「今月も小遣い制か」とため息をつく夫。通帳を全部開いて見せた夜、先に謝ったのは彼でした
給料日のたびに聞こえたため息
「今月も小遣い制か」
夫は封筒を財布にしまいながら、小さくため息をつきました。結婚して間もなく、家計は私が預かると2人で決めたのです。夫の小遣いは毎月3万円で、この言葉も、いつの間にか給料日の決まりごとになっていました。
夫が家計について聞いてきたことは、これまで何度かありました。そのたびに返してきたのは、同じ言葉です。
「大丈夫、ちゃんと回してるから」
説明するより、自分で抱えたほうが早い。そう考えて、通帳もノートも食器棚の引き出しに入れたままにしていました。
引き出しから出した3冊の通帳
夕食の皿を洗いながら、さっきの言葉を頭の中で繰り返していました。
家計ノートに書き写してきたのは、スーパーのレシートの端数まで。車検や部屋の更新料、年払いの保険に備える積立も、月ごとに少しずつ分けてきました。先月は、夫の職場の送別会に合わせて封筒へ5000円を足した月。その分は自分用の欄から回し、横に送別会へと書き添えました。
それを見せれば、恩を着せているように受け取られるかもしれない。黙って続けてきたのは、そのためでもありました。蛇口を閉めて、引き出しを開けました。通帳3冊とノートを重ねて持ち、リビングへ向かいました。
「ちょっと座って」
ソファにいた夫はスマホを置き、テーブルの向かいに移りました。
開いたままになった先月のページ
「これ、うちの全部」
通帳を1冊ずつ開いて、ノートの今月のページと並べました。夫は生活費の通帳から順にめくり、積立の通帳を開いたところで顔を上げました。
「これ、何の積立?」
「車検と、部屋の更新料。来年まとめて出るから」
夫はうなずき、ノートを手元に引き寄せました。ページを1枚ずつ戻していき、先月のところで、めくる音がしなくなりました。言い返す言葉なら、引き出しを開ける前から用意してあったのに。先に頭を下げたのは、夫のほうでした。
「ごめん。俺、あの紙だけ見て決めつけてた」
「私も、大丈夫しか言ってこなかったから」
用意していた言葉の代わりに、口から出たのはそれだけでした。
そして...
次の給料日、茶封筒の隣には開いたままのノートがありました。封筒を受け取る前にページをめくり、積立の欄を指で確かめる夫。その日は、小遣いへの不満は聞こえませんでした。
ただ、夫の言った「あの紙」が何のことなのかは、まだ聞けずにいます。
(30代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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