうちに、自販機の明かりがぼやけました。
改札を出て北口のベンチへ移り、どうにか「乗り換えの駅。北口のベンチ」と返すと、すぐに「そっち行く。待ってて」と返ってきました。
そして...
北口の階段を駆け上がってくる彼の姿が見えたのは、20分ほどしてからです。ハンカチを握ったまま顔を上げると、彼は私の前で足を止めて「重いなんて言って、ごめん」と言いました。
3年も前のあの返信を、彼が覚えているとは思っていませんでした。どうして今日、あの言葉を送ってくれたのか。聞きたいことはあったのに、隣に座った彼の袖をつかむのが精一杯でした。
スマホの予測変換には、今も「今どこ?」が一番上に出てきます。最後まで打ってから消すかどうか迷う時間は、少しずつ短くなっています。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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