「女子会とか意味ある?」と送ってしまった俺が、雨の夜に傘を2本持って店の前に立った
「大丈夫」しか返ってこない日々
彼女と同棲を始めて1年になります。この数週間、彼女は夜中に何度も寝返りを打っていて、俺が「何かあった?」と聞いても「大丈夫」としか返ってきませんでした。休憩中、彼女から「今日、女子会になったから遅くなるかも。いつもの駅前の店」と届きました。友達には話せるのか。その一言を飲み込んだつもりが、指先は「女子会とか意味ある?」と打っていました。送ってから、自分の言葉の悪さに気づきました。「私の友達のこと、そういうふうに思ってたんだ」。届いた返事に、俺は「そういう意味じゃない」とだけ返しました。本当に伝えたいことは、その先にあったのに、打っては消してを繰り返すうちに、既読のまま画面は止まりました。今頃、彼女はどんな顔で店に向かっているのだろう。想像しても、答えは出ませんでした。
「まだ店にいる?」の既読
帰宅した頃には、雨が本降りになっていました。彼女の傘は玄関に残ったままでした。「まだ店にいる?」と送ると、既読はすぐについて、返事は来ませんでした。監視しているように読めたのだろうと、自分の文面を見直して思いました。責める気にはなれませんでした。傘を2本持って家を出たのは、迎えに行くためではありません。傘を渡して、一言だけ謝るためです。店の名前は彼女のメッセージにありました。向かいの店の軒下に立ってからも、入り口のドアは押せずにいました。友達の前に俺が現れたら、彼女はどう思うだろう。迷った末に「外にいる。傘持ってきた。無理に出てこなくていいから」と送りました。
入り口を押せなかった理由
店のドアが開いて、彼女が出てきました。俺は傘を1本差し出してから、口を開きました。「ごめん。言い方が最悪だった」。「なんであんなこと送ったの」。彼女の声は、雨音に紛れそうなほど低いものでした。傘を引っ込めずに、俺は答えました。「最近元気ないの、俺には話してくれないから。友達には話せるんだなって、勝手に拗ねた」。彼女は俺の傘ではなく、足元の水たまりを見ていました。「話せなかったの。心配かけると思って」。その答えで十分でした。うなずいて、続けました。「送るだけ。話は帰ってからでいい。まだ飲んでていいよ」。「もう会計だけだから、待ってて」。彼女はそう言って、傘を受け取らずに店へ戻りました。俺は軒下で待ちました。ドアがもう一度開いて、荷物を持った彼女が出てくるまで、開かなかった傘はそのまま手の中にありました。
そして...
帰り道に聞いた異動の話は、俺が想像していたよりずっと重いものでした。あの日、彼女の友達が先に聞いてくれていたことに、今は救われた気がしています。今は、彼女が口数の少ない日ほど、俺のほうから「聞くだけでいい?」と先に送るようにしています。
(20代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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