「無理に入れなくて大丈夫です」と言われた私→それでも砂場のあの子を撮っていた理由
左側を空けるようになった理由
私にも同じ年の娘がいます。月に1度の集まりでは、カメラを持っている私が写真を撮ることが多くなっていました。帰る前になると、子どもたちを滑り台の前へ呼びます。ほとんどの子はそのまま集まってきます。ただ、途中から同じ組に入った男の子だけは、少し離れた砂場にいることがよくありました。名前を呼んでも、こちらへ来ない日があります。最初のころは待っていました。それでも動かないので、無理に連れてくるより、その場所にいる姿まで画面へ入れようと思いました。その子がいるのは、だいたい滑り台から見て左側です。だから私は、左を少し広く取って写真を撮るようになりました。真ん中に集まった子どもたちは大きく写ります。離れた砂場にいるその子は、どうしても小さくなります。それでも、その日の公園には確かに一緒にいたのです。
説明しかけて、やめました
ある日の帰りぎわ、その子のお母さんから、「うちの子は、無理に入れていただかなくて大丈夫です」と言われました。私は、「無理に入れてるわけじゃなくて、いつも砂場にいるから、そこまで入るように撮ってるんです」と言いかけました。でも、その言葉をそのまま伝えれば、「あなたのお子さんだけ、いつもみんなの輪から離れています」と、私のほうから指摘することになる気がしました。ただ砂場にいたいだけかもしれないのに、私から「輪に入っていない子」と決めつけるようで言えませんでした。結局、私は何も説明せずにうなずきました。次の集まりからは、言われたとおり、その子まで入るようには撮りませんでした。滑り台の前に集まった子どもたちだけを写すと、写真はきれいに収まりました。でも、そのあとで砂場のほうにもカメラを向けました。そこにいるその子だけを撮って、自分の端末に残しました。共有には上げませんでした。「入れなくていい」と言われたのに上げれば、今度は私が相手の希望を無視することになるからです。同じことを2回続けました。
自分で撮った写真を見て、気づいてくれました
3回目の集まりで、その子のお母さんが、「今日は、私が撮ってもいいですか」と言いました。私はカメラを渡しました。滑り台の前に子どもたちが集まります。その人は画面を見たまま、しばらく動きませんでした。砂場にいる息子さんを呼んでも、やはり来ません。やがて、左側を広く取ってシャッターを切りました。撮れた写真には、滑り台の前の子どもたちと、左端に小さく座る息子さんが写っていました。私は自分の端末を出して、共有しなかった2回分の写真を見せました。砂場にいる姿を残していたものです。「切ってしまうと、来ていないことになりますから」そう伝えました。その人は画面を見てから、「切らないでください」と言いました。
そして...
帰り道で、「どうして、あのとき言ってくれなかったんですか」と聞かれました。私は正直に答えました。「『いつも砂場にいるから、そこまで入れて撮ってる』って言おうとはしたんです。でも、それって『あなたのお子さんだけ輪に入ってない』って、私から言うことになる気がして」それが正しい気の回し方だったのかは、今でも分かりません。もっと早く説明したほうが、あの人を悩ませずに済んだと思います。今も私は、写真を撮るとき左側を少し広く空けています。ただ、撮ったあとは、その子のお母さんにもすぐ画面を見せるようになりました。端にいても、真ん中にいても、その日にその子がいた場所をそのまま残す。今は、それだけを考えてシャッターを押しています。
(30代女性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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