孫の足がぶらぶらしていた食卓を見た私が、物置で作った椅子と、息子に言わなかったこと
食卓で揺れていた足
2週間前、息子夫婦が孫を預けて買い物に出かけた間のことです。孫は食卓の大人用の椅子に座ってお菓子を食べながら、足を前後に揺らしていました。
「足、ぶらぶらする」
座布団を重ねても、足は床に届きません。皿の縁にも手が届かず、お菓子の袋を胸の前で抱えたまま食べています。息子の家の白い椅子も座面が高いのだと、そのとき孫から初めて聞きました。
定年後に始めた日曜大工は、棚とすのこを作った程度です。孫を椅子に座らせ、座面から足の裏までの長さを巻き尺で測りました。
物置の奥の2脚
1脚目は脚の長さが揃わず、置くとがたつきました。2脚目は座面が高すぎて、壁の線と合いません。どちらも物置の奥に積んだままです。
木は、息子が小学生のころに使っていた勉強机を処分したとき、残しておいた板を使いました。3脚目でやっと、食卓に合う座面の高さになりました。前脚の間には、孫の足が届く位置に横板を1枚渡しました。角は、孫が手をついても引っかからないように、やすりを3日かけました。
帰省してきた息子は、座面を指で押して、家にはもう椅子がある、値段もそれなりだったと言いました。私は自分の椅子の木目のむらを見ていました。
「素人工作だな」
笑い声に、私は「まあな」と返しました。横板のことも、壁の線のことも、口にしませんでした。息子の買った椅子のほうが、きっとちゃんとしている。そう思ったからです。
それでも椅子はトランクに積みました。使われなければ、それでいいと決めていました。
届いた1枚の写真
息子から写真が届いたのは、それから数日たってからです。孫が食卓で、私の作った椅子に座っています。両足は横板の上にそろって乗り、皿に手が届いています。
「足、届いてるよ」
私は「そうか」とだけ打ちました。
続けて、もう1通。
「今度、やすりのかけ方教えて」
写真を何度か拡大して、孫のかかとが板の端からはみ出していないのを確かめました。
そして...
物置に行って、壁の鉛筆の線の横に、孫の名前と今日の日付を書きました。その少し上には、息子が幼稚園のころに測った線が、薄くなって残っています。
奥に積んだ2脚は、まだそのままにしてあります。
(60代男性・元会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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