「信じてくれないなら無理」としか送れなかった俺が、彼女に隠していた理由
言えなかったのは、決まっていなかったから
俺は契約社員として働いていて、次の更新がないと告げられたのは春の終わりでした。彼女と付き合って1年半。そろそろ先のことを考えたいと思っていた矢先で、先のことを考えるには、まず自分の足元を固める必要がありました。休みの日はエージェントとの面談と面接に使い、彼女には「用事がある」とだけ伝えました。落ちている途中の話を聞かせたくなかった。決まってから、まとめて話せばいい。そう思っていたのは彼女のためではなく自分のためだったと、今ならわかります。あの日、俺の部屋で彼女がスマホの通知を見ていたことにも、気づいていませんでした。
駅のホームで打ち直した返信
3度目の面接の帰りに届いたメッセージでした。「日曜、誰と会ってたの」。既読をつけてから、俺は駅のホームで何度も文を打ち直しました。エージェントと会っていた、と書けば、契約のことも話すことになる。決まってもいないのに。結局送ったのは「友達。ごめん、また今度話す」。すぐに次が来ました。「みほって誰」。通知を見られていたのだと、そこで初めて知りました。疑われている。当然だと思う一方で、まだ言える段階じゃない、という気持ちが勝っていました。そして俺は打ちました。「信じてくれないなら無理」。信じてくれないなら、この先も隠し続けるのは無理だ。そう続けるつもりで、続きを打つ前に送信していました。
続きを打てなかった俺
返ってきた「無理なら、それでいい」を読んで、俺の1行が別の意味で届いたことに気づきました。訂正しようとして、やめました。ここで「そうじゃない」と送っても、また「じゃあ何なの」と聞かれる。答えられないなら、同じことの繰り返しです。だから俺は、返事の代わりに次の面接の準備をしました。翌週、面接の後に届いたのは、初めての採用の連絡でした。彼女に見せられるものが、ようやく1つできました。
そして...
白い封筒を持って彼女の部屋の前に立ったとき、何を言うかは決めていませんでした。「これ、渡したくて」。彼女は封筒を開け、採用通知を読み終えても、封筒から目を上げませんでした。俺は封筒を見つめたまま、「先に言えばよかった」と言いました。「疑ったこと、消えないよ」。その言葉は責めているようで、俺の隠しごとを引き受けてくれる言葉にも聞こえました。俺はうなずきました。あの1行を、俺は今でも取り消せません。ただ、彼女が封筒を持ったまま手を下ろさなかったことだけは、確かに見ていました。
(20代男性・販売職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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