カーテンを閉めきった家の私が、謝りに来た人との玄関先で譲らなかったこと
この家のカーテンは、預かった子のために閉めています
私は在宅の仕事をしながら、行き場のない猫を一時的に預かるボランティアをしています。来たばかりの子は物音に怯えて、部屋の隅から出てきません。道路に面した窓の外を人や車が通るたび、カーテン越しでも身を硬くする子がいます。だから道路側の窓は開けず、外の人影や車が刺激にならないよう、カーテンも閉めたままにしています。
その事情を、近所に話したことはありませんでした。付き合いを広げる気がもともとなかったからです。挨拶だけ交わして、あとは踏み込まない。それがこの家での暮らし方でした。
ゴミを出そうとして、扉を閉めました
袋を持って玄関を開けたとき、ゴミ捨て場のほうから自分の家の話が聞こえてきました。
「あの家、昼間からカーテン閉めっぱなしで怪しい」
声の主は分かりました。続けて、向かいの家の女性の相づちも耳に入りました。
「うちからも、開いているところを見たことがないです」
私は袋を置いて扉を閉めました。輪に入って事情を話す気は起きませんでした。あの人たちには話しても分からない、と線を引いたのです。ただ、扉の内側で長いこと立っていた自分がいたのも本当です。
庭の子を返したあと、別の声が届きました
その後、庭の隅で首輪をつけた猫がうずくまっているのを見つけました。毛は雨に濡れていて、飼い主が近くにいるはずだと思い、別の部屋に入れました。電柱に探し猫の張り紙が出ていたことは、後から知りました。買い物は駅前まで車で出るので、あの電柱の前を歩くことがなかったのです。
直接近所に聞いて回ることも考えましたが、私は回覧板に挟む紙を印刷しました。顔を合わせずに済む方法を選んだのです。保護している子のことも、カーテンを閉めている理由も、そこに書きました。紙が回り終える前に、首輪の子は飼い主の腕の中に戻っていきました。
数日後、また袋を持って扉を開けたとき、ゴミ捨て場から届いたのは別の声でした。
「でも、最初から言ってくれれば疑わなかったのにね」
「それは違うと思います」
「知らなかったことと、勝手に疑ったことは別ですよ」
相づちを打っていたはずの、向かいの家の女性の声でした。私は今度は、扉を閉めませんでした。
そして...
しばらくして、その人がうちの呼び鈴を鳴らしました。玄関を開けると、向かいの家の女性が頭を下げました。自分が口にした言葉だけでなく、否定しなかった噂のことまで隠さずに伝えてくれました。
「外の人影や車が見えると、まだ人に慣れていない子が怯えるんです」
説明したうえで、私は言うと決めていたことを言いました。
「猫のことは説明します。でも、普段から近所と付き合うつもりはありません」
相手の顔が曇りました。
「誤解されたくないなら、もう少し話してくれてもよかったんじゃないですか」
「話さないことと、勝手に怪しい人にされることは別ですよね」
それでも、輪の中で言い返してくれた声を、私は忘れないでいようと思います。
今もカーテンは閉めたまま、立ち話の輪にも入っていません。ただ、道であの人と顔を合わせたときだけは、こちらから先に挨拶をしています。
(40代女性・在宅ワーカー)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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