後輩の有休に嫌味を言った私が、その1日に何も起きなくて分かったこと
口をついて出た嫌味
私はこの部署で15年、休暇の予定表を管理しています。その15年、自分の欄に「休」と書いたことはほとんどありません。入社3年目の後輩が私の席に来て、来週1日休みたいと申し出ました。気づいたときには、口が先に動いていました。
「有休とるの?皆頑張ってるのに」
自分でも大きすぎる声だと分かりました。向かいの席の同僚がこちらを見ましたが、私は予定表から顔を上げませんでした。後輩は課長に言われたのだと説明しました。それを聞いて、私は顔を上げ、笑って見せました。
「課長は現場のこと分かってないから。あなたが抜けた日、電話は誰が取るの?私?」
後輩が黙っている間に、私はもう1つ重ねました。
「3年目で先に有休の話をするなんて、余裕あるのね」
言い終わる前から、これは後輩を黙らせるための言葉だと分かっていました。それでも、止めませんでした。
後輩が返してきた言葉
後輩は引き下がりませんでした。
「会社に言われて取るんです。私に言われても困ります」
その通りでした。休めと言ったのは会社で、後輩はそれに従っただけです。私は返す言葉が見つからず、ペンの先で予定表を叩きました。後輩は私の手元を見ながら、はっきりと続けました。
「私が1日休んだぐらいで回らなくなるなんて、先輩は仕事の管理ができないんですね」
課長の席の方を見ました。課長はこちらを見ていませんでした。それがかえって、さっきの声が届いていたのではないかと思わせました。
「……そう」
それだけ言って、予定表を閉じ、モニターの方へ体を向けました。画面の文字を追っているふりをしながら、頭の中では後輩の言葉が繰り返されていました。
モニターの前で分かった自分の焦り
後輩が席に戻ったあと、私は画面を見つめたまま考えました。私が後輩の休みに口を出した理由は、業務の心配ではありません。私がいない日に何も起きないのが怖かったのです。予定表も、電話の取り次ぎも、誰かが代わりにできてしまう。それを確かめる日を、15年間、自分で作らずにきました。管理ができていないと言われて言い返せなかったのは、その通りだったからです。
後輩が申請を終えたのを確かめてから、私は立ち上がり、後輩の隣に立って言いました。
「さっきは、言いすぎた」
後輩は短く返しただけでした。私は予定表を開き、後輩の来週の日付に「休」と書き入れました。
「その日の電話は、私が取る」
後輩は「お願いします」と答えました。私は予定表を閉じて、自分の席に戻りました。
そして...
後輩が休みを取った日、電話は普段どおりに鳴り、私が取るまでもなく、普段どおりに誰かが取りました。後輩宛ての電話は1本もありませんでした。翌日、私は後輩の机に電話メモを1枚置きました。書けたのは、「特になし」の一言だけでした。
(40代女性・事務職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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